激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822245832

作品紹介・あらすじ

現代中国論の大家が居並ぶ専門家に喝!ベストセラー『マオ』はどこがダメなのか。炎の書評集。

感想・レビュー・書評

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  • 『ワイルド・スワン』で脚光を浴びた張戎は,05年に夫と共著で,毛沢東の伝記『マオ』を出した。しかしこれはいわゆるトンデモ本らしい。矢吹晋によれば,事実を曲げてまで毛沢東を極端に悪魔化した悪書である。何百人もの関係者への聞き取り,厖大な史料の引用は,宣伝のための虚仮威しにすぎない。出版当時,「中国近現代史を書き換える衝撃の一冊」などと新聞書評で「中国の専門家」は囃したが,「マオ」が描く新事実は到底実証研究に耐えない。何しろ張作霖爆殺の犯人をソ連にしているくらいだ。張戎も夫も歴史叙述の訓練を受けておらず,史料批判は杜撰きわまりない。
     文革であんなひどい目に遭ったのだから,張戎が毛沢東を憎むのも仕方ない,と私の妻は同情的だ。確かにそうかもしれない。歴史というものは,距離をおいて眺めなければ,本当には記述できない。歴史の被害者が歴史を書くのは非常に難しい。『ワイルド・スワン』は個人的な体験をもとにした家族史であり,優れた作品だ。しかし,これで張戎が有名になったばかりに『マオ』が読まれ,毛沢東に関する誤解が広く流布してしまったことは,残念なことである。

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著者プロフィール

1938年生。東京大学経済学部卒。東洋経済新報社記者、アジア経済研究所研究員、横浜市立大学教授を経て同大学名誉教授。朝河貫一博士顕彰協会代表理事、21世紀中国総研ディレクター。『朝河貫一とその時代』(2007年)、『日本の発見――朝河貫一と歴史学』、『尖閣問題の核心』、『敗戦・沖縄・天皇』、『南シナ海領土紛争と日本』(2016年)、『沖縄のナワを解く』(2017年)、『習近平の夢』(2017年)、『中国の夢』(2018年)、『コロナ後の世界は中国一強か』(2020年)など著書多数。

「2021年 『天皇制と日本史 朝河貫一から学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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