3億人の中国農民工 食いつめものブルース

著者 :
  • 日経BP
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822258559

作品紹介・あらすじ

貧しくても、学歴がなくても、田舎者でも、希望を胸に生きてきた。
けれど、繁栄から取り残された――。
磐石の習近平政権を、絶望した3億人の農民工たちが揺さぶろうとしている。
これは、今まで誰も描くことのなかった、『中国版ヒルビリー・エレジー』だ

感想・レビュー・書評

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  • 2019年8月4日読了

  • 新聞等で目にはするが、実態のよく分からない中国の農民工の生活や考えについて、農民工の友人を多数もつ著者が具体的に描いた貴重な本。著者は上海で出稼ぎの農民工の家を訪問したり、農民工の故郷の安徽省を訪ねる等、かなり深くまで農民工の生活に潜入。雀の涙程の狭い家に家族三人で住んだり、便器がむき出しで部屋の中にあったり、私の生活レベルからは想像もできない状況に衝撃を覚えた。それが個人の努力の欠如によるものではなく、都市に産まれたか農村に産まれたかの違いによるというのはあまりに不公平。そんな中これまでは働けば生活が良くなると信じて寛容だった農民工が、夢が持てない状況になってきているようだ。

    以下メモ。
    ・苦しい生活をしてでも息子・娘は大学にいかせる。
    ・シングルマザーの苦悩:結婚しておらず子供がいると戸籍を入手するのに罰金を払わなければいけない。
    ・便器むき出しの家に住んででもマイカーを購入したい。
    ・実際にとる行動は、国よりも、格差の是正よりも、個人の権利や利益をいかに最大化するかに基準を置いて判断する。
    ・都市に産まれたか農村に産まれたかで圧倒的な格差が存在。
    ・農民工も、昔は働けば生活が良くなること、子供の世代はもっと良い生活ができることを夢見ることができたが、いまでは難しくなってきている。

  • かなり前になるけど大連に行った時に
    近代的なビルのすぐ横がスラムみたいになってて
    かなり驚いた。

    上海に行っていた友人の写真は未来都市のようなギラギラした都会だった。

    日本に来る中国の人は大声で爆買いをして
    ドン・キホーテやドラッグストアで5~60万円も使う。

    中国の発展は急速だ
    古い町並みは一気に取り壊して
    新しい建物を建てる

    ヘンテコリンなものや
    アートのようなもの
    オリンピックの鳥の巣
    なんでもござれ

    その中国の発展を支えているのは
    農民工と呼ばれる人々

    多くの人はそんな人々の存在を知らない
    でも彼らの労働力で成り立っていることは多い

    そんな日の当たらない存在である彼らにスポットを当てたルポ。

    友人として彼らとつきあってきた著者だけに
    リアルすぎるほどリアル
    彼らのおかれた境遇や環境、生き方、
    現実の厳しさや考え方などが本当によくわかる

    人は生き方や環境でその後の人生が変わっていく
    厳しい今を生き抜いていく人々の考え方は
    日本人には理解できないかもしれない
    というのがよくわかる。

    これから中国はどうなるのだろう?
    成長はいつまでも続くものではない
    くいつめものたちはどこへ行くのだろうか?

  • 中国の発展の裏側。こないだ読んだ、テレビに映らない北朝鮮より全然生々しい。
    中国はこれを隠す気もないんだろうね。国民を幸せにしようとは思ってないから。
    搾取の構造。

  • 長期間に渡って住んでみないと書けない現代中国の現実を、誇張なく淡々と描いている。ノンフィクションの作品としては普通レベルだが、内容は衝撃的で勉強になった。

  • 中国の発展を支えてきた中国農民工の希望と絶望。産まれた場所だけで人生の選択肢が決まる中で、誰でも豊かになれるという幻想を中国が維持できるか。
    生まれた国が違うだけのこちらがとやかく言えることでは無いが、数多の農民工が制度の歪みの中に歪んだまま置き去りにされつつも生き続ける姿が印象的な一作。

  • 気づけば、上海を訪れたのが今から約25年前。
    にょきっとしたタワーや、やけにスリムな橋がちょうど建設中。
    宿泊したホテルの周辺や、川沿いの公園、いい雰囲気だったなあ。
    雨の降る朝、赤・黄・紫のカッパを着た自転車集団が川のように流れ、
    舗装もされてない路地角には湯気の立つ屋台がお粥を売ってて。
    若い自分は相当にそのパワーに圧されたものでした。
    よそ者ながら、その当時が一番、いい国だったのではと思っております。
    どこかで、誰かが、何かを間違えた?
    いや、何なのだろう。

  • 上海はかつて、魔都と呼ばれた。19世紀半ばから100年の間、租界で栄えたこの街は、多くのはみ出し者を受け入れてきた。大都会ではあるが、政治の中心ではなく、素性の知れないものを受け入れる度量の大きさは、一種独特の混沌とした魅力を形作ってきた。1920年代に上海で1年ほど暮らした経験を持つ詩人の金子光晴は、上海を「食いつめものの行く先」(「どくろ杯」)と呼んだという。きれいごとばかりでない、いささか荒っぽい「容認」だったとしても、とにもかくにも路頭に迷ったものたちを包む懐の深さを持つ街、それが上海であった。

