小倉昌男 経営学

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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822241568

作品紹介・あらすじ

国と闘い、"宅急便"市場を創った男の論理。宅急便で日本の生活を変えたヤマト運輸元社長、小倉昌男。自ら筆を執り、その経営をケーススタディで書き下ろす。生涯唯一の書。

感想・レビュー・書評

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  • 小倉氏の手腕に魅せられ、ページを繰る手が止まらない。実は10年ぶりの再読なのだが、今になってやっと本書の面白さが分かった。本自体はなにも変わらないのに、読み手の器量次第で受け取り方が随分変わる。本書は経営について参考になるのはもちろんのこと、読書の奥深さ、楽しみ方を、時を越えて実感させてくれた。私にとって感慨深い一冊である。

    以下、本書より抜粋。

    「私はどんなものでもメリットだけのものはない、また逆にデメリットだけのものもない、と考えている。どんなものにも、メリットとデメリットの両面があると思う。」

    「宅急便は商品名であるから、すぐに商標登録をしたことはいうまでもない。」

    「第二がなく、第一ばかりあるということは、本当の第一がない、ということを表してはいないだろうか。」

    「別に楯突いた気持ちはない。正しいと思うことをしただけである。あえて言うならば、運輸省がヤマト運輸のやることに楯突いたのである。」

    「レギュラー選手だけに日が当たるのではなく、陰でグラウンド整備や球拾いの仕事を、下級生を指導してやっている上級生にも、やり甲斐を感じさせる制度を整備することを忘れてはならない。」

  • 「儲からない」といわれた個人宅配の市場を切り開き、「宅急便」によって人々の生活の常識を変えた男、小倉昌男。本書は、ヤマト運輸の元社長である小倉が書き下ろした、経営のケーススタディーである。
    全体を通して読み取れるのは、「学習する経営者」小倉の謙虚さと、そこからは想像もできないほど強い決断力である。成功した人物にありがちな自慢話ではない。何から発想のヒントを得たか、誰からもらったアイデアか、などがこと細かに記されている。講演会やセミナー、書籍、マンハッタンで見た光景、海外の業者に聞いた話、クロネコマークの由来…。豊富なエピソードから伝わってくるのは、まさに学習し続ける男の偉大さである。
    一方で、並々ならぬ決断力を持っていたのだと思わせる記述がいくつかある。宅急便に注力するため、大口の取引先であった松下電器との長期にわたる取引関係を終結させたこと、三越岡田社長のやり方に反発し、「とてもパートナーとして一緒に仕事をしていくことはできなかった」として取引関係を解消したこと、運輸省を相手に訴訟を起こしたこと…。いずれも確固たる論理がその根底にあった。それにしても見事な決断力と言わざるを得ない。

  • とても勇気のある経営者。小倉氏を大好きになりました。

  • 本とは作者との対話であるとよく言うが、この本はまさしく人生の大先輩が語りかけてくれるような本。それは文体の話ではなく、この本で語られる内容が誠実で生々しいからだ。クロネコヤマトの宅急便開発のストーリーを読みながら、新規事業の立ち上げ、商品開発、マーケティング、コストの考え方、労組との関係、財務から組織活性化まで、一通りの経営についてが学べる。さらには行政との戦いまで語られる。このような経営者について行きたい、と思う人は多いだろう。お客さんと社員を思い、その理想に向けて妥協しない姿勢が心から尊敬できる。

  • 目先の利益よりも、社員を大切にする。
    そんな会社が少し前までは普通に存在していたはずなのに。
    社会正義を貫き、従業員の働き甲斐に思いを至し、
    社会に貢献できることを考える。
    現代においてそんな会社はもはやファンタジーだ。
    小倉氏の築いたヤマト運輸という会社は、
    そんな奇跡のような企業だった。
    この本の初版はもう20年も前なのだけれど
    小倉社長亡き後の今のクロネコヤマトは、どんな会社になっているのだろう。
    様々な働き方改革が推奨される今読んでも、
    この本の内容は少しも色あせていない。
    本当に会社に必要なもの、リーダーに求められているものの本質は不変なのだろう。
    願わくば今のクロネコヤマトも、先代の意志を継ぐものであってほしいと思う。

  • ヤマトの経営をするために生まれた男だと思った。ヤマトって私が子供の頃からあって当たり前の存在と化してたけどここまでの企業努力があったなんて。本当に感謝です。
    真っ向から勝負していく姿勢、お客さんのため従業員のために考え続けて行動して色んな出来事があって小説かなって思うくらい濃密だった。
    新聞に出した文面に笑ってしまった。

