一万年の進化爆発

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822283995

作品紹介・あらすじ

現生人類が突然創造的な活動をはじめたのはなぜか?農耕はヒトの心と体をどのように変えたか?インド=ヨーロッパ語族が世界に広まったのはなぜか?ノーベル賞受賞者にユダヤ人が多いのはなぜか?人類史の謎を解く。

感想・レビュー・書評

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  • 生物学は、人種の間に差はない、現生人類は進化が止まっているという学説を主流においた。著者は主流学説に反して、現在も人類は進化し続けているとする。以下印象的な箇所のレジュメ。

    ・植物や動物は、残したい形質を選択的に遺伝させることで、品種改良できる。品種改良は数世代で簡単に行える。品種改良は進化の一種である。つまり、進化は短期間でも起きる。

    ・現生人類とネアンデルタール人は、種として異なるという説が主流だが、現生人類は、絶滅前のネアンデルタール人と混血して、彼らの遺伝子を取り入れた。ネアンデルタール人の特徴を受け継いだからこそ、現生人類は繁栄することができた。

    ・牛乳を飲んで、栄養を摂取することを可能にする遺伝子をヨーロッパ系の人は持っている。牛の牧畜を長年してきたためである。牛乳を飲む習慣のなかったアジア系の人には、この遺伝子が少ない。

    ・ヨーロッパ系の人が、アフリカ、アメリカ大陸に侵略した時、彼らの持ち込んだウィルスが現地の人に感染して、大量の死者が出た。ヨーロッパ系の人は農耕牧畜生活、都市生活の歴史が長く、家畜から人へのウィルス感染、人口密集地でのウィルス感染の経験が多く、ウィルス耐性ができていた。アフリカ、アメリカ大陸の人には、ヨーロッパ系の人が持ち込んだウィルスの耐性遺伝子がなかったので、大量の死者が出た。

    ・文化はすぐに伝播するというが、関連する遺伝子を受け継いでいないと、すぐに馴染めない場合がある。ネイティブアメリカンの人が、欧米型の食生活になると、成人病になりやすい。

    ・ユダヤ人は、ヨーロッパの知識学術分野で存在感がある。ユダヤ人でノーベル賞など学術系の賞を受賞している人の比率は、ユダヤ人の人口比率に比べて高い。何故か。ヨーロッパのユダヤ人は、中世の頃から(キリスト教徒が忌み嫌っていた)金融や貿易商の仕事をしていた。金融の仕事を行うには、論理的思考能力が必要だったし、ユダヤ人は他の民族と交わらず自分たちだけで子孫を形成したので、論理的思考能力に富んだ形質が代々受け継がれた。かつ裕福で教育に取り組む余裕もあった。これが、ユダヤ人が数学、文学、音楽、芸術分野で活躍している要因である(ユダヤ人の能力平均を見ると、空間の認知構成力が弱い。それ故にか建築家で活躍しているユダヤ人は少ない)。イスラム圏で生活したユダヤ人は、人口が多かったし、金融など特定の仕事を代々行うこともなく社会に分散していたので、ヨーロッパ系ユダヤ人のような特質を発揮していない。

    以上、現在主流の学説に反駁して人種差別を助長しかねない仮説が展開される。著者は、人類が今でも遺伝によって進化しているという説を受け入れないと、歴史研究に進展はないという。

    著者の仮説そのものよりも、当書に描かれた人類の過去の歴史を読むことの方が面白かった。近代以前、戦争に負ければ、男は奴隷として死ぬまで過酷な肉体労働に従事させられるし、女は戦勝国の皇帝のハーレムに入れられる。今そんなことが起きれば、報道とネットで酷評されるだろうし、被害にあった個人が、告発の文章を発表するだろう。現代も随分と息苦しい時代だが、人権概念のなかった過去は悲惨だ。奴隷やハーレムの女性が毎日何を考え、経験していたのか、小説として読みたいと思った。

  • 我々人類の進化は現在も続いている、という話。

  • ふむ

  • 「人間は何万年も狩猟採集民族だったのだから~という習性には逆らえない』のような言説を目にすることがある。
    中には思わず頷いてしまうような論もあるのだが、どこまでが信じられるものなのだろうか。
    人間は、狩猟採取民族であった以前に、何百万年と猿人であり、何千万年と四足動物であり、何億年と魚類だった。
    現在に残る習性の、どこからどこまでが遺伝で、どこからどこまでが環境要因なのだろう?
    農業開始以来のこの一万年間で、人類は何が変化したのだろう?

    一般的に進化とは何千年、何万年もかかるものだと思われている。
    人間の皮膚色、体の大きさ、形態、代謝などの身体的特徴と民族の傾向は密接であり、
    遺伝が関与していることは疑いようもないが、それが進化の結果であるとはあまり言われない。
    それは犬猫家畜の品種改良であっても、稲や麦が原種と交雑不可能な別種となっても同様だ。

    本書における進化の定義とは遺伝による生物学的変化であり、
    現代における民族間の差が明らかな乳糖消化酵素の所持、鎌状赤血球の変異、アルコール耐性から、
    歴史上のネアンデルタール人の消滅、ヨーロッパの遊牧民による征服、アメリカ大陸の征服とアフリカ統治の失敗、インド=ヨーロッパ語族の伝播、科学芸術分野でのアシュケナージ系ユダヤ人の活躍まで。
    自然選択、環境選択による選別は、遺伝子変異という結果のみならず、歴史にまで大きな影響を与えてきたとする。