    フリーランスライターの著者も、上海で長年暮らす「食いつめもの」の1人である。
    彼はそこで、中国の農村から出てきた出稼ぎ労働者と出会う。「農民工」と呼ばれる彼らは、大都会の片隅で、ささやかな夢を持って淡々と働き、生き抜いてきた。
    本書はそんな彼らの日常を綴るルポである。

    2008年の北京五輪や2010年の上海万博で、中国は華やかな祭典を繰り広げた。その陰で、実際にスタジアムや摩天楼の建築に汗を流してきたのは貧しい農村から出てきた「農民工」たちである。
    上海に出てくる農家出身者は安徽省や河南省の人が多い。上海人は彼らを一段低いものとして見なし、安徽人や河南人は上海人は冷たい守銭奴だという。そこには深い溝がある。
    農村に生まれたものはそれだけで大きなハンデを背負う。中学を中退してしまうものすらそう珍しくない。生まれた場所だけで格差が生じるのだ。
    農村では一応食べるだけなら何とかなるが、現金収入を得ることは非常に困難だ。自然、都会への出稼ぎが増える。子供を祖父母などに預けて村に残したまま、親が都会に働きに出る例も多い。残された子供は「留守児童」と呼ばれる。親は子供をよい学校に行かせるため、自身は極めて劣悪な住居に住み、切り詰めて暮らす。

    著者は自身も不安定な身の上であることもあり、農村から出てきて社会の下層で働く彼らと知り合い、友達となる。
    廃品回収業者のゼンカイさん、料理上手な家政婦のパンさん、シングルマザーとして働くチャオさん。花嫁衣装として妻にユニクロのダウンジャケットを買ったチョウシュン。
    本作の美点は、「虫の目」的に農民工の暮らしを生き生きと描いているところだろう。「友人」としての視点は、若干主観には偏るが、肌感覚で彼ら・彼女らの日常に迫っている。
    多くは貧しいながらも生きる術を模索し、他者への思いやりを持ち、明日へのささやかな希望を胸に、上海で懸命に働いてきた人々である。
    だが、その彼らを、近年、異変が襲う。
    高騰する家賃、下がる賃金、減る職。上海での暮らしがどんどん「割に合わなく」なっているのだ。加えて、貧しい人々の胃袋を支えてきたB級レストラン街が不法建築を口実につぶされる等、当局による締め付けも陰に陽に進んでいく。
    それは中国の食の安全に関する問題が噴出したのと時を同じくする。要は世の中が世知辛くなっていった結果ということかもしれない。
    経済が躍進を続けているように見える一方で、下層を支えてきた農民工の暮らしはどんどん逼迫している。一度は上海を離れたものが行った先でも暮らしが立ち行かず、また舞い戻るケースも多いという。生きていける場所を求めて、彼らは右往左往しているのだ。

    清濁併せ呑んできた、妖しくも魅力的な魔都・上海は、貧しい人々を追い出すことで、味気ない街へと変貌してしまうのか?
    漂流し始めた彼ら・彼女らの行く先はどこなのか? これまでは「不当」ともいえる境遇でも愚痴をこぼさずやってきた彼らの怒りがもしも爆発してしまったなら、何が起こるのか?
    その行く末は、中国という大きな船の舵取りそのものにも関わることなのかもしれない。

  •  中国の民工の存在はもちろん知っているが、目立つ中国関連ニュースの中ではつい忘れがちになる。本書の冒頭で「爆買いとも反日とも無縁な中国人たちの物語」とあるのを見て改めて気づかされた。
     大手メディアが民工や留守児童を取り上げるのは、往々にして大きな事件が起きた時のみ。研究者の本や論文では大量のデータを集めるためか、各個人の生活は見えにくい。でも本書では、筆者が友人と呼び、上海で数年~10年以上付き合う又は子供が青年になって再会する10人程度に対象を絞っている。そのため、極めてミクロな視点ではあるが、彼らが故郷と上海を行ったり来たりしたり、中心部から郊外に引っ越したりしながらどう生きているかがよく分かる。共稼ぎで民工をしながら息子二人をエリート研究者又は稼げるように育てたパン夫妻のような存在には救いを感じられるが、それとて民工の中ではごく一部ではないか。
     筆者の観測範囲では、2015年秋頃から彼らの仕事が減り、給料が頭打ちとなり、一方で家賃が急騰する傾向が出ているようだ。将来は今より豊かになるという希望が持てれば現状の辛さもまだ耐えられるのだろうが、今後はどうなるのだろうか。
     少し読みにくさを感じたのは本書の構成。冒頭の留守児童たちの物語を除けば概ね時系列なのだろうが、各人の物語を追っていくには、各人が飛び飛びに登場するので分かりにくい。数年にわたる民工の暮らしの傾向変化を追うには、そういう整理の仕方にはなっていない。

  • 日経ビジネスに掲載された記事の頃から読んでいるので、書かれた内容に驚きはないが、現在の中国の反映が農民工の犠牲の元に成り立っている状況がよく分かる。

    国民の多数を占める農民工もしくは農民が「中国の夢」を共有できなくなった時に、かの国はどうなっていくのだろう。

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著者プロフィール

中国山西大学・北京大学留学。1992年~2000年香港で邦字紙記者。2001年に上海に拠点を移し、中国国営雑誌「美化生活」編集、月刊誌「CHAI」編集長を経て、フリーに。日経ビジネスオンラインに「中国生活『モノ』がたり」を連載中。

「2017年 『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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