はざまのコドモ 息子は知的ボーダーで発達障害児

  • ぶんか社
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784821144204

感想・レビュー・書評

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  • 漫画家の沖田×華さんが、アシスタントの君影草さんとその息子さんで知的ボーダーのヨシ君のことを漫画化したもの。
    ヨシ君は本当に寝ない子で…という始まりなのですが、これが本当に本当に本当に寝ない…
    自分も子育てしてきていて、赤ちゃん時代の寝なさ具合はわかっているつもりですが、それと比べてみてもヨシ君の寝なさ具合がおかしすぎる…
    意を決して行った病院、保育園でも心無い言葉を言われて、こんなのこんなの限界すぎる!!!とおもいました…本当に壮絶すぎて…

    支援の可否を判断するためにどうしても診断基準は必要になりますが、そこに当てはまらないならなんとか自力でしてくださいという制度設計は、酷すぎるなとおもいました…
    そうしたボーダーにいるお子さん、保護者さんにとっての支えになる内容なのでは、そしてこうした苦労があることを広く伝えるために必要なマンガだとおもいました。

    沖田×華さんの絵はけっして上手いわけではないのですが、味があってとても読みやすいです。
    巻末には原作の君さんによるあとがきマンガ1頁が収録されていましたが、たしかにきれいで描き込まれていて上手いのですが、もうしわけないのですが絵の情報量が多くて話が入ってきませんでした。
    中学生以降のエピソードは書籍化されていないようですが、この先のお話も沖田×華さんでマンガ化してほしいです。

  • 発達障害の漫画家沖田×華(おきた・ばっか)さんが、知的ボーダーで発達障害の息子を持つ、アシスタントの君影草(きみ・かげくさ)さんの実話を元にして描かれたコミックエッセイ。

    ‘知的ボーダー’とは何か。
    「知的障害」と「正常知能」のはざまの知能指数を持つ人たちの事。
    彼ら彼女らは学校や社会生活が困難にも関わらず、支援を受けづらくて困っている。
    普通学校には邪険にされるし、養護学校には「IQが高すぎて」入れませんと言われる。頼りにしたい行政や、仲良くなりたい他の知的障害を持つ児童の親たちにもそっぽを向かれる。
    どこにも居場所がないのは辛いって、誰も頼れる人がいないのは辛いってみんな分かっているはずなのになー。

    君さんや息子さんのヨシくんの大変さに涙が出た。
    幸いなことにふたりには味方になってくれる人も現れて、心底ほっとしたのだけれど。

    ネット版のはざまは『はざまのセイカツ』で検索すると読める。

  • 沖田さんがアシスタントさんの体験談を代筆した作品。
    このお母さん、本当に頑張ったと思う。今から20年近く前なんて、発達障害に理解が全くなかったと思うから、いつも何をしても大変だったと思う。
    なのに、泣きながらも、こんなに子どもを愛し、頑張る姿に読んでて胸が苦しくなりましたが、最後は心温まる作品になっていてよかった。

  • いわゆる、障害と健常の狭間、の子どもであったヨシくんの話です。
    制度的にも漏れてしまうボーダーの子どもは、どこに行けばいいのか…どうにかこうにか社会に出たとして、どうなっていくのか。
    続編もある(売れ行きによっては、らしいですが笑)みたいので、その後どんな環境と出会ってどうなるのか気になります。
    ミニコラムも、勉強になる。マンガの内容もわかりやすく理解しやすい。

