世界一シンプルな経済学 (日経BPクラシックス)

  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822248130

作品紹介・あらすじ

ハイエク、フリードマンが絶賛したリバタリアン(自由主義)の古典。英米圏で読み継がれてきた経済学啓蒙書の本邦初訳。

感想・レビュー・書評

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  • 「経済学で頻繁に見受けられる誤りについて分析」した本である。読んでみると、2011年11月現在、日本の国家経済について公に議論しているあらゆる分野の日本人の唱えている諸説が、この本の中に典型的な事例として記述されていると言って良く、そしてそれらのほとんどすべて誤りであるということを再認識できる。言っておくが、この本は1947年に書かれたものである。

    マイケル・サンデルのおかげで「リバタリアン」という言葉が人口に膾炙したが、政治哲学のそれで無く、経済学のリバタリアンの主旨が良くわかる本だ。マスコミ報道を見ているだけでは、非常に浅薄な理解に陥ってしまうアメリカの共和党支持者達の思想の原点がどういうところにあるのか、理解する事ができる。

    アメリカで65年前に書かれ、33年前に改訂された本が、昨年日本で新装出版されている。単に経済学の古典ということで出版されたわけではなく、現代の世界経済や日本の社会にとって必要なことが書いてあるという認識を持っている人がいて出版されたということだ。このように正しい認識を持ちながら出版し、読んで共感する人たちが、ムーブメントを作る事ができない。「これが今の日本の病巣だ」というとそれらしく聞こえるが、そうではなくて世界の歴史のなかで繰り返されてきた事である。

    「いかなる国にとっても対外貿易の真の利点は輸出ではなく輸入に存するのである」
    「公共事業のために積み上がった債務を返済しようというときには、必ず政府は使った以上にたくさんの税金を取り立てなければならない。」
    「一部の集団への短期的影響だけでなく、すべての集団への長期的な影響をも追求するのが経済学」
    「ほぼすべての政府が富と所得の再配分を行って生産意欲を減退させ、国全体を貧しくしているのである。」
    「あらためて目から鱗」の引用したい箇所が多すぎてきりがない。
    最後の解説にあるように、関税・補助金、最低賃金、家賃統制、労働組合の賃金引き上げについての分析は完璧で、これを読んだら昨今のTPPをめぐる新聞報道等はばかばかしくて読む気もおこらなくなるだろう。

    今日の日本人は財物や便益を求めていない、皆が欲しがっているのはただ「貨幣」であること、それ故にフローで語られる「景気」が「良くなる」ということはいくら関係者が「緩やかに回復」と表現しても有り得ることではなく、起こっている事はすべて理屈道理であることがわかる。「貨幣(交換価値)を保全するために財を所有するということが当たり前のように語られ行われていても疑問を抱いていないような事を一例として、目の前で起こっていながら見えていなかった事実を見えるようにしてくれる良書だ。

  • 一般に多用される経済政策の誤りを指摘する啓蒙書。

    経済政策に共通する誤りは「目先の、直接的な、特定の集団への影響」だけを論じているところがであるとする。
    このことを最初に提示し、あとは簡単な問題から始めて次第に複雑、具体的な問題へと話を展開していく。
    思想的にはリバタリアン、自由市場に任せれば最も効率的であるという考えを軸にしている。

    初版の執筆は60年以上も前、翻訳の底本となった第3版も40年前のものであり、古典故の良さ悪さがあるが、そこは解説に詳しいので先に解説を読むと理解が深まる。

    取り上げる例も生活に身近だし、一つの考えを軸にしているから、とても分かりやすい。前半は事例が簡易すぎて退屈だが、後半の実際の政策に近い話になってくるとぐっと面白くなる。
    経済政策を論じる時に限らず、何につけても押さえておきたいものの考え方が学べる良書。

  • 経済学とは、政策の短期的影響だけでなく長期的影響を考え、また、一つの集団だけでなくすべての集団への影響を考える学問である。

     「悪い経済学者はすぐ目につくものしか見ようとしないが、良い経済学者はそこには見えないものを見ようとする」

     以上の格言を具体例で論じている。

     つまり、経済成長は政府の介入では達成できない。国民の生産性の向上とイノベーションに限る!政府の甘言に惑わされるな。


     具体例は時代に流されるから深入りしないけれど、経済学への姿勢を学ぶための本だね。

     これは経済学部大学生の一回生に読んでほしい本ですね。

  • 名前通りシンプルだが、その内容は60年以上前に書かれたものとは思えないほど的確。
    経済を考える時は全体で考えるべきであり、誰かが得をする時に見えない誰かが損をしていることを忘れてはならない、というのがメインの主張。
    仕事の全体量は決まっておらず、完全雇用ではなく最大生産を目指すべきである。

