正社員時代の終焉-多様な働き手のマネジメント手法を求めて

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822244880

作品紹介・あらすじ

社員、パート、派遣、業務委託-。働く目的も、働き方も異なる人々をどう管理していけばいいのか?企業事例も豊富な現場マネジャー待望の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 著書が出されて5年以上が経過、当時の予想を超えました。2011年の24歳未満の非正規雇用割合が男性約49%、女性約51%。男性は2010年に比べ8ポイントほど増えている。非正規が多数派の時代はすぐそこに。

  • 現在の就業形態の多様化の実情と、その位置づけの分類を体系的に整理している。経済情勢や就業観の動向にもよるが、大きな流れとして自分は企業とどんな関係を築きたいか。そのためにはどのような視点でキャリア開発を行うべきか、そう考える上で示唆に富む視点が得られるだろう。非正社員を含め就業形態が多様化する現実を直視し、そこに一歩踏み込んだ思考を伴うマネジメントを考案するヒントとなる。
    【メモ】従来の「終身雇用」「年功序列」「企業内組合」でなく、新卒一括採用に始まり、職能資格制度によって年次管理され、定年退職で終わる、いわゆる「正社員」雇用の仕組みこそ日本的雇用システムの特徴 / 正社員システムは成長が前提とされない社会で高コスト構造のデメリットを吸収できない / 正社員システムは正社員に優しく、そうでない人に冷たく疎外感を味わわせる / 正社員という働き方は標準でなくなろうとしている / 正社員という標準モデルを選定とした税制・社会保障制度も根本的見直しを迫られる / 正社員がすべてを取り仕切る時代から、多様な就業形態の人が集まって協働する世界へ / 日本人事の特殊性:女性より男性、非正社員より正社員、就職でなく就社、役割と期待が不明確な採用、責任を個人に帰属させず業績を報酬にリンクしない / 日本企業の人事改革:新卒採用抑制⇒人材リストラ⇒代謝のマネジメント⇒福利厚生施設売却⇒国際会計基準導入による退職給付債務⇒成果主義人事 / 本社統制から事業部ごとの予算範囲で非正社員が管理され、全貌が見えない人件費 / どこまでが人件費で、それをどこがマネジメントすべきか / 単純・周辺的業務が非正社員に回る結果、正社員若手の仕事の基本を学ぶ業務現象と成長実感の喪失 / 内部労働力と外部労働力の境界(情報アクセス権、人材育成投資、福利厚生)の合理性喪失と流動化 / 法律では社員とは株主のこと、経営者も雇用者もすべて従業員という区分 / 労働法での区分は、期間に定めのないものと期間に定めのあるものの二つのみ、ここでも「正社員」という概念・法的根拠はない / 実態としての正社員:会社の指示を受け、リスクを負って何でもする、どこへでも行く、いつまででも働くという働き方を受け入れた存在。変わりに雇用保障、福利厚生、退職金の権利 / 自分のキャリアを会社に預けるリスク:専門性を積めないリスク、転勤リスク / 欧米では職務主義。仕事内容が明示された雇用関係 / 出世を共通目的にした正社員モデルという単一な価値観の障壁 / 就業人口ピークは1997年6500万人(15歳以上の61%)/ 無業者出現背景:?「成功モデルが失われた」=サラリーマンが魅力的でなくなった、?意欲低下、子離れしない親、パラサイト、所得格差による教育機会の不平等化 / 就職協定廃止による就職活動長期戦化 / アメリカの子ども理想の職業1位はビジネスマン / ウェブによる新卒労働市場の真の自由化 / 正社員比率:1997年57%、2002年53%(△200万人)/ フリーター数:定職につかずアルバイトを継続する人口⇒[厚生労働省]+フリーター的仕事を探す失業者=219万人⇒[内閣府国民生活白書]+若年全ての失業者=417万人 / 内閣府が失業者を全部集計したことで、「働き方」から「仕事に就かない若者」を表す用語となり、フリーター本質を見えにくくしている / フリーター増加は明らかに企業の人件費削減要請、若者は仕方なくフリーター求人にすがった / 厚生労働省調査:1年を超えてフリーターをしていた若者は正社員採用応募時にマイナス評価される傾向 / 企業のフリーター活用のための昇格施策等により、3年超えてフリーターする若者比率30%超 / 契約社員比率:1999年8.5%、2003年14.8% / 社員が超過勤務の中、電話一本で調達可能、人件費以外の経費で戦力確保、現場判断で活用できる「救世主的」派遣社員 / ハローワーク求人の30%以上を請負求人が締め失業者を吸収する最後の砦になる事態も発生 / 製造業請負の延長EMS / 非正社員増加は、正社員の雇用機会を奪うよりも、新たな就業機会を生み出した要素の方が多い / 解雇や労働条件の不利益変更も労働基準法の制約がある中、唯一企業が選択できる方法。若者、高齢者、主婦に道を開いた / 同一価値度労働・労一賃金の原則 / 非正社員化により人件費が変動費化したが、コスト削減できたという詳細リポートはなし / 非正社員に「任せるよ」は「責任転嫁」と同義語になる / リソース・ベースド・ビュー:コスト比較だけでなく競争優位を持続的に構築する担保となる資源を考慮 / 雇用ポートフォリオ:日経連「新時代の『日本的経営』」1995年、雇用柔軟型・高度専門能力活用型・長期蓄積能力活用型 ⇒ 人材の群別管理の必要性を示すが、長期雇用人材が経営の中心という前提 / 今後のコア人材要件の明確化=外部化すべき人材の弁別基準 / ヒューマンリソース・アーキテクチャー(リパックとスネル):戦略価値×企業特殊性、人材調達様式(内部育成・外部調達・提携・契約)、組織と人材の関係性(相互「関係特殊投資」的、共生的、取引的、協働的)、人事管理(コミットメント、労働市場価値、服従重視、協働)/ 「戦略合理」に基づく活動、「資源合理」に基づく活動 / 人材ポートフォリオ(企業特殊性×取引費用)×(知識レベル×システム化可否)/ 企業特殊性が低く知識レベルが高い専門職は、有期雇用契約や業務委託に基づく互酬関係の構築 / 人材ポートフォリオにもとづく仕事見直し:?企業特殊性評価、?効率化ダイナミクス:システム化、機械化の可否、?育成ダイナミクス / 人材調達力の限界や労働市場の未成熟さの中で、業務のアンバンドリングとリバンドリングによる仕事の再配分によって、現実の中で人材ポートフォリオを運用するための調整が求められる / リクルートワークス研究所『「一皮むけた経験」リサーチ・プロジェクト』:経験をイベントをレッスンに分類 / パス・ディペンデンシー(実現したい働き方を形成する起点:それまでのキャリア+働く目的+社会的背景・現状)×組織への要望=働く価値観 / 非正社員5つの特徴:?能力範囲の限定、?権限委譲の忌避、?変化や不確実性への対応力が著しく弱い、?仕事における我慢強さの欠如、?業務のゴールイメージが大切 / 非正社員の動機づけ要員の多様化 / 非正社員の7タイプ:理想の職場追求、スペシャリスト、仕事そんなに大事じゃない、とりあえず就職、正社員疲れちゃった、仕事大好き頑張りやさん、なんとなく働きたい / 業務委託に関するパフォーマンスマネジメント:?取引先選択、?インセンティブ設計、?支援環境整備、?信頼構築 / 業務委託に潜む七つのリスク:?知識・情報漏えい、?知識・情報操作、?品質低下、?業務停滞・停止、?みなし雇用、?委託パートナーの交渉力増大、?委託パートナーの競合化 / リスクマネジメント:?情報セキュリティーの構築、?モニタリング、?代替性の確保、?ペナルティー契約の仕組み / ダイバーシティ・マネジメントを実現するユニバーサル組織 / ワークライフ・バランス / パートナー型組織:LLP(Limited Liability Partnership)/ プロフェッショナル化は人事の今後10年の最大のテーマ / 多様(成功モデル、ワークスタイル)と多才(多くの専門分野、多くの年齢)な社会

