藤巻健史×成毛眞×松本大 トーキョー金融道 ―トーキョーの、ニッポンの、世界の金融のイマがもっとも過激にわかる本。

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822243296

感想・レビュー・書評

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  • この書籍で一番納得したところは、日本人はリスクコントロールが下手くそという点。
    バブルも土地の下落リスクを考えずに投資して大失敗して、あとは懲りて投資をしない。
    これと同じように原発に対するリスクがあるとは思わずに、リスク対策が疎かだったから大変なことになって、あとはもう拒否反応的に全廃とか。
    国民性なんでしょうかねえ。

    2003年刊行でちょうど小泉改革が進む中での書籍で、まあ色々言っています。
    でも、景気回復の兆しが見えるとか言われるまでですら、10年かかりましたね。

    ちなみにこの10年経済状況も含め大して変わっていないので、内容的にはいま現在でも十分通用するのがミソ。

    読書状況 読書時間120分、ページ数223ページ

    【なるほどな点】
    ・トレーディングでの連続勝利の秘訣を聞いたときのことだ。ポジションを作るときはあらゆる情報を完全に入手しておくこと、という1点であった。(P3)
    ・(失われた20年からの脱出方策について)政府はちゃんとアカウンタビリティ(説明責任)を果たした上で、その上で、国民が参加する形で決めるべきだと思うんです。(P26)
    ・(アジア通貨危機について)民間銀行が他国通貨で借金をしていた。これが通貨安によって過剰債務となって破産して、金融システム不安になった。でも日本はそういうことがない。(P52)
    ・円高で潤うのは、輸入系の企業関係でしょうかね。いやむしろ海外の国ですよ。日本の若い人がせっせと働いて年金にお金を払い込んで、それによって払いだされている年金をもらった高齢者は海外に行って、そこでモノを買っている。海外におカネを流しているわけです。(P55)
    ・(外銀と比較して)日本の銀行の根本問題は経営にある。(P78)
    ・クオリティペーパーというのは客を絞っているからクオリティペーパーなんであって、もはや日本の全国紙の部数じゃ、ある意味で無理がある。(P103)
    ・何が日本の金融機関と外資が違うのか。答えを先に言っちゃうと「ハイリスク・ハイリターン」の思想があるかないか。ハイリスク・ハイリターンを撮ろうというガッツというか、それだけ。(P116)
    ・本来であれば、ハイリスク・ハイリターンというのは、当然ことながら、リスクコントロール・システムをつくってからハイリスクを取らなくちゃいけない。けれども当時(バブル期)の日本人は、不動産をハイリスク・ハイリターン商品ではなく、永遠に右肩上がりで音の上がる商品だと思っていた。そこにリスクコントロール・システムなんか当然ない。結果、ハイリスクを取って、やっぱりやられちゃった。(P117)
    ・基本的に、ぼく(藤巻健史)は楽観論です。ただし条件は円安です。円安がすすめば日本の景気は良くなる。(P131)
    ・しかし、日本の場合にはデフレかいなかを見る時、CPI(消費者物価指数)、とかWPI(卸売物価指数)じゃなくて、不動産の値段を考えなくちゃいけないというのが、ぼく(藤巻健史)の説なんですよ。(P139)
    ・日銀や政府が鋭意努力している景気回復が起こると、国債価格は暴落して市中の金融機関だけじゃなく、日銀までが大損しちゃうわけです。要するに景気回復が始まると金融システム不安が誘発されるという皮肉なジレンマに陥る状況を、いまの日銀の国債買い取りはつくってることになる。(P158)
    ・本来であれば、銀行は自分より格付けの高い企業にはカネを貸さない。本来は自分よりも信用の低い中小企業に与信するんですよ。与信業ですからね、銀行は。自分より低いところにカネを貸すのが当然なんですね。それで電力みたいに安定的な大企業は、銀行よりもファンディング・レートが低いんだから直接金融で起債すればいい。(P164)
    ・(他人が)「この話は儲かりそうだ」と私(松本大)に言ってきたら、私はまず最初に自分の財布を隠すであろう。儲かりそうなあいだは人には内緒、そろそろ儲けも出なくなってきてうまく足を洗おうとするときに、「この話、儲かるよ」と人に言うものである。(P211)

