MBAバリュエーション (日経BP実戦MBA2)

著者 :
  • 日経BP
3.89
  • (78)
  • (88)
  • (98)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 1004
感想 : 76
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822242466

作品紹介・あらすじ

本書は会社の値段が決められる仕組みを解明しようというものである。「投資活動の基本原理は意外に単純だ」と割りきり、核心部分だけをしっかり掴まえ、後はひたすら現場感覚で常識的に考える。そういうアプローチにより、ファイナンスやM&Aの世界が目鼻立ちすっきり見えてくる。これが著者の考える実務の視点である。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 少し古い本ですが、(比較的)読みやすい

    財務会計の基礎がないとあまりピンとこない内容かと思いました

  • PERと1/(r-g)の関係性など、指標の持つ考え方を大いに学べた良書。

  • 会社に対する価値の評価方法、評価を上げる為に何が必要かが理解できた。
    最後の部分の「会社は誰のものか」という内容について、株主のものであるという考えは、そのままの理解がまだ出来ていない。新たな視点を持つことができた。

  • 2021.9.10 読了
    久しぶりに読み直したけど企業価値算定がわかりやすく描かれていて新鮮だった。
    きっちりと理解を実践に繋げてモノにできるようにしてゆきたい。

  • バリュエーション関係の本はたくさんあるが、本書が一番気に入りました。
    How toだけでなくその裏にある思想から解説してあるので飲み込みやすい。

  • 【感想】
    M&Aに関する本・ファイナンスを読んできて、なんとなくわかってきたつもりであったが、本書を通してその理解が曖昧であることを実感した。

    個人的に、本書で最も学びになったことは、「企業価値」「時価総額」「企業の価格」の違いであった。なんとなく、これらは全て同じものだと思っていたが、読了した上でそれぞれが違うものを指し、また、どんな関係があるのかを理解することができた。特に、「企業価値」をPV=C/rーgというテキストでよく見る公式と関連づけられた点は良かった。

    DCF法もなんとなく知っているつもりであったが、本書によって理解を深め、さらに、その利用目的も把握することができた。

    残念だったことは、本書を読むことで知識が身につくことには繋がらない点だ。本書を読んだのちに、会社の研修で同じような講座を受講したが、全く歯が立たなかった。ブクログの投稿のために読みなおした際に、研修で理解できていなかった点が本書に記載されており、愕然とした。

    いずれにせよ、本書は、難しい計算式や理論をできるだけ平易に説明し、実務に近い形で解説してくれる。大変読みやすく勉強になった。

    【内容】
    第一章 企業価値という共通語
    ・企業価値とは、
    「株主にとっての投資価値。それ以外の利益関係者にとっての利用価値の話ではない。」
     ・投資価値としての会社の値段は、
      「利益またはキャッシュの多寡に寄って決まる。」
      ・投資価値を計算する最低限のツール
       ・現在価値
       ・ディスカウントレート
       ・永久価値(永続価値)
        PV=C/r
        … 永久に100万円(C)をもらえるときの「現在価値」
         r;ディスカウントレート…リスクの大きさ

    第二章 企業価値を決める要因
    ・PV=C/r-g
     …初年度100万円(C)で、成長率gが永久に続いていく時の現在価値
      ・株価収益率;上記の基本公式を変換しただけ
        PV/C
        =株価/1株当たり利益
        =PER
        =1/r-g
        …r;リスクが小さいほど、g;成長性が大きいほどPERが高くなる
    ・r=CAPMで算定できる
     ※個別の会社のリスクをそのまま数値化するのではなく、分散投資をする機関投資家からその会社はどのように位置付けられ評価されるのかという観点からβを用いる。

