オークションの人間行動学

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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822246631
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作品紹介・あらすじ

21世紀の経済システム「オークション」を学ぼう。ゲーム理論、行動経済学、実験経済学の華麗なる協演。

感想・レビュー・書評

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  • 表紙のデザインほど簡単な本ではないが、ミクロ経済学の応用の入門として読むにはいいだろう。

  • 本書はインターネットオークションにおける買い手や売り手の行動について、理論と実際の観測・実験結果から議論している本である。ゲーム理論の支配戦略、およびナッシュ均衡の定義程度は知ってから読むのがおすすめである。

    筆者は計算機科学の研究者で、世界最大のオークションサイトであるeBayで古銭の収集を趣味としている。オークション理論は1961年、ヴィッカレーの論文によって始まり、現実のインターネットオークションで見られる、様々な売り手・買い手の振る舞いをモデル化しようと努めてきた。本書では前半2/3でオークション理論の基礎に触れるとともに、理論の予測と合致しない、実際のユーザの振る舞いについて、時には理論的に、また時には自身の経験に基づいて説明している。ここまではほぼ数式を使わないで説明し、後半1/3はヴィッカレーから1981年、マイヤーソンの最適オークションに至るまでの基礎理論を形式的に記述している。また付録として実験室実験による観察結果についても簡単に触れている。

    おそらく、オークションに詳しくない読者にはかなり意外で、またヤフーオークションなどの常連は薄々気がついている事実は、伝統的なオークション (イギリス式オークション) やインターネットオークションで行われているのが「2位価格オークション」であるということだろう。これは落札者は自分の入札額 (これ以上この商品に払えない価格) を払うのではなく、2位入札者の額を払うことである。ここから始まる様々な結果、および売り手・買い手が取るべき戦略について、本書は読みやすい文体で伝えている。

    全体として良書だと思うが、前半部分はややまとまりがなく、理論から得られる結果、観測結果、筆者の体験談による意見、の区別がやや曖昧である。また、近年のインターネットオークションで見られるような、(収集品ではなく) 日常使用する商品については事情が変わってくると思うが、そのあたりの記述は少ない。また後半部分についてはリンケージ原理や収入順序付け定理などまで含めて欲しかった。それらの点を減点して★4つとする。本書で (インターネット) オークションの基礎を勉強して、Krishna (2002)などの専門書で学習するとよいと思われた。

  • 絵画の高額落札がニュースになり,サザビーズやクリスティーズなどの伝統的なオークションハウスの名前を耳にすることはしばしばある。しかし,それでも「オークション」というとeBayやYahoo!などのインターネットオークションを思い浮かべるひとも多いかもしれない。本書は,コンピュータサイエンスを専門とする著者による,新しいタイプのオークション理論についての入門書である。本書の特徴は,「インターネットオークション」に固有な問題に対して多くのページを割いているという点にある。

    オークション理論は,「出品されている商品に対する入札者の評価値」や「入札者が他者の入札行動を観察できるかどうか」などを基準としてオークションを幾つかのタイプに分類したうえで,出品者や入札者の行動を分析する。この分類は,伝統的なオークションハウスで行われるオークションや公共事業の競争入札に対してはそれなりにうまい分類方法であると言える。しかし,既存のオークション理論による標準的な分類には馴染まないたくさんのオプションや機能がインターネットオークションには備わっている。例えば,自動延長ルールや即買価格,出品期間の長さなどである。そのため,スナイピング(狙い撃ち入札)といったインターネットオークション特有の現象も観察される。著者は,多くの学術的な成果を援用しながら,これらの問題を解説している。

    もちろん,本書では標準的なオークション理論の結果も非常に分かりやすく解説されている。二位価格オークションでは真実表明がなぜ常に望ましいのか,一位価格オークションでは入札額を低くしなければならないのはどうしてなのか,それにもかかわらず出品者にとってはどちらのオークションで商品を売っても収入が平均的には同じなのはどうしてなのか,などが,本書を読めば直観的に理解できるだろう(また,議論に必要な数学が付録として掲載されている)。

    オークション理論を分りやすく解説した入門テキスト(またはテキストの中の幾つかの章)はある程度存在するが,インターネットオークションに固有の問題を解説した本は少ないように思う。その意味で,インターネットオークションに関心を持つすべてのひとに本書はおススメできる。

  • インターネット・オークションにおける買い手と売り手の行動について論じた本。
    オークションの方式とそれぞれの特長を論じている。
    難しくて、ほとんどとばし読みとなった。

    興味を引いたのは、「不正行為」のところでイーベイでの美術品詐欺行為が記載されていた。
    昨年読んだケネス・ウォルトン作の「ネットオークションで騙す。 全米を揺るがした絵画詐欺犯の告白」という本を思い出した。

  • うう、僕にはちょっと難しかった。オークションの経済学的仕組みをゲーム理論や実験経済学といった比較的新しめの経済学をベースに説明している本。研究者の論文の理論を説明した後に「自分の経験によれば」と経験則を持ち出すといった構成には疑問残る。(モデル化が難しい世界ではあるので、理論が経験則に反した場合は理論が誤っていることが多いのは確かなんだが、、、)それよりも何よりも、ゲーム理論の基礎くらい知ってて当然だよね、といったレベルの読者を想定している本ではあるので、僕みたいに付け焼き刃での経済学知識しか無い人には、ちとハードルが高うございました。途中で断念したので未評価。

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