フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822250096

作品紹介・あらすじ

1999年、ミネアポリスの超高級ホテルに米国を代表する加工食品大手の首脳が極秘で会合を開いた。コカ・コーラ、ネスレ、ナビスコ、クラフト、ゼネラル・ミルズ。会合の目的は、「肥満や生活習慣病の急増と加工食品」だった。砂糖、塩、油がたっぷりの加工食品が原因になっていることはあきらかで、今のうちに手を打たないと集団訴訟のターゲットになりかねない……。しかし、発言力の大きいゼネラル・ミルズCEOの「自分たちにそこまでの責任はない」という演説で場の空気は一変、食品業界が行動を起こすことにはつながらなかった。それ以来、加工食品大手は、コストメリットと利益至上主義を前面に押し出し、いかに消費者をひっかけることができるかに、しのぎを削るようになっている。その鍵となるのは、塩分、糖分、脂肪分の3つ。大手食品会社は、一流の化学者を大量に動員して、この安くて強力な成分の組み合わせで、人が快感を感じる「至福ポイント」を刺激する食品を生みだしてきた。
 表面上は、「ヘルシー」「ローカロリー」を謳いながら、健康を度外視して売れる商品を作り続けなければならない食品企業の実態と内幕を、ピュリッツァー賞受賞記者ならではのきめ細かい調査取材によって暴くとともに、加工食品の罠からどのように身を守れば良いかを消費者に説く。ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー1位

感想・レビュー・書評

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  • アメリカのジャーナリストの力強い調査と追求力は
    眼を見張るものがある。渾身の筆圧が感じられる。
    アメリカだからできるのだろうか。
    徹底したインタビュー。
    必要な文献の調査。そして、内部文書まであたる。
    日本では、このようなジャーナリストが
    育たないような気がしてならない。
    なぜなのだろう。

    砂糖、脂肪、塩は 『美味しい』を形づくる。
    どんどん食べさせ、どんどんのませるには 
    どうしたらいいのか?
    それを 食品企業は 徹底した 研究をして
    戦略とマーケティングを行ない
    そして 広告宣伝 によって ターゲットを陥落させる。
    企業の論理は 収益獲得に徹底してこそ 
    はじめて 生き延びるが
    そのことによって ニンゲンを 滅ぼす可能性がある。
    まさに 食においての ジレンマの中にあることを 
    浮き彫りにする。
    この本の題名は、フードトラップよりも 
    フードジレンマと言った方が良さそうだ。

    砂糖、脂肪、塩をめぐって、フードカンパニーの
    追及とジレンマを深く掘り下げる。

    砂糖には『至福ポイント』がある。
    そのポイントを正確に把握することが、
    食品会社にとってのコストダウンとなる。
    子供は 生まれた時から 糖を美味しいと思う。
    3歳から5歳の時に 塩味を覚えるようになる。
    塩味は、後天的な味とも言えるが、際限なく食べてしまう。
    食べ始めたら、とまらないのだ。
    子供は 甘いもの が好きな理由が 明らかになり
    それを どうやって 飼いならすか 
    が食品会社のテーマだった。

    至福ポイントは 点ではなく 点の集まりである。
    『欲しがれ;Crave it』
    欲求を高める商品。
    味 香り 見た目 食感。

    お腹がすくから買うのではない。
    お腹がすく予定があるから、それを想定して買う。
    食品の選択は 偶然が多い。必然的買い物は少ない。
    近くにある 便利さが 欲しいものを買う。

    アメリカでは 朝ごはんが シリアル。
    昼ご飯が 簡単なランチ。それを、どう攻めるか?
    砂糖と塩と脂肪まみれにする。

    結局は、フードカンパニーは、
    健康にいいものをつくろうとするが、
    消費者が 受け入れられないことへの 
    失望と困惑が あるのだ。
    結局 炭酸飲料会社は 
    肥満を生みつづけることになるのだ。
    どうにもとまれない現実に ふかい罠が あるのだ。

