暗闇のなかの希望: 非暴力からはじまる新しい時代

  • 七つ森書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822805968

感想・レビュー・書評

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  • フェミニズム的な立場で書かれた「説教したがる男たち」を読んで、その痛烈な男性社会批判にもかかわらず、ユーモア感覚、詩的な美しさ、多数性への開かれなどにすごく惹かれた。

    なかでも、「未来は暗い。思うにそれが、未来にとって最良の形なのだ」という引用をもって始まるヴァージニア・ウルフ論「ウルフの闇」に大きく共感した。

    とうわけで、同じ引用をもって、本全体が始まるこちらも読んでみたという次第。

    冒頭の日本版へのメッセージで、すでに感動した。

    「仏教は、世界を、白か黒かの二者択一ではなく、両者をともに包み込む、素晴らしくも多様なものとして見る観点を、わたしのような新参者に指し示しています。今日の世界に恐ろしい事態が進行していますが、それが唯一のありかたではありません。さらに、現在のありかたは、未来のありかたではありません。一寸先の未来に何が起こるか、わたしたちはまったく知らないという事実を抱きしめること ー これが、わたしに何よりも身に染みる仏教の教えなのです。未来の不確かさが、希望の基盤になります。何が未来に起こるかは、部分的にしろ、何をわたしたちがするのかによります」

    「わたしたちは語り部です。ところが、ともすれば既知の物語が、岩のように不動で、日の出のように必然であると信じてしまいます。どのようにして古い物語を解体するのか? 解体するだけで終わらず、どのような新しい物語を語れるのだろうか? ー このようにわたしは自問するようにしています。物語はわたしたちを陥れもするし、解き放ちもします。物語によって生かされもし、死にもするわたしたちですが、聞き手で終わる必要はなく、みずから話し手にもなれます。ここに記すわたしの物語の目的は、あなたがご自身の物語を語るように励ますことなのです」

    はい、まさにこのとおりの本です。そして、私も、このとおりだと思いました。

    絶望的とも思われる世界のなかで、暗闇とも思える未来について、その不確実である暗闇こそが希望である、という「逆説」を哲学レベルではなくて、多くの希望の事例をあげながらかたっていく。

    その事例は、89年のベルリンの壁の崩壊からスタートする。ベルリンの壁が築かれた年に生まれたという著者にとって象徴的なスタート。

    概ね、著者と同年代ということもあり、出てくる事例は同時代的に聞き知って、いろいろ感じたもので、なんとなく当時思っていたが、やっぱりそうだよね〜、と言語化されていくのがとてもよかった。

    まさに、オルタナティヴ・ストーリーとしての語り直しだな