トマ・ピケティの新・資本論

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822250720

作品紹介・あらすじ

本書は、数年にわたってリベラシオン紙に連載していた時評をまとめたものである。この小さな本が日本語に翻訳され、日本の読者がいささかなりとも興味と関心を持っていただけるなら、たいへんうれしい。

ここに収めたテクストは、グローバル金融危機直後からその余波が尾を引く状況の中、またユーロ圏が深刻な信頼の危機に襲われ、デフレと景気後退に直面する中で、社会科学の一研究者が公の議論に参画し、政治や経済にまつわる時事問題を読み解こうとする試みを形にしたものである。

おそらく賢明なる読者は、自国の置かれた状況がヨーロッパといくらか似ていると気づかれることだろう。日本もまた巨額の公的債務を抱えているし、個人資産が急激に増えている点でもヨーロッパと共通する。だから本書は、日本の読者にもなにがしか役に立つと信じる。
本書が日本において有意義な議論を喚起するきっかけになれば、著者としてこれにまさる喜びはない。
(トマ・ピケティの日本語版への序文)

サルトルが創刊した左翼系日刊紙リベラシオンにピケティが2004年から2011年まで毎月連載して出版した「ヨーロッパは救えるか?」をベースに、2012年以降、今年6月までの最新コラムを加えて再編集した時論集。先行販売される『21世紀の資本』が700ページの専門書であるのに対し、本書は「子どもの値段」「相続税の余地」「経済における男性優位」「付加価値税を社会保障に充てるのは誤り」「オバマとルーズベルトの比較」など幅広い問題を取り上げており、ピケティ入門書として格好の内容となっている。フランス大統領オランドや経済危機にもまとまらないEU首脳などへの舌鋒鋭い批判が見どころ。その一部を紹介するとーー

●「資本主義は所詮、世襲財産で成り立っている」
●「金融規制緩和の結果、差引金融収支の世界合計はマイナス。これはあり得ない。タックスヘイブンのせいだ」
●「ゲイツと比較すると、ジョブズの財産は6分の1。ゲイツはウィンドウズの上がりで食べている不労所得者」
●「ある水準以上になると、投資リターンにより資産は加速的に増大する。この不平等を食い止めるには、国際的な累進資産税を設けるべきだ」

2013年9月24日のコラム「経済成長はヨーロッパを救えるか?」では、『21世紀の資本』の主要テーマである、資本収益率(r)>経済成長率(g)を取り上げ。「この不等式から、過去に蓄積された桁外れの規模の資産が自動的に富裕層に集中していくことが読み取れる。(中略)アメリカはもちろん、ヨーロッパでも、さらには日本でも。主に人口要因に起因する成長率の低下により、所得に比して資産の重みがかつてなく高まっている」と分析している。

感想・レビュー・書評

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  • 著者がフランスの日刊紙に月1回の頻度で掲載するコラムをまとめたもの。最新の記事が2011年であり、おおよそ10年前のフランスに関する話題。
    21世紀の資本に書かれているエッセンスがすでにあり、資本による収益率は経済の成長率を超えているため、資本を持つものはさらに富み、そうで無いものとの格差が広がる、という考えのもと、度々、資本に累進性の課税を行うべきとの主張が展開される。
    遺産を受け継いだだけの経営者の子が、スティーブ・ジョブズよりも資産を持っている、という例が引かれており、それを読むとこの主張も説得力を感じざるを得ない。
    日本においてはどうなんだろうか?

  • 議論のネタに尽きない本です。

    1.この本を一言で表すと?
    ・ヨーロッパの時事ネタ集

    2.よかった点を3〜5つ
    ・「46 FRBを非難すべきか」
     →FRBの2010年の金融緩和について、ハイパーインフレなんか起きない、数パーセントのインフレになるのはむしろ歓迎、デフレの下で景気低迷を長引かせてはいけない、という主張は、アベノミクスに通じる所があり、面白い。

    ・「65 優柔不断なオランド」
     →右派のサルコジを批判するが、左派のオランドも批判するの、客観的でよい。

    ・「68 水曜日も学校を」
     →フランスは水曜日が学校休みというのを初めて知った。

    ・フランスの教育全般について、憂慮している
    →大学教授らしく、かなり心配しているのが分かる。

    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・ヨーロッパの時事ネタは、知らない内容であったり、興味の持てない所もあった。
    ・金持ちに対して資産課税をすべきと主張しているが、それを実施した後、どのような社会になるか見えない。
    ・欧州連邦の実現を主張しているが、非現実的。ギリシャ問題で、ユーロの問題が見えてきているのに、欧州連邦にして上手く行くとは思えない。
    ・r>gについて、歴史的事実なのは分かるが、因果関係はよくわからない。
    ・不平等拡大の対策として、国境を越えた資本移動の全面禁止(364ページ)とあるが、時代錯誤ではないか?非現実的。

    3.実践してみようとおもうこと
    ・とくになし

    4.みんなで議論したいこと
    ・なぜピケティの本は売れているのか?