  • 原題:SALT, SUGAR, FAT (2013)
    著者:Michael Moss
    訳者:本間徳子

    【概要】
     不思議な街で両親を豚に変えられた少女がナンヤカンヤで名前を奪われ湯屋で働く……というお話ではなくて、米国のジャーナリストが加工食品メーカーを調査し企業努力の実態なるものを公開するもの。
     本書の内容は、その企業が消費者の健康よりもマーケッティングを(過度に)優先している点と、その方法の怖ーい点と著者の提言の3点セット。

    【個人用メモ】
    ・大きなテーマを取り上げたルポ。
    ・著者の力点は、道義的責任を果たさない企業の告発と消費者への注意。
    ・本書は二つの面(分野)を行き来する構成。特定のものを好むという(ヒトの生物学的・生理学的な)面と、それを織り込んだ企業の戦略と行政や消費サイドの方策という(経営戦略・社会的な)面。個人的には後者も学術的なアプローチが可能だと思うので、もっと参照してほしい。

    【感想】
    ・大手食品メーカーの陰謀か否か。ただし、そんな見方(自体)はどうでもいい気もする。仮にそのような意図があれば、消費者側が学習すればいいんでしょうし。イタチゴッコはよくあることです。

    ・本書では「食品大企業の隠れた意図」が主要な軸になっている。これのおかけで問題が明確になっている。
    ・しかし陰謀にこだわるのも限界がある。古くから「売れるものを売る」は商売の常識だったろうし、ここに上記の陰謀はない。にもかかわらず、ここにも同質の問題は起こりうる。
    ・例えば江戸住人が脚気にかかりやすかったという有名な逸話も、食生活・栄養の偏りで発生した問題。当時の米農家や問屋や幕府には、陰謀も動機も無かったはずだ。

    ・繰り返しになるが、本書では、「依存・健康への害」という問題の背後に、「企業の利己的な振る舞い、行き過ぎ」という要因を見つける。でも、ちょっと大きく見すぎているのではないかと思う。
    ・社会問題の解決のためには、こういう解釈(利己的な大企業の意図というストーリー)があった方が、みんなの注意を引き付けるから効果的だ、とも言える。
    ・陰謀論を擁護できるのはその範囲まで。

    ・さて、(食習慣の面で)(米国)人にも色んな人がそれぞれ沢山居るというのが分かっていても、自分の中で米国へのステレオタイプが強化されそう。


    【目次】
    献辞 
    目次 [001-002]

    プロローグ 金の卵 003

    第I部 糖分 
    |第1章|子どもの体のしくみを利用する 032
    |第2章|どうすれば人々の強い欲求を引き出せるか? 061
    |第3章|コンビニエンスフード 087
    |第4章|それはシリアルか、それとも菓子か 116
    |第5章|遺体袋をたくさん見せてくれ 150
    |第6章|立ち上るフルーティーな香り 185

    第II部 脂肪分 
    |第7章|あのねっとりした口当たり 212
    |第8章|チーズがとろーり黄金色 231
    |第9章|ランチタイムは君のもの 259
    |第10章|政府が伝えるメッセージ 298
    |第11章|糖分ゼロ、脂肪分ゼロなら売り上げもゼロ 327

    第III部 塩分 
    |第12章|人は食塩が大好き 364
    |第13章|消費者が求めてやまない素晴らしい塩味 386
    |第14章|人々にほんとうに申し訳ない 407

    |エピローグ|我々は安い食品という鎖につながれている 443

    謝辞 [466-471]
    情報源について [472-476]
    訳者あとがき [478-480]
    注 [482-523]

  • 食品は売れるものを作ろうと思うとどうしても依存性のあるもの開発しないといけないというジレンマがある。
    その中で、食品会社に勤めている人は商品に対してどのように誇りを持っているのだろうか?と否定するつもりはないのだが、気になったりはします。
    加工食品の方が安いので、フィリピンでもみんな加工食品ばかり食べるようになって太っている人が増えているのでは?と思います。
    その反動して、フィリピン政府は砂糖税などを増やしているような印象。

