イノベーションの本質

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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822244064

感想・レビュー・書評

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  • イノベーションとは、私には活気と見える。 過去からこの企業はというと独自の風土を持ち、それぞれ伝説を持っている。 シャープでは、早川徳治であり、パナソニックでは、松下幸之助、日清食品では、安藤百福さん、ソニーでは、井深大・盛田昭夫、ホンダでは、本田宗一郎であった。 その伝統が受け継がれなくなり、企業が本来の仕事を忘れると後退する。 それがイノベーションである。

  • 野中郁次郎と勝見明共著、イノベーション・シリーズの一冊目。シリーズで一貫して主張しているのは、米国的な分析志向の経営手法では本当のイノベーションを生み出すことはできないということ。
    少し前に読んだので多くは覚えてないが、最も印象的だったのは、

    イノベーションは弁証法の考え方から生まれる。

    対立する2項を超えた上位概念を追求することで、初めて2律背反を乗り越えるイノベーションが生まれるという主張。
    この考え方にはとても共感できる。
    普段の仕事の中でも、問題や障害が起きたとき、回避して前へ進む解はやはりその場しのぎのもの。

    相反する物事を束ねて解決していく道こそが、本当の発展、解決作、次のステップを与えるというのは、いつも感じるものである。

    この考え方は、自分の基本方針にしたいと思ってきた。
    年初の全体会でも説明したのだけど、どれだけ理解してもらえたか。
    せめて、この本を読んでほしい。

  • イノベーションの本質を読みました。
    日本でヒットした商品の背景にあるイノベーションについて、分析しています。
    サントリー「DAKARA」、ホンダ「アコードワゴン」、デンソー「二次元レーザーレーダーシステム」、キヤノン「IXY DIGITAL」、スズキ「チョイノリ」、富士通「プラズマディスプレイ」、ヤマハ「光るギター」、黒川温泉観光旅館協同組合「黒川温泉」、日清食品「GooTa」、松下「遠心力乾いちゃう洗濯機」、ミツカン「におわなっとう」、スタジオジブリ「千と千尋の神隠し」、海洋堂「食玩」と、13の事例について分析されています。

    それぞれの事例が「物語編」と「解釈編」から成り立っていて、「物語編」は、さながらプロジェクトXのような熱いドラマが記載されています。「解釈編」でそのヒットにつながる分析が記載されています。

    相対的な価値の追求ではなく、絶対的価値の追求
    創造は「弁証法」から生まれる
    ミドルアップダウンによる知的創造プロセスの促進

    といったところがキーワードかなっと。

    「弁証法」は考え方の相反する相手と対話しているうちに新しい考えが生まれてくるプロセスのことです。
    物事を解決する、交渉するには「おとしどころ」が重要と思いますが、創造する場合には、、いろんな視点から議論して、新しい視点を見出し、より高い次元の真実にいたることが重要とよみときました。

    また、ミドルのアップダウンについては期待さえるミドルへの役割と思われます。
    トップダウンでもなく、ボトルアップでもなく、難しいマネジメントといえるものです。
    んま、そういうことができる人こそが、この事例に選ばれているんでしょうね。

    この書籍で活躍された人は、みんな格好いいです。

  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB00040860

  • 野中先生の理論を実際のケースに照らし合わせて解説した本です。「ミドルアップダウン」の実際の苦闘がリアル感を持って伝わってきます。13のケースが出てきますが、その最初がサントリー「DAKARA」の事例です。その開発ストーリーの中に、野中理論の「場」「暗黙知→形式知」「メタファー・アナロジー」とか、日本古来の思想である「守・破・離」などが照らし合わされており、なかなか面白いと思います。この本の続編に「イノベーションの作法」(日本経済新聞出版社)という著もあり、そちらには「伊右衛門」がケースとして出てきますので、そちらもどうぞ。2010年に第三弾の「イノベーションの知恵」というのが出ました。

  • 09/6/9 大前みどり
    これまで自分が勉強したこと、経験したことが、バラバラと自分の中に
    存在していて、ただそのままの状態だったのが、

    この本を読んでいるうちに、そうかー、そうかーと
    だんだん消化(昇華)されてきて、つながってきた。



    (こういうことを書くと、すごい経験をしてきたと自分で思っているように
    思われてしまうかもしれませんが、私なりの、ということです)



    物語編と解釈編の構成がやはりよいのだろう、と思う。
    物語編で、細部まで想像力を駆使して、その世界に入る。
    それを解釈してもらえるのだから、これは気持ちいい。