  • 最初の章の,経済政策を考えるにあたっては,一部の集団への短期的な影響だけを見てしまいがちだが,本当はあらゆる集団への長期的な影響を予測する視点を持たなければならない,という主張。これは日常生活や,自分が専門としていく仕事においても強く意識すべきことだなと再認識。経済の基本的な知識を得るにも重宝しました。銀行の機能とか,これを読むまでろくに知らなかった。

  • ●内容
    ・1946初版の自由主義経済学の入門書。読みものっぽい。
    ・さまざまな公的支出について、「それは誰のカネか?」ということ切り口で、一見「善政」に見える政府の福祉を厳しく批判する。

    "人々は、政府は国民に与えるべき何物も持っていないこと、何かを与えるにはまず誰かから、いや自分たちから取り上げなければならないことに気づき始めた"

    "政治家が慈善家ぶって大盤振る舞いをするときに、自腹を切ってその穴埋めをさせられるのはC(無関係の個人)なのである"

    (公営住宅について)
    市場価格よりも安い家賃で住宅を提供することについて。
    "形はどうあれ、公営住宅に入居した人はそれ以外の人に補助金を出してもらっているのであり、家賃の一部を他人に肩代わりしてもらっているのである"


    ●感想
    ・趣味が合うとものすごくハマる。データでなくロジックで読ませていくスタイル。
    ・公共事業や福祉施策の事例で説明しており、身近な事例と重ねて読むと面白い。

  • 多分、挫折。今は拡大をベースとした論理には無理がある。

  • 1946年初版からの再構築の本。
    当時の世界からの指摘としてのインフレの危険性。
    ややケインズ批判。リバタリアンなので。

    ハイパーインフレは誰も望んでいなが、経済成長視野に入れると今は緩やかなインフレが必要なのだろうと思う視点で読むと
    当時との違いが見えておもしろい。
    公共事業の是非も。
    ただ構成が読みづらい。言いたいことは最後のインフレだろうし。

  • 原題は「Economics in One Lesson」。One Lessonとは、「経済学とは、政策の短期的影響だけでなく長期的影響を考え、また、一つの集団だけでなくすべての集団への影響を考える学問である」という原則。この原則に従って、税金、公共事業、関税などについて明快に論じていく。1946年刊行だが、内容は今なお通じるものばかり。「リバタリアン(自由主義者)」の立場から経済学を語る、古典的名著である。

     第一部 講義編
    第1章 基本の一課
     第二部 応用編
    第2章 割れた窓ガラス
    第3章 戦争は経済にとって有益か
    第4章 公共事業は税金である
    第5章 税金は生産意欲を喪失させる
    第6章 公的融資は生産を阻害する
    第7章 機械化は失業を増やすか
    第8章 非効率は雇用を増やすか
    第9章 動員解除と官僚の削減は失業を増やすか
    第10章 完全雇用神話
    第11章 関税で「保護」されるのは誰か
    第12章 なぜ輸出は好まれるのか
    第13章 農産物の価格支持政策
    第14章 X産業を救え
    第15章 価格メカニズムの働き
    第16章 政府による価格「安定」政策
    第17章 政府による価格抑制策
    第18章 家賃統制の結末
    第19章 最低賃金法の結末
    第20章 労働組合に賃金水準は上げられるか
    第21章 「生産物を買い戻せる」賃金水準とは
    第22章 利益の役割
    第23章 インフレ幻想
    第24章 貯蓄に対する攻撃
    第25章 まとめの一課
     第三部 再び講義編
    第26章 三〇年後の再講義

  • 同じような話を何回もされて面白くはなかった。でも勉強にはなった。結局は多角的な視点で物事を考えられないといけないということか。※経済学とは現在あるいは将来の政策がもたらす派生的な影響(すべての集団への長期的な影響)を見極める学問である。

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