    • だいさん
      製品が売れても国が潤わないから砂糖税かな?
      製品が売れても国が潤わないから砂糖税かな?
      2020/01/04
  • 読む前は、「食べてはいけない」のような単なる企業告発物を予想していたが、アメリカ食品メーカーの企業史や新製品開発秘話など、かなり読ませて面白い。
    業界ではこれまで、糖分や塩分や脂肪分の配合量がある値にぴたりと一致していると消費者が大喜びするという「至福ポイント」を見つけ出すのにやっきになってきた。
    ゆえにメーカーにとっては、塩・砂糖・脂肪は、栄養素というより兵器に近いのだが、あまりにもこれら三つの成分が便利でなくてはならい存在になったため、その罠にも容赦なく引きずり込まれることになったと著者は指摘する。

    加工食品の原材料とその配合は、熟練の科学者や技術者たちが緻密な計算のもとで設計し、過食をそそのかすように計算し尽くされている。
    われわれの脳は、糖分、脂肪分、塩分に目がない。
    なら、これらが入った製品を作ればいい。
    利幅を稼ぐために低コストの原料も使おう。
    次に、『スーパーサイズ化』して販売量をさらに増やす。
    そして『へビーユーザー』に照準を合わせて、広告とプロモーションを展開する。

    加工食品業界には鉄則や基本ルールがいくつかあり、「迷ったときは糖を足せ」や奇抜な商品を戒める「80%の親しみ」などもその一つ。
    また、体に良いとされるーつの成分を前面に出し、消費者が他の事実を見過ごしてくれるよう期待するなんていう姑息な方法も用いられる。

    幹部が「われわれは、需要を作り出すのではありません。発掘するのです。試掘して、見つかるまで掘るのです」と語るほど、マーケティングは徹底している。
    それによって、チップス類のように、いままでおやつとして間食で食べていたものを、朝昼晩の食事の常連アイテムに変えたり、贅沢品から成分になったチーズのように、いままで単品で食べられていたものを、原料化して消費を増やすことに成功している。

    「糖分」
    ・ドーナツはより大きく膨らみ、パンは日持ちが良くなる。
    ・“かさ”を増し、色合いを良くする。
    ・泣いてる子も泣き止むほどの「鎮痛薬」。
    ・脳の興奮作用を持つ恐るべき存在。
    ・素早く強力な作用を持つ覚醒剤のメタンフェクミンに似ている。

    「脂肪」
    ・目立たず、さりげなく作用するアヘンに似ている。
    ・食品の口溶けや口当たりを良くし、食感を高める。
    ・至福ポイントがない。
    ・脂肪分は糖分と一緒になると、脳は脂肪分の存在をほとんど検知できなくなり、過食を防ぐブレーキがオフになる。
    ・甘さは、好まれる限度があるが、脂肪分は多ければ多いほど好まれる。
    ・多くても少なくても気づきにくく見えにくい。

    「塩分」
    ・「加工食品の偉大なフィクサー」
    ・最初のひと口で味蕾に生じる刺激感を増大させる。
    ・糖分の甘味を強めてくれる。
    ・クラッカーやワッフルをさくさくに仕上げてくれる。
    ・パンの膨らむスピードをゆっくりして、工場で大量生産できる。
    ・腐敗を防いで賞味期限を伸ばしてくれる。
    ・多くの加工食品につきまとう苦味や渋味といった不快な味を覆い隠してくれる。
    ・肉の再加熱臭を手軽に解消できる。

    「われわれは安い食品という鎖につながれている。安価なエネルギーに縛られているのと同じだ。ほんとうの問題は、われわれが値段に反応しやすいこと、そして、残念だが持つ者と持たざる者との格差が広がっていることにある。新鮮で健康的な食品を食べるほうがお金がかかる。肥満問題には大きな経済問題が関わっているのだ。そのしわ寄せは、社会的資源に最も乏しい人々、そしておそらく知識や理解が最も少ない人々にのしかかってくる」