    まだ自分の中で何かの形になったわけではないけれど、
    未来に希望が持てた。



    形式、形態をいくら考えても、本質的でないことも
    暗黙知を形式知にするそのときに、仮説と対話が必要であるということも
    型や場の大切さも、



    これまでの経験がなかったら、理解できなかったと思う。



    と当時に、自分の経験を通して概念や事象を理解しているということは、
    そこですでに自分というフィルターが入っているということでもある。



    自分というフィルターのあちら側もこちら側も、
    同じ質で充たされるといいなあ。



    それには、
    とことん突き詰めること。
    深く深く突き詰めること。



    まったくもって抽象的な感想になってしまいましたが、
    生きること、働くことというのは、本質とか真理とかを追求するプロセスなのではないかなあ
    と思いました。




    抜き書き。
    癒されます。





    「はたしてお客さんは何を感じるのか。それは、人がどういう行動を
    して、どんな生活感を持ってくらしているのか、自分で聞き、自分で
    確認しなければわかりません。
    商品づくりは人を見るところから始まる。現場でいろんな人に
    会ってきては、みんなで思い思いに語り合い、それをノートに
    とっていく。最初のころは、ただ紙が増えていくだけでした。
    その積み重ねの中からコンセプトを抽出していく作業を続けたのです」
    (DAKARA開発リーダー 北川氏)





    よい場とは、固有の意図や方向性や使命を持ち自己組織化されている。
    境界が閉ざされておらず開かれている。多様な背景や視点を持った
    人たちとそこで感情の共有や対話ができる、他者との相互作用の中で
    自分をより高い次元へと自己超越していくことができる・・・
    といった特徴をあげることができます。極端な話、場をつくることの
    できない組織は、新しい知識を生みだすことはできないのです。





    ヒト、集団、組織には矛盾を綜合する能力が本来備わっています。
    その綜合能力を発揮する場ができれば、限界は突破される。
    大切なのは矛盾を避けた最適化ではなく、矛盾を許容し、解消していく
    綜合化なのです。





    場とは、共感と信頼にもとづく対話を通じて、新しい知が生み出される
    時空間ということもできます。さまざまなところに場が多元的に形成
    され、有機的につながれば、優れた知を総動員することができるのです。





    これまでのやり方の延長上で改善をいくら積み上げても、なかなか、
    正・反・合のプロセスにはなりません。大切なのは転換の視点です。
    ただ、これまでのやり方を突き詰めなければ視点の転換はできないのも
    事実です。





    型のできた組織が、明確な目標志向を持って動いたとき、他の追随を
    許さない強さを発揮し、成功に至る。





    目の前のことに一生懸命、主体的に取り組んでいくうちに夢が見つかり、
    信念が形成された。そして、自分で夢を育て、信念を貫き、ついには
    イノベーションを実現していきました。
    イノベーションを起こすとき、夢を持つことや信念を抱くことは
    とても大切ですが、それはどこからかふと湧いてくるのではなく、
    日々の仕事に対して主体的にコミットメントしていく中から生まれてくる
    ものなのです。





    黒川温泉の成功の「型」
    1.「一即多・多即一」のバランスが成り立つ場が形成されている
    2.「吸引力のあるリーダー」を芯にして自律分散的リーダーが存在
    3.「個の知」がまわりに与えられることでどんどん膨らみ「全体の知」へ
    4.謙虚さ





    刮目すべきは、繁栄をとげてもなお傲慢にならず、成長すればするほど
    恐れを知り、危機意識を抱いていることです。常に黒川全体をモニターし、
    個と全体のバランスが崩れそうになると原点に立ち戻りながら発展を
    めざそうとする。それは、黒川の持つ価値が、仲間同士の共創とそれに
    対する顧客の共感という関係性の中でのみ成立することを、黒川のリーダー
    の誰もが無意識に自覚しているからにほかなりません。





    組織的知識創造のSECIモデル
    ○共同化(Socialization)
    ⇒個人の暗黙知から組織の暗黙知へと変換。直接体験を通じて暗黙知を共有。
    ○表出化(Externalization)
    ⇒暗黙知を形式知に表出。メタファー、アナロジーなどを用いてコンセプトにしていく。
    ○連結化(Combination)
    ⇒形式知と形式知を組み合わせ、新たな形式知をつくり出す。
    ○内面化(Internalization)
    ⇒形式知から暗黙知へ。行動や実践を通して、新たな暗黙知としてメンバー全員に吸収。





    一人ひとりの知識創造力を活かせるか否かは、SECIモデルがうまく回るような
    場をいかにつくり出すかにかかっています。暗黙知を共有するための共体験の場、
    暗黙知を形式知へと変換していくための対話の場、様々な形式知を組み合わせて
    いくための多様なネットワークの場、そして、形式知が実践を通じて新たな
    暗黙知として吸収されていく場と、あらゆる機会づくりを心がけることです。