  • 「誰もが正社員として雇用されて定年退職までの生活を保証される時代は確実に終わるだろう。」

    そんなちょっとセンセーショナルな書き出しで始まるこの本。

    “正社員”的な働き方を望まなくなった労働者の増加と、人件費削減という企業側の思惑とが合致し、日本の企業の正社員比率は減少の一途をたどっています。

    今後も激増することが確実な“非正社員”たる業務委託社員やパート社員をマネジメントし、その能力を最大限発揮してもらうためにはどうしたらよいか。

    企業側(経営者・人事部門)の立場から、来るべき変化への対応方法について述べる本です。

    個人の立場としてどう対応すべきかについて考えたい方は、『ビジネス・プロフェッショナル』をどうぞ。どちらもリクルート・ワークス研究所所長の大久保氏による著です。

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著者プロフィール

リクルートワークス研究所アドバイザー。株式会社職業能力研究所 代表取締役
1983年一橋大学経済学部卒業。同年株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)入社。人材総合サービス事業部企画室長、地域活性事業部長などを経て1999年にリクルートワークス研究所を立ち上げ、所長に就任。2010年~2012年内閣府参与を兼任(菅内閣、野田内閣)。2011年専門役員就任。2012年人材サービス産業協議会理事就任。専門は、人材マネジメント、労働政策、キャリア論。

「2023年 『一人ひとりを幸せにする 支援と配慮のマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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