    ただし、その全ての証拠が明白とは言い難い。
    『ヒトに犬のような垂れ耳が見られないのは、多分、会話が聞き取れないマイナスの効果によるものだろう』
    『禁欲を受け入れやすい人とそうでない人がいるに違いない』
    『会話が複雑になるにしたがって騙しの能力も磨かれていったに違いない』
    などなど、科学的知見からかけ離れた論述もしばしば見られるため、すべてを真実として受け入れるのは早計だろう。

    文明の発達により、自然選択・環境選択による大量死の影響は少なくなったかもしれないが、性選択による影響は現代においても変わらず大きい。
    この先の1万年、いや、千年でも人類の中身は大きく変わることだろう。
    その結果を見ることが叶わないとしても、それを考え、予測することは無駄ではないはずだ。

  • 全体として最終章(ここだけずいぶん科学的)紹介のための冗長な序文という印象。

  • 人間は今も進化している。しかも通常の100倍の速度で。
    ヨーロッパ人がアメリカやオーストラリアの先住民を簡単に支配できたのも、アフリカは簡単に支配できないのも、サハラ以南のアフリカ人がなかなか近代化できないのも遺伝子が影響していた。

  • 本書発刊の後ネアンデルタール人の骨から抽出したDNAの研究によって現生人類との交配(脱アフリカ後まもない中東において)を指摘する発表があったが、その結果何が起きたかについては不明である。
    個人的には、本書から新しい見解や知的好奇心を得るものはなかった。アシュケナージ系ユダヤ人に天才が多い理由を考察する第7章がメイン。スフィンゴ脂質の濃度がニューロン接続を活発化するという研究結果が最も重要で、特異な疾病リスクも高まるため、単純に濃度が高ければ良いわけではない点が世の中そんなに甘くないと感じさせる。
    ゲノム解析は始まったばかりで、今後も地道な作業で新たな因果関係の発見にいたる研究発表に期待したい。
    あと翻訳のミスや違和感を何とかしてほしい・・・ダイヤモンド⇄ダイアモンド博士がごっちゃになってたり、歴史人物の名前や地名が変だったり、infrastructureをわざわざインフラストラクチャーって表記したり・・インフラは日本語で十分浸透しているやろって思ってしまう

  • 8000年前頃、ヨーロッパ人の中で乳を分解するラクターゼの継続的な生産をもたらす変異が起きた。ウシの乳を飲むことによって、ウシの肉を食べるよりも5倍のカロリーが得られるため、人口が増加し、穀物農業がうまくいっていない北ヨーロッパのステップ地帯に広がっていった。インド=ヨーロッパ語族の拡散が始まったのは、BC3000年頃と考えられる。歩くことができるウシは盗みやすいため、互いに盗みあい、争うことで、戦闘的な社会になった。移動性が高く、数で勝り、栄養状態がよく、戦いに勝つことが多かったため、より好戦的になったのだろう。

    明るい色の皮膚をもたらす変異は、農業開始の後に起こったらしい。ヨーロッパ人とアジア人の皮膚の色を明るくする遺伝子の変化は、全く異なっている。ヨーロッパ人の肌の色が変化したのは、5800年前。血糖を調節するインスリン遺伝子の変異体は、各地域の農業の始まりとともに現れた。ヨーロッパ人の青い目をもたらすOCA2対立遺伝子の変異は、1万~6000年前に生じた。最も多く見られるバルト海を中心とする北ヨーロッパで生じたと考えられる。スウェーデン出身と考えられるバンダル族は、ローマ帝国の末期に侵入した後、スペインからアフリカに渡り、OCA2対立遺伝子をもたらした。1500~1800年には、イスラム私掠船が地中海沿岸のヨーロッパ人を奴隷として持ち去ったことも、OCA2対立遺伝子を広める結果となった。

    注意欠陥障害(ADHD)に関係しているドーパミン受容体D4(DRD4)遺伝子の7R対立遺伝子は、東アジアではほとんど存在していない。農民の支配階級は、攻撃的な人間を排除する傾向があったと考えられる。

    1200年前にライン川沿いの地域に住んでいたアシュケナージ系ユダヤ人の大部分は、1100年までにキリスト教では禁じられていた金貸し業で生計を立てるようになり、数世紀の間続いた。金融業などの職業では、知能が高い人が仕事で大きな見返りを受けていたと考えられ、成功した人はかなり多くの子供を持っていた。ユダヤ人集団は非常に長い期間、同族結婚を守っていた。知能は遺伝性が強い。アシュケナージ系ユダヤ人のIQは平均112~115で、ヨーロッパの平均よりかなり高い。彼らは世界人口の600分の1にも満たないが、ノーベル賞の4分の1以上を獲得している。

  • <a href=""http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20100823/215932/?top"" target=""_blank"">レビュー</a>書いた。""

  • 意欲作にして問題作。人類の進化は今まさに進んでいて、知能が自然選択で伸びたりしているという、ともするとポリティカリー・インコレクトな議論。

    たしかに、見た目の違い、オリンピックの100m走、乳糖耐性、鎌状赤血球などを見れば、民族間で遺伝子レベルに由来する表現型の差異があるのは明らかだ。あとは進化論の論争によくあることだが、物は言いようというか、どれほどの程度なのか評価の問題ではないかという気がする。著者らの論証は説得力のある部分もあるが、肝心な所で細かい説明を省いていたり(2Sやユダヤ人の遺伝的ユニークさ)、チェリーピッキングをしている雰囲気もあるので、その大胆な仮説にはにわかに首肯しがたい。しかし、そのデリケートさゆえに真正面から論じられにくい分野であるので、こういう議論自体は非常に興味深い。

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