    (海洋堂の)造型師たちは夕食が一年中ホカ弁でも文句一ついわず、休日も仕事をし、
    模型づくりの疲れを模型づくりでとるような「オタク」たちだ。ひたすら原型の
    製作に打ち込み、「高級料亭」の品質をいかに手のひらサイズの世界に凝縮するか、
    「10しか入らないところにいかに50の情報を投じるか」と苦闘する。つくっては
    しばらく寝かせ、また手を加える。考えながらつくり、つくってはまた考える。





    直接経験がなぜ大切かといえば、人間の「知覚」が働くからです。例えば、
    相手の立場からその状況を眺める。つまり、相手の視点そのものの中に
    入り込んで相手の身になるという行為は、言葉を媒介せず、他者と直接触れ合う
    経験を通してしかできません。相手を対象として意識するのではなく、直感的に
    知覚する世界です。





    経営の本質は論理でもなければ、分析でもなく、かかわる人々の未来に
    自己を投企しようとする生き方そのものであることを、われわれはもう一度
    認識すべきです。







    この後に『知識創造の方法論』を読み、これがまた感動をした。

    またこんど。

     

    知識創造の方法論―ナレッジワーカーの作法
    野中 郁次郎

  • 主にミドルマネジャーによる周囲への働きかけによって知識創造の循環が生まれ、ヒット商品が誕生するまでの過程が13事例(ホンダ「アコードワゴン」、Canon「IXY DIGITAL」、スズキ「チョイノリ」、松下「ドラム式洗濯乾燥機」、ミツカン「におわなっとう」、海洋堂「食玩」など)紹介されています。また、それぞれのストーリーが紹介された後に、野中郁次郎氏による“追加講義”が入ることによって理解度が深まる構成です。

    ただ「イノベーションの本質」と銘打っていますが、ドラッカーの7つの機会に基づいて言えば、これら13の事例はほぼ「ギャップを探す(第2の機会)」と「ニーズをみつける(第3の機会)」に限定されており、産業や市場の外部に現れるイノベーションの機会(第5~第7の機会)に関する事例は含まれていないように思われます(しいて言えば富士通のPDPの事例か)。

    知識創造(SECIモデル)、ミドルアップダウンを具体的事例によって解き明かすのが本書の肝ですので、その辺には限界があったのかもしれません。

    野中氏の「知識創造企業」のケーススタディ編的位置づけとして興味深く読むことができ、内容としてはおすすめできる一冊です。

    -------------------

    以下、印象に残ったフレーズを列挙します。

    相対価値ではなく絶対価値を重視する(p44)

    二律背反を両立させ、常識を打破する(p55)

    商品開発において重要なのは顧客のニーズの背後にあるウォンツをいかにつかむかですが、ほとんどの場合、顧客自身もそれに気づいていない(p139)→鵜呑みにせず、行間を読み取る(p172)

    行動主義と仮説・検証プロセスという方法論を持っていることはイノベーターであるための一つの必要条件(p162)

    場を活用しネットワークを生む能力/仲間たちを傍観者でいられなくする(p162、163)

    主観的世界の入口は、自らの思いです。(p308)

    過去が今を決めるのではなく、未来というものを置くことによって、過去が意味づけされ、今が決まる。未来によって主導されてこそ、今というときが日々、生き生きと刻まれるのです。(p344、345)

  • 13の事例に対して、ジャーナリストによる記事と、経済学者による解説が交互に記述される分かりやすい構成。貫かれる想いは、弁証法、直接体験、熱い想い。

  • ジャーナリストと知識経営学者の共著。13のケースを物語編と解釈編という構成で描かれている。市場に受け入れられ高い評価を得られた商品・サービス、且つリアリティが欠如した机上の空論ではなく日常にある生の素材をケースとして挙げられている。いずれのケースも批判的に捉えるのではなく、優れて学ぶべき点に焦点が当てられている。読んでいて感じたのは、イノベーションを起こすには理論分析だけでなく弁証法が必要であり、またそれらのバランスが重要であること。仮説設定し、市場や日常生活の中の直接経験から暗黙知に触れて初めて、コンセプト及び絶対価値が形成される。そして弁証法的対話により、コンセプト及び絶対価値に磨きがかかる。ロジックだけでは、知識創造できないと分かった1冊でした。

  • イノベーションを産み出すためにはどうすれば良いのかということなのかもしれないが、もっと本質的に、どのように働けば良いのか?どのように生きるのかということを改めて考えることが必要だと思わされた。
    形式知や客観だけでは傍観者となってしまう。主観的に動き、現場を直接知り、仮説を立て、繰り返し検証していくことの大切さを痛感した。自分自身がそのようなことができていないと思い当たる節が多すぎるので、すぐにでも行動に移そうと思う。

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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