    本書は、自分や家族の食習慣をオーバーホールするための大きなヒントを与えてくれるが、問題は2つある。
    1つは、「便利さの対価」をどう考えるか。
    われわれは調理という「単調な繰り返し作業」を回避するために、便利さにお金を払ってもいいと考えている。
    塩分への渇望は後天的であり、塩分摂取を減らそうとするなら早くから始めることが重要だとわかっていても、忙しい働き盛りの若い夫婦は、子供のために今日も塩分たっぷりの加工食品を買ってくるだろう。

    もう1つは、当たり前のことだが「安全な食品を食べたければ金がかかる」ということ。
    例えば、スープの滅塩に適した方法は、カーギルの提案する塩化カリウムではなく、新鮮なハーブやスパイスを使うことだが、コストは安価なナトリウムやそれより割高なカリウムよりもさらに上がる。
    また食肉は、脂肪分が少ないほど価格が高くなる。影響を受けるのは、無知な人々だけでなく、貧しい地域の人々やその子どもたちなのだ。

  • 健康とは何か?

    この問いを現代社会を取り巻く複雑な産業構造の視点で、
    見解が述べられています。
    自分達は、多くの食品企業、メディア、医療機関に、
    ただ踊らされているだけかもしれません。

    とにかく、著者の圧倒的な取材量を舌を巻きます。
    これほどのジャーナリストは、まず日本にはいないでしょう。
    文献・論文の読みこなしも、素晴らしいと思います。

    食品企業は、消費者が、「はまるポイント」を常に探しています。
    これは、食品企業に限ったことではなく、
    どの企業も、この視点で、マーケティング活動を行っています。

    人の生理機能ではなく、認知機能にまで、
    影響を及ぼす情報が、日夜メディアから流され続けられています。

    いったい自分達は、こういった社会構造の中で、
    どうやって健康を実現していったいいのか?
    非常に考えさせられる内容です。

    特に、コカ・コーラの記述には、なるほどなと、させられました。
    なぜ、コカ・コーラがロングセラーなのか、その一つの重大な秘密がわかります。

  • それでも、おいしいモノを求めるか?

    世界に展開する食品系企業は、食べものを扱う企業ではない。
    彼らの主たる商品は、欲望。

    食品業界は、人々の心地よさ、購買意欲を徹底的に研究した工業製品のエサを作る。
    我々の健康ではなく、彼らの利益を最大限にするよう、厳密に調整された精密産業である。

    糖分、脂肪分、塩分は、人間の本能、ソウルに働きかける麻薬だ。常習性はあるが、その危険性は摂取する我々自身に向けられるため、危険ドラッグのように規制されることはない。だが、明らかに、世界的に展開する食品企業の商品は、静かに、そして慢性的に、われわれ人間の身体、生活を破壊する。

    それでもあなたは、まだ、あのピーナッツバターを食べ続けるのか?
    あの、砂糖にまみれたシリアルを食べ続けるのか?
    舌触りの良い脂肪の豊富な合成食品、本能に働きかける当分、そして過度の塩分を摂り続けるのか?

  • 「何が欲しいかという人々の言葉に基づいて製品や広告を企画する物は、まったくの馬鹿者だ。」クラフト、ネスレ、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ナビスコという食品大手企業や穀物メジャーのカーギル、ADM、コカコーラ対ペプシ、マクドナルドを始めとするファーストフードにコンビニのジャンクフード。彼らによって安くて高カロリーで手軽な食品は消費者に届けられる。健康的な食事が讃えられ、肥満や高血圧といった生活習慣病が問題になるというのにどうやって食品会社は売り上げを伸ばしていっているのか。

    この本の原題はそのものずばりSALT,SUGAR,FAT。やめられない、止まらないこの魔力的な力に花を添えるのが色々な規制をかいくぐった広告や包装や商品イメージだ。合成着色料、保存料、異性化糖、精白糖に精白小麦、トランス脂肪酸と言った名前は身体に悪い食べ物として人によっては異常に気をつける。さらには上海の食品会社であった様な消費期限の問題や中国だと成長ホルモンなどもよく話題に上る。それらと同等以上に健康に対して被害があるのに思ったほどには敵視されていないのが「塩、糖分、脂肪」なのだ。