    おそらく、狭間にいて弾かれ続け、社会からこぼれてしまう人も多いでしょう(わたしの周りにもいますが)。
    救われるだけでなく、そんな陰の部分も、知りたい。

  •  私は発達障碍の疑いが強く(精神保健福祉手帳も取得しました)、子供もいないので、ヨシ君の立場で読みました。80~90年代に暗黒の小学生時代を送ったのを思い出してしまい、読んでいてとても辛かったです。私の小学生時代は「発達障碍」という概念自体があまり世間一般に伝わっていなかったので、周囲が冷たいのは仕方が無いのですが、今作は1996~2008年までの話なので、ある程度「発達障碍」が世間にも知られるようになった2000年代にもこういう扱われ方をされているのを知って、暗澹たる気持ちになりました。
     母親である君影草さんが大変なのが伝わりました。同じ発達障碍を持っている子供の母親からも理解されないのは辛いですよね。君影草さんを責めている人もいるようですが、ヨシ君の療育手帳を取得しようと頑張ったりして、私からは最善の事を限界までやっているように見えましたよ。私も「何で進学校?」と疑問を持ちましたけれど。「発達障碍者は睡眠障碍になり易い」とよく言われますが、私も睡眠障碍を抱えているので、実感で理解出来ます。家ではリラックス出来ない気持ちは分かるけれど、不倫で離婚する夫は最低。自傷するヨシ君を見るのが辛かった。小児科医や保育士や小学校教師が不勉強なのに憤慨。「ウチの学校に傷が付くので転校させろ」の一点張りの教頭や5年生以降の担任は最悪。「知能指数や発達障碍の事は隠して他所へ行け」という言葉は信じられない。何でそんなに学校がヨシ君を邪険な扱いにするのか理解出来ない。他害といっても友達があだ名を付けようとした時に噛み付く程度でしょ。友達と仲良く出来るし、女の子と遊べるでしょ。他害が酷くて、周囲が迷惑しているなら話は別ですが。それからヨシ君の自信が付くように塾に行くのですが、それはかなり重要な事で、幼少期に適切な教育が受けられるのが重要。子供時代にまともな教育を受けられず、30過ぎても社会不適応状態の人間が言うのだから間違いないです。T健康学校の先生の優しさに思わず涙。東京都発達障害者支援センター(TOSCA)センター長の山崎順子さんのコラムがとても勉強になったので、もっとコラムを読みたかったです。
     立ち読みで済まそうと思っていましたが、あとがきに「この本が売れたら続編が出るかもしれない」と書かれていたので、1冊買いました。続編を希望します。病気のデパートのような君影草さんの体調が良くなりますように。

  • 「発達障害」という言葉がほとんどきかれなかった頃に教育について学んでいました。
    ヨシ君の幼少期時代よりもさらに一昔前です。
    学生活動の一環で、IQは低くないけれど学校での授業がきちんと受けられない子たちの補習に付き添ったりしていました。
    当時の教育現場では
    「養護学校に行かない(行けない)のなら、いかに普通学校で普通にしてもらうか」
    が重要課題であって、特性に合った寄り添い方をするなんていうのはほとんど考えられていなかった気がするし、私自身も「”普通”にできるように矯正する」のが正しい行いと考えていたと思います。

    「IQ低くないのに色々できないのは親のしつけのせい」と全力で思っている人が教育現場にもそれなりにいたから、この漫画に出てくるムカつく人たち(教頭や5年生の時の担任など)のヨシ君への苛立ちも少しわかって嫌になります。

    だからこそ、ここ数年の発達障害や周辺ボーダーへの理解が少しずつひろがっていっていることに安堵もしますが、今もヨシ君時代(私が学んでいた当時よりは少しはマシになっているように感じた)と大して変わらない問題は数多あるようで、理解と実務はまた別な話になっているんだなと思うとやり場のないモヤモヤをおぼえました。

    個人的には、中学の支援学級でどういうことが行われているのか少しだけ垣間見られて興味深かったです。

  • ☓華の弟も知的ボーダーだが、彼女はその語を知らなかったと。
    沖田✕華のアシスタント女性の実話。ただでさえ乳児は手がかかるが睡眠障害児を持つ苦労は並ではない。夜も昼も寝られず、安アパートで父親も堪らんが御近所まで「なんとかして」と言ってくる。マンションを購入したが、児には発達障害もあることが判明。父は逃亡、シングルマザーとなる。学習障害も根気よく指導すれば…人名を選択的に不覚/発達障害は「人の立場が理解できない」「言葉を文字通りに受け取る」というアンマッチがあるという。というと、ボーダー児に杓子定規な条文解釈を適用したビューロクラシーは我々の社会の病気ではないか?

  • 基準に達してくれていれば、話は早いし
    精神的にも楽になるけれど、そうでない場合。

    漫画なのでさくっと描かれていますが
    これが毎日続くとなると…辛いものがあります。
    子供が己でいるため、どう親は手を尽くせばいいのか。
    正解がどこなのかもわからない状態なので
    どうすればいいのか、さっぱりです。

    目指すべきは、親がよかったと思う環境と
    本人の笑顔、でしょうか?

  • 別の本で知的障害の手帳をもらう基準IQが下がったため、狭間で取り残されてしまう人が増えた、という話を読んだ。
    本人に合った療育がいかに大切か。
    それは本人の将来だけでなく、支える社会そのものにも影響するのだ。
    お母さんは頑張った。
    当事者ではないから全てを理解できるわけではない。だからこういう事例をたくさん知って想像力を働かせていきたい。

  • ボーダーのことがよく分かりました。
    周囲の無理解の中、本当に過酷な日常だ…と。

    お子さんが大きくなったとのことで、
    心労は絶えないかもしれませんが、
    ぜひご自身の幸福のために時間を使ってほしいな、と心から思います。

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著者プロフィール

1979年、富山県生まれ。漫画家。『透明なゆりかこ』(講談社、既刊8巻)で第42回講談社漫画賞(少女部門)受賞。

「2020年 『父よ、あなたは…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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