    (参考)
    PV=C/r-g より
    「低金利でrが小さい時、わずかなCやgの変化でPVに大きなインパクトを与えてしまう。」

    第三章 会社の値段と企業価値の違い
    ・会社の値段と企業価値は異なる
     ・会社の値段=株式時価総額とは、
      「株価×発行済み株式数」
    ・なぜ異なるのか
     →BSでの範囲が異なる
      ・企業価値;営業Asset、営業Debtを使って生み出すキャッシュの将来価値
      ・時価総額;Equityを時価に評価替えしたもの
    ・企業価値=ネットデット+時価総額
     ・ネットデット=借入金ー現金等

    第四章 会社の値決めの実態①
    ・時価総額が会社の価格として適正化を検討する余地がある。
     ・「時価総額は所詮市場が決めるもので、唯一絶対の会社価値なるものはない」
     ・「時価総額が会社の価格として適正ならば、売り買いは生じない。」
    ・算定方法1;似た会社と比較する
     ・何を持って似た会社とするか
      →C、r、gのパターンが似ている会社
     ・その会社とどの指標を持って比較するか
      →Multiple(倍率)
       ・EBITDA倍率;EV(企業価値)/EBITDA
         ※企業価値=時価総額+ネットデット
        …企業価値はEBITDAの何倍か
       ・PER=税引き後利益/時価総額
        …利益≠キャッシュ→全ての企業を機械的に本来の利益に修正することは難しい
       ・PBR=簿価純資産/時価総額
        …最初に投資した株主がいくら儲けたかを示しているだけ


    第五章 会社の値決めの実態②
    ・M&Aの進め方
     ・財務DD
     ・将来キャッシュフローの算定
    ・株式時価総額より価格が小さくなりうる理由
     ・100%買収によって株式の流動性が失われるから
     ・「凍結」株式によって、時価総額が大きく見積もられている
    ・株式時価総額より価格が小さくなりうる理由
     ・支配権プレミアム
    ・算定方法1;類似上場会社比準方式
     →第四章
    ・算定方法2;類似取引比準方式
     ;過去に行われた類似M&A取引
      ・コントロールプレミアムが踏まえられている
      ・個別事情を省けないことが多い
    ・算定方法3;ディスカウントキャッシュフロー方式(DCF方式)
     ;現在価値に大きく影響する論点
      ・将来予測をどう作成するか
      ・どれほど長い期間の予想をするか
      ・予想期間以降の事業価値(ターミナルバリュー)をどう置くか
      ・ディスカウントレートをどう想定するか

    第六章 M&Aによる価値創造のしかけ
    ・M&Aの目的 – 4パターン
    ・自社立ち上げOR買収 の論点
     ・参入障壁
     ・市場規模の限界
     ・経営資源の共有化
    ・プレミアムの背景・誰のものか
    ・レバレッジ効果

    第七章 M&A現場の実況中継

    第八章 良いM&Aと会社経営
    ・ESOP(従業員持ち株プラン) LBO
    ・MBO(マネージメントバイアウト)
    ・プレミアムは買い手のコミットメントが大前提
     PMI実行部隊の熱量・人間力
    ・敵対的という定義

  • 企業価値評価の世界ではバイブル的な位置付けの本。
    M&Aの際に投資銀行が行うバリュエーションの実務や考え方のエッセンスが濃密に詰め込まれていて、噂に違わぬ良著だと感じた。
    筆者があとがきに「なるべく素朴で原理的な質問を掲げ、普通に読んで納得のいく説明をすることを心がけた」「この本の内容が資本主義や米国流「なるほど」と理解され」と書いているとおり、ファイナンス入門書では手が届かないような細かなポイントまで抑えられており、コーポレートファイナンスはもちろん、資本主義経済そのものに関わる感覚が磨かれる一冊。

    以下学びメモ
    ・指標の関係性
    EBITDA=EBIT(営業利益)+減価償却費
    NOPAT=税引後営業利益
    企業価値PV=c/(r-g) c:収益力, r:資本コスト, g:成長性
    ※経営の目的はPVの最大化(会社は株主のものという発想に立てば特に)なので、rを小さく、gを大きく
    PER=時価総額÷税引後利益
    PBR=時価総額÷簿価純資産
    資本+時価評価替による資産額+のれん=時価総額(株価×株数)=市場の期待値
    ※ここにはネットデットは含まれない(=借金をして得たお金はカウントしない)