    糖分を摂ると脳の報酬系、いわゆる快感回路を直撃する。最初は糖分により多幸感が得られるのだが依存症化すると糖分を摂取しないことに我慢ができなくなる。ニコチン中毒や薬物依存も同じ報酬系に働きかけているのだ。人間は糖分が多い味を好きだと感じるようにできているが、あるレベルを超えると魅力が減退する=飽きるようになる。この最適な「至福ポイント」を研究し尽くした食品業界の伝説的なコンサルタント、ハワード・モスコウィッツは炭酸飲料は飲まないし、健康に気をつけパンを食べる量も控えめにしている。

    1800年代から1940年までの間朝食用シリアルにほとんど糖分は入っていなかった。コーンフレークを発明したケロッグ博士は砂糖に禁欲的だったのが1949年にポスト社(ゼネラルフーヅ)が砂糖でコーティングしたシリアルを発売すると瞬く間に他者にも拡がり、仕事を持つ母親にとってはシリアルは手間がかからない便利な朝食だった。1975年にアイラ・シャノンという消費者が立ち上がり78種のシリアルの成分を調べたところ1/3は糖分量が10〜25%で1/3は50%近く、最高で71%が糖分だった。このキャンペーンに打撃を受けた食品会社は品名からシュガーを外し、ある程度糖分を抑えはしたが「集中力が増す」「フルーツの香り」と言ったイメージ戦略に切り替え、ヘビーユーザーに狙いを定めて商品を届けている。有名なコカ対ペプシ戦争で一敗地にまみれたコカコーラはダメージを負ったのか?実は両者とも売り上げを伸ばしている。

    脂肪も糖分同様に報酬系に働きかける。しかも糖分と違って脂肪にはこれ以上必要ないというポイントが存在しない。酪農業界が低脂肪乳のキャンペーンに使った手も見事で、元々3%程度の脂肪分を2%や低脂肪と表示していかにも身体にいいイメージを植え付けた。米国人は現在チーズの類いを1人あたり年間15KG食べているがこれは1970年代の3倍にあたり、炭酸飲料でさえこの間の増加は2倍どまりだ。

    15KGのチーズのカロリーは成人一人の1ヶ月分の必要カロリーをまかない、飽和脂肪酸は推奨される年間上限の50%、3.1KGにもなる。チーズは単独の食品としてだけでなく、ピザ、サンドイッチやありとあらゆる加工食品に使われている。クラフトが開発した冷蔵せず何ヶ月も日持ちする工業的に処理(といっても暖めてかき混ぜることなのだが)したチーズは模造チーズやら何やらの食欲を失う名前を退け、「プロセスチーズ」としての地位を確立した。

    脂肪分を減らそうとした消費者が牛乳の消費量を減らしたのに対し、連邦政府は買い取りによる価格維持政策を続け脂肪分を取り除いた牛乳を販売し続けるとともに、大量に余る脂肪分をチーズとして供給した。レーガン政権が牛乳への補助を打ち切ろうとした85年農務省はマーケティングが不得手な牛肉産業と酪農業者に変わり、牛乳100ポンドにつき15セント牛が売買されるたびに1ドルを天引きで徴収しマーケティング費用に充てるプログラムを用意した。牛肉のマーケティング費用は年間8千万ドルを超え、一方で農務省が健康的な食生活をプロモーションするための費用は年間650万ドルだった。しかもこの費用は脂肪だけでなく、塩分や糖分のカットも訴える勝ち目のない戦いだ。

    牛肉の消費を推進するもう一つの武器が悪名高い「ピンクスライム」。元々ペットフードなどの製造に回されていた最大70%と脂肪分の多い肉を遠心分離機にかけ脂肪分を分離させる。そして食肉工場で他のクズ肉と混ぜ合わされ、殺菌のためアンモニア処理をすると出来上がるのがピンクスライムだ。脱脂牛肉の原料として使われるのは解体中に糞便が付着しやすく大腸菌汚染の怖れが他の部位よりも高い。ピンクスライムはさじ加減を間違えると強烈なアンモニア臭か大腸菌のいずれかが残るが1ポンドあたり3セント節約できるのだ。

