天然ガスが日本を救う

著者 :
  • 日経BP
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822247027

作品紹介・あらすじ

温暖化対策の「切り札」は天然ガス。わが国で過小評価されている資源の可能性を資源エコノミストが詳細に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は天然ガスを「知られざる実力者」と表現しています。
    近年、東シベリアなど日本近隣地域を含め世界的に大規模ガス田が見つかり埋蔵量の面でのポテンシャルが有望で、且つCO2排出の面でも天然ガスはかなりの優等生であるとのこと。
    「クリーンエネルギー」というと日本では太陽光発電だとか風力発電などがまず話題に上るわけですが、これらは話題性はあっても広く実用化するにはまだまだ技術的なハードルが高い。
    CO2排出を抑えるという点では優れている原子力利用も推進するには政治面での壁がある。
    それよりも(現状日本では存在感が薄くても)欧米では利用が伸びている天然ガスのプレゼンスを高めるべきだと主張されています。

    天然ガスの他のエネルギーと比べての特徴は、輸送にコストがかかること。
    常温では気体なので、長距離を輸送するにはパイプラインが必要になります。
    欧米では基幹パイプライン網が発達している一方、日本での天然ガス利用はをLNG(液化天然ガス)の輸入が以前より中心になっていました。
    LNGはタンカーで輸入されるわけですが、日本の場合、港湾から内地へとガスを送る国内のパイプライン網も未発達(韓国ではかなり発達しているそうです)で、その要因としては日本ではガス会社の供給地域が細分化され、広域をカバーする大規模ガス会社が存在しないことが挙げられています。

    固定的なパイプラインによる輸送という制約があるため、天然ガスの市場は現状石油のようにはグローバル化しておらず、相対での取引が中心になっているとのこと(今後はそのあたりも事情も変わってゆきそうだとのことですが)。
    物理的に取引相手を変えることが困難であるがゆえ、天然ガスの国際取引においては売る側も買う側も相互依存を高めざるを得ない。
    最近、ロシアがウクライナ向けの天然ガス送出をストップさせ欧州への天然ガス供給が滞ったという話題がロシアを「悪役」に据える形で報道されましたが、著者に言わせれば、上のような事情を勘案すると、ロシアが一方的なバーゲニングパワーを持っているかのような捉え方はナンセンスで、西側メディアのプロパガンダ的側面が強いということです。
    この辺は目からウロコでした。

    個人的に、サハリンでの天然ガス開発の件や日本付近の海底に眠るメタンハイドレートの件などのニュースには関心があったんですが、詳しいことはまったく分かっていなかったため、読んでみた次第。
    著者いわく、おそらく、日本で一般向け、特に一般ビジネスマン向けに書かれた最初の天然ガス啓蒙書、とのことですが、確かに自分も含めて世間ではこの本に書かれているようなことはほとんど知られておらず、その一方でもっと世間一般に知られるべきものであるということを再認識しました。

    それにしても、日本でここまで天然ガスについての関心が高まらない理由って何なんでしょうかね?
    本の中でもちょっと触れられてたけど、原子力利用を推進したい勢力の政治圧力とか影響してるんでしょうか。

  • いまいち。

  • 3.11に起こった大震災の影響で福島第一原発問題が浮上し、
    今後のエネルギー問題はどうなるんだろう。と疑問に思ったところ、
    どうやら「天然ガス」が解決のための有力候補らしく、
    本書を選択した。
    著者は上智大・石油天然ガス金属鉱物資源機構に所属していたエコノミスト

    全207ページ
    1章:温暖化対策は天然ガスが切り札 40ページ
    2章:日本は天然ガス資源に囲まれている 24ページ
    3章:天然ガスが動かす国際政治 46ページ
    4章:これからの国際天然ガス市場 50ページ
    5章:新しい天然ガス資源 47ページ

    エネルギーとして利用するために重要な要素は以下3つである。
    ・安定して供給できる(埋蔵量・政治問題・設備)か
    ・低コストで高出力のエネルギーが採取できる(採取コスト・輸送コスト・発電コスト)か
    ・使用しやすい(環境・変換効率・適量採取)か
    これらに最も適しているのは石油であるが、40年程で枯渇すると言われ課題になっている。
    そこで天然ガスが注目されている。ガスの燃焼熱で電気と温水を効率よく生成する。

    →他国の電力事情(火力、水力、風力、太陽光、原子力、バイオマス)を考え、
    資源選択(石炭、石油、原子力、天然ガス、水、)などを行う必要があることを学んだ。
    ・政治
    ・文化
    ・経済
    についてそれぞれ理解した上で電力システムの提案をすべきだということを学んだ。


    ・電力自由化(発電・送電分離)
    ・各国の石油戦略
    についての本を読もうと思った。

  • 地球温暖化防止のためのエネルギーとして太陽光・風力等のクリーンエネルギーやバイオマスエネルギーが注目されているが、天然ガスは、以下の点により、それ以上に有効なエネルギー源であることが理解できた。
    ①CO2排出量がバイオマスエネルギーと同等である。
    ②極東、アジア地域等、中東以外の地域に多く存在する。
    ③メタンハイドレート、ガストゥーリキッド、シェールガス、燃料電池等々、技術革新により新たな活用方法が期待される。

  • 印象よりも専門的だけれど分かりやすくてよい本だと思った。日本では外国と比べて相対的にも遅れている天然ガス(対欧米比だと半分以下の水準)の本格的な導入こそが、バイオ燃料や風力、太陽光などの開発より、ひとまず余程温暖化効果ガス対策として現実的で効果的な手段であり、石油に対する依存を軽減するためにも天然ガスは有効で、またサハリンや東シベリアなど日本の周辺には膨大な天然ガス資源が埋蔵されており、LNGの拡大に伴い、日本みたいな国への輸送方法がクリアされれば、日本付近ではポテンシャルの低い石油よりアクセスがしやすいということを技術的な話をやや中心にして説明している。カタールの躍進や石油メジャーズの本格参入、米西海岸市場やアジア新興輸入国の登場、スポット市場拡大などの新潮流によって、国際LNG市場が原油市場的になる、つまりLNGのコモディティ化が進むだろうという筆者の予測や、ロシアの資源供給問題については「西側」メディアとそこからニュースを引っ張ってくることの多いにわか仕込みの日本のメディアにはバイアスがかかっているとも言えるニュアンスの記事が多いという叱責や筆者がそう主張する根拠、いわゆるガス版OPECはカルテルとはならない見通し(どうなのかなあ)などなど色々勉強になりました。ただ、石炭について筆者は相当否定的だけれど、よく知らないんですがクリーンコール技術とか今後どうなるんだろうか。

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著者プロフィール

エネルギーアナリスト

「2014年 『木材・石炭・シェールガス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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