  • 03年刊行の外資ユーモア溢れる対談本。

    現在はおしゃれなご隠居といった風格の成毛氏も、当時はくたびれたおじさんの姿をしておられます。(表紙中央)。会社が人をくたびれさせるのか、はたまた時代的なものなのか。感慨深いものがあります。

    本書は成毛氏が、外資金融を経て金融業界で活躍する藤巻、松本師匠の教えを受けるという組み立てで、その実成毛氏が狂言回しとなって両氏の考えを引き出しております。


    ○成毛
    日本がいろんな意味で「単一な国」だから問題なんであって、日本を分割すればいい、という考えもありますよね。ぼくは昔から言ってるんですよ。日本分割論。中央区と千代田区と港区の三区だけを「日本」と呼んで、これを存続会社にして、残りのすべてを「倭国(やまとこく)」にしてね、そこは鎖国すると。すべての貿易は日本国を経由して行う。ここにはバイリンガルで若いのしか置かないと(笑)残りはもう好きにやって、鎖国状態でいい。

    ○成毛
    日本の新聞の部数は極めて特異で、1000万部だの700万部だの300万部だのというのは先進国の新聞ではあんまり例がない。クオリティペーパーというのは客を絞っているからクオリティペーパーなんであって、もはや日本の全国紙の部数じゃ、ある意味で無理がある。

    ○藤巻
    それはね、全部株もまずいし、全部土地もまずくてね、ある程度おカネがある人はやっぱり土地と株両方やらないとダメです。全部株だとさっき言ったように、自分で時価評価しちゃうからこわいんですよね。一方、全部土地だと、今度は流動性がなくなっちゃう。

  • 元マイクロソフト社長の成毛氏が著者の一人なので読んだ。
    2003年頃の対談なので現状とは大きく異なるのかと思ったが、金融素人の自分が読んでも参考になる裏話が面白かった。
    「日本は資本主義ではなく社会主義である」というフレーズは、まさに日本のイケてない本質を突いていると痛感した。

  • 最近藤巻氏の著書が本屋でよく見かける。発言が過激でおもしろいです。日本が金融途上国で、国際的にみてアブノーマルで、実は社会主義国家という事が分かりやすく書いてあります。4年前の本ですが、今読んでもすんなり受け入れられます。それだけ日本は金融のグローバルスタンダードに追い付けていないってことなんでしょうか

  • 大学1年の時に初めて読んだ金融本。卒業後、読んでみてさすがに理解度はかなり上がったものの完璧に理解は仕切れていないかな。歯切れの良い議論で引き込まれます。金融業って「与信」業、自分より格付が高い企業に貸すのはおかしーだろっていう議論は基本的な話だけど再認識しなければいけないこと。優良な大企業は間接金融から直接金融に移行していくのは当然の流れなのに日本ではまだまだ。自分が現役の間に、日本の金融はどのような変化を遂げていくのか。興味深い所である。

  • 3人の率直な意見が面白い。個人金融資産についての話は特に参考になる。

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著者プロフィール

1950年、東京生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。80年、行費留学にてMBAを取得(米ノースウエスタン大学大学院・ケロッグスクール)。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、85年、米モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)に入行。東京屈指のディーラーとしての実績を買われ、当時としては東京市場唯一の外銀日本人支店長兼在日代表に抜擢される。同行会長からは「伝説のディーラー」と称された。
2000年、モルガン銀行を退行後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務めた。1999年より2012年まで一橋大学経済学部で、02年より09年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師を務める。13年から19年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、㈱フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

「2022年 『超インフレ時代の「お金の守り方」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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