    ・企業価値計算のリアル
    各数値は教科書どおりには決められず、実務的には感覚。投資家の信頼を背に実績と信用を積み上げた投資銀行の手数料が高いのは、ある種当たり前と感じた。

    ・LBOの直感的な理解
    買収先の株を担保にして大きな額のお金を借りる→それをもとにM&A→金利払いが大きくなる分の税金抑制効果も働く→経営の合理化→数年後に企業価値を維持して売り抜ければ、元手に対して高い利回りが実現できる。

    ・ベンチャーの時価総額が乱高下する理由
    ベンチャーのPVが急に上がる理由は、gの期待が一気に上がるからであり、cが高くなったわけではない。ゆえに市場の期待度が下がった瞬間にPVも暴落することになる。

    ・バリュエーションにおいてなぜEBITDAが重要なのか
    EBITDAは上記の通り、会社の財務構成にかかわらず、事業活動そのものが生み出すキャッシュの金額を表している。M&Aにおいて、金利額や税金額、償却額などは買収側の財務施策によってある程度コントロールが可能であることから、価格算定にはむしろ純粋な「稼ぐ力」であるEBITDAを指標とする方が理にかなっているため。
    ちなみにバリュエーションの際にEBITDA倍率を使う際も、その分母はネットデットを含む企業総価値(≠時価総額)としなければならない理由もここにある。稼ぐ力であるEBIDAと比較するのは、財務構成が反映された時価総額ではなく、財務構成は反映しない企業総価値と比べるべき。
    →むしろ、この企業価値を財務施策の改善等によってさらに高められそうであるならば買収の余地があることになる。ブルドッグソースの例とかがそう。

    ・経営本部が担うべき機能
    経営企画:cとgを上げる。事業計画を練ってその進捗をモニターする
    人事:cとgを上げる。人的資源配置や働くインセンティブの付与
    財務:rを下げる。資本コストを絶えずチェックして効率化
    IR:rを下げる。市場参加者が感じるリスクを下げて資本コストを圧縮する
    コーポレートガバナンス:c,r,gが適切に動いているかをチェックする

    ・大企業の経営が傾く典型例
    技術発展等、なんらかの脅威が市場に噴出→対策を取らざるを得ない→その中で長年の成長の影に隠れた問題点が露呈→とともに対策により従業員に窮屈が強いられる→問題意識の高い人材が離脱→人材流出により危機感が拡大→状況はさらに悪化
    DXが起きた際の銀行などは特にこのイメージ

  • 企業価値の算定のための本。実際に実務に携わる人でないと、かなりイメージしにくいだろう。

  • 基礎編は類書よりも先に読むべきだった。非常に素朴かつ原理的な説明でわかりやすい。

  • WACCなどがどの様に使われるかよく分かった。

全76件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

森生 明(モリオ アキラ)
グロービス経営大学院教授
1959年大阪府生まれ。83年京都大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。86年ハーバード・ロースクールにて修士号取得。91~94年ゴールドマン・サックスにてM&Aアドバイザー業務に従事。その後、米国上場メーカーのアジア事業開発担当、日本企業の経営企画・上場担当を経て独立。西村あさひ法律事務所およびベンチャー企業の経営顧問・外部役員を務める。テレビドラマと映画版の「ハゲタカ」を監修。2013年よりグロービス経営大学院教授。長年にわたって、総合商社や金融機関、グローバル展開を進める大手企業など、ファイナンスの最前線に立つ実務家たちに企業価値算定・M&Aの研修を行っている。著作に『MBAバリュエーション』(日経BP社)、『会社の値段』(ちくま新書)がある。

「2016年 『バリュエーションの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森生明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×