  • ジェフベゾスもそうだけど、突出した経営者というのは生産性を上げることを徹底的に追求する、そしてサービスが向上すれば利益は後からついてくるという信念がある、細かい計算にとらわれずとにかくやってみる、同業者から徹底的に差別化する。そしてただ単にこの人がカリスマ創業者なのではなく、永続的な組織を作っているというところが日本版ビジョナリーカンパニーだと思う。今までそこになかった新たな業態を作るということがどういうことか、手にとるようにわかる良書。こうやって一つ一つを言語化できるというのは、著者がセンスや情緒ではなくひたすら論理の積み重ねによって経営をしたということの何よりの証左だと思う。
    99年の時点で、インターネットの普及により新たな宅急便需要が創出されることや、全国100%の地域に張り巡らせた宅急便のネットワークが絶大な威力を発揮することを断言しているが、それがまさに東日本大震災やパンデミックで現実のものとなっている、その論理的先見性が見事。

  • ヤマト運輸二代目社長の視点から、同社が宅急便事業に至り、そして成功させるまでの険しい道のりが赤裸々に描かれている本書。
    超重要取引先と、国家権力と、そして社内と闘った歴史、その節目節目における小倉社長の思想と行動が鮮明に浮かび上がるようで、一気に読み進めることができた。

    不運もあって20代は病床に伏せる期間が長かったにもかかわらず、仕事に復帰した後は「強烈なリーダーシップ」と「綿密なロジカルシンキング」でもって構想を描き、現場と経営を引っ張っていたこと、ゼロからイチを実現していったことに胸が熱くなった。

    いくつもの印象に残る部分があり、特に印象に残った箇所を抜粋すると以下の通りです。

    ●善い循環も悪い循環も、一朝一夕に起きるものではない。
    ●共同経営とは。自発性を高めるにはコミュニケーション。
    ●サービスが先、利益は後。
    ●□□第一はマンネリ。なぜなら第二がないから。
    ●社員には自分の仕事に責任を持って遂行してもらう。それを引き出す努力が経営者の仕事。
    ●成功している経営者は「ねあか」が多い。


    【その他印象に残った箇所】
    過去の成功が災い。
    出発点はよく働くこと。
    トラックは荷物を積んで奔ることで収入を得る。半分くらいの時間しか稼働できないのが普通。
    物流を構成する主な要素は、輸送、保管、荷役、包装、加工、情報。
    共同体経営。経済の動き、経営の状態、人事など経営に必要な情報を、同時に従業員にも提供し、同じ目的意識をもたせることが必要。自発性を高めるには、社内のコミュニケーションの改善。
    (集配車のドライバーが不足したため、小さな運送業者を下請けに使い、配達させたことを)絶対にやってはならないと禁じた。
    供給者の論理と利用者の論理は正反対の場合が多い。
    サービスとコストは常にトレードオフの関係。
    利益のことばかり考えていればサービスはほどほどで良いと思うようになり、サービスの差別化はできない。となると収入も増えない。よって利益はいつまで経っても出ない。悪循環。
    サービスが先、利益は後と言えるのは社長。だからこそ社長が言わなければならない言葉。
    ○○第一は、マンネリの代名詞。というのも第二がないから。
    社長の役目は、会社の現状を正しく分析し、何を重点として取り上げなければならないかを選択し、それを論理的に説明すること。
    全員経営とは経営の目的や目標を明確にした上で、仕事のやり方を細かく規定せずに社員に任せ、自分の仕事を責任をもって遂行してもらうこと。
    日本人は、潜在的に会社への参画意識があるのだから、それを引き出す努力を経営者が怠ってはいけない。
    キーワードはコミュニケーション。目的と目標を明示。
    組織が大きくなると社員のやる気を阻害する者が社内にいることが多い。直属の上司であることが多い。自分の経験をもとに仕事のやり方を細かく指示したがる一方で、会社の方針や計画をなぜそうなのか説明することが苦手。そうなると社内コミュニケーションが途切れてしまう。
    攻めの経営の真髄は、需要を作り出すところにある。需要はあるものではなく、つくるもの

  • とても感銘を受けました。「経営とは論理の積み重ねである」「サービスが先、利益は後」「倫理観」「使命感」など心打つキーワードが沢山。人として大事なところをぶらさず、論理をもって話されているその姿に憧れを覚えました。このような方がいらっしゃったとは。学びを世に還元できるよう尽力したいと思います。

  • 何年もの間、積読していたがもっと早く読めばよかった。極めて秀逸なヤマト運輸創業二代目小倉昌男の自著。
    世間の既成概念や行政の規制から成り立つはずがないと言われた、宅急便を創った才人。
    20年前に書かれた本書の時点で、ネット成熟による宅急便の取扱高の大幅増を予見するほどの先見性。

    経営は論理の積み重ねであり、自身の考えや経緯を筋道立てて説明できることが寛容だと話す。
    その言葉通り、いつ何をどのように考えて宅急便をはじめたか、サービスを始めたのか。その判断に至った経緯が克明に記録されている。
    「サービスが先、利益は後」という繰り返される標語に理念がよく表れている。

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