    塩分はドレッシング、ソース、スープといったありとあらゆる商品に大量に投入されており、低脂肪・低糖食品さえ例外でない。2012年の研究によると赤ちゃんは生まれた時から喜ぶが塩分はそうではなく、塩分を与え続けた子供は大きくなるとより塩分を好むようになる。塩味の好みは後天的に獲得する物なのだ。ハーブやスパイスを使えば塩分を控えめにしてもおいしい商品はできるが一番の違いはコストだ。

    糖分や脂肪にも言えることだが低コストで高カロリーで消費者に好まれる味でしかも原料として安い。これを拒否するのは食品メーカーにとっては売り上げ減と利益減を意味するためそう言う決定はなかなかできない。だからこれまで何かが悪者になるとその成分を減らし、こっそり別の成分を増やしてきたのだ。スナック菓子に含まれる塩分量は増え続けここでもヘビーユーザーに狙いを付けている。不規則な食事習慣をスナックで補う人が増え手軽で高カロリーで塩分たっぷりのスナックやファーストフードが食事の代わりになって行く。

    中国が安いエネルギーを必要としとうとう我慢できなりつつある大気汚染にも関わらず石炭を燃やし続けるようにアメリカの貧しい家庭では食事の手間を省くため安いカロリー源としてファストフードやスナックが食べられ続ける。ネスレのように同じだけの至福感を糖や脂肪や塩分を減らして得られる様な製品の開発を続ける企業もあるが、これまでのところはそう言う取り組みはあまり成功してこなかった。どうやらちゃんとした食事を食べられるということが贅沢なことになってしまっているらしい。

  • 糖分・脂肪分・塩分に関する内容。
    訳本なので、当然海外の事例が多く
    直接的に理解できる内容ではないけど面白く
    読みました。糖分・脂肪分・塩分の麻薬にも似た
    常習性があることがよくわかる内容です。
    私も倒れてから食生活を見直さなければなった際に
    コンビニやスーパで食料品を買う際にパッケージの
    成分を見るようになって、習慣として癖
    になっています。そこで救われている部分はあると
    思いますが。まだまだ適正体重ではないので
    節制が必要なのですが。
    塩分は特に気をつけるようになりました。。
    後、ダイエット法というか糖質制限ってどうなったの
    でしょう。。それって脂肪はいいんじゃなかったっけかなあ?
    でも、一応日本での一般的な生活をしていれば
    (まあ無茶しなければ)そんなに心配ではないと思うのですが。。。(さらに)でも、体重は減らないなあ・・・

  • コカコーラ、ネスレ、クラフト、ゼネラルフーズ等の巨大食品会社が、清涼飲料水、冷凍食品他の販売競争を繰り広げる中で、糖分、脂肪分、塩分の内容量がいかに増していき、米国人の健康を害しているかを明示的に示した本。

    過去何度も加工食品に含まれる糖分、脂肪分、塩分の健康への悪影響が指摘される中で、食生活の健康への影響は総合的なものだ、との主張で切り抜けて来たが、その都度これらの成分比率や健康障害は増してきている。

    当の巨大企業で働くエグゼクティブたちは、自分たちが販売する食品の危険性を良く知っており、(昔ながらの)手料理中心の健康的な食事と適度な運動により健康を維持している、というエピソードが象徴的。

    日本ではここまで清涼飲料水を始めとする加工食品への依存や肥満が国家的問題にはなっていないように思うが、検証するジャーナリストは誰か出て来るのだろうか。

  • ジャンクフードでトップセールになった

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著者プロフィール

ニューヨーク・タイムズの敏腕記者。2010年に食肉汚染の調査報道でピューリッツァー賞を受賞。2006年にもイラク戦争の報道で、ピューリッツァー賞の最終候補になった。ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ニュースデイ、アトランタ・ジャーナルコンスティチューションなどを経て2000年より現職。

「2014年 『フードトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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