    5.全体の感想・その他
    ・21世紀の資本論の入門書と思っていたが、予想していた内容とは異なる。
    ・全般的に、資産家から、金を奪うのが、政府である、と主張しているように感じたのは、自分の理解力が足りないだろうか。

  • ●『21世紀の資本』で一躍有名になったピケティのコラムをまとめた著書。随所でサルコジ大統領をこき下ろしているのが印象的。

  • フランス中心に、ヨーロッパ、世界の政経状況を批判的に捉えた新聞コラムの寄せ集め。
    EUの今の難局も、ある意味必然かもしれない、これから良くなる要素はあるのか、と思わされた。
    富の不均衡は如何ともし難く、個々人はなんとか自分の資産を守り増やすことに集中するしかない。金持ちを非難したところで仕方がない。

  • これだけフランスの経済政策にあれこれ言う人がいるのに、日本はなぜこんな人が出てこないんだろう?

  • 難しい。

  • ヨーロッパは、政治的にばらばらで団結できずにいるせいで、金融システムの不安定性と不透明性に対して脆弱になっている イギリスの労働人口の生産性の低いのは、教育制度に投じる予算が少ないことと、貴族政治時代をひきずる顕著な階層化に大きな原因がある よい税金とは、政府支出の財源を提供し、公平かつ累進課税であって、個人と企業にできるだけ干渉しない税である ドイツ人の遺伝子にナチズムがないように、ギリシャ人の遺伝子も怠け癖はない フランスは、自国の税制・社会保障制度の改革や近代化ができないうえに、公的債務の共同管理に関して具体的な提案すらできないという無能ぶりをさらけ出している どんな国も年1~1.5%以上の成長を維持することはできなくなっている 産油国では、一握りのこの天から授かった資源の不当に大きな分け前を独占し、大多数の国民、とりわけ女性や移民などは、半ば隷従状態にある 

  • あっと言う間にブームが去ってしまった様だが。
    (まさに単なるブームとしか言いようがないかも)
    新聞のコラムということもあって、21世紀の資本よりはかなり楽に読めた。
    でも、やはりEUをイギリスではなくフランスの視点で捉えている(当たり前と言えば当たり前)ことは強く感じられる。
    だからどうだとも言えないが。
    日本経済にとっての処方箋になるのかどうかは分からないが、やはりこの数年の間に日本は「本筋」からずれていってるのではないかという気はする。

  • 「トマ・ピケティの新・資本論」
    ピケティが日刊全国紙リベラシオンに2005年から2012年まで毎月連載していた時評をまとめたもの。「21世紀の資本」とは違い時事の評論なので短く読みやすく、ピケティの考え方がよくわかる。
    日刊紙に連載されていただけあり、その時々のフランスの問題点がよくわかる。問題点は違うものの政治的に日本とあまり変わらないような気がする。
    問題点の指摘はいろいろあるが、税制の問題、所得格差、社会保障、大学の問題が多い。
    特にフランスでの税制の複雑さと金持ち優遇の税制を指摘し、資産への累進課税を主張している。特に不労所得者に関しては容赦がない。
    確かに、民主主義を主張するのであれば、その個人の努力と能力によって労働の価値を認めるべきであって、世襲で財産を引き継ぐことによって莫大な利益を享受することはかなり問題があると言える。
    また、個人の努力と能力と言ってもどこまでが本当に評価するべき点であるのかは難しい。経営者が会社の増益を自分の能力によるものだと言って莫大な報酬を受けるようにすることに対して有効な歯止めがないように思える。あの、カルロス・ゴーンの莫大な報酬に引きずられるように、日本の経営者の報酬が上がっていることに関してあまり批判的な評論は聞かない。
    その意味では、さすがフランス革命の国の評論だと思う。その一方で、その思想を体現する平等の国アメリカでは格差が大きく、ヨーロッパのようになるまいとして累進課税が課されていたものがどんどん廃止されていくのが矛盾しているように思える。
    民主主義による自由はダメで、やはり、共産主義による恐怖が必要なのだろうか。

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著者プロフィール

1971年、フランス(クリシー)生まれ。フランス国立社会科学高等研究院(EHESS)で博士号を取得後、米国MITでの教鞭を経て、現在EHESSの研究所長を務める。また、パリ経済学校の創設に貢献し、2014年より同校教授を兼任する。専門分野は公共政策と経済史。不平等の経済に関し、とくに歴史的かつ国際的なパースペクティブの下に研究を行うスペシャリストとして世界的に有名である。主要著書として、Les hauts revenus en France au XXe siècle, Drasset, 2001(山本和子・山田美明・岩澤雅利・相川千尋訳『格差と再分配――20世紀フランスの資本』早川書房、2016年)、Le capital au XXIe siècle, Seuil, 2013(山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』みすず書房、2014年)、Capital et Idéologie, Seuil, 2019などがある。

「2020年 『不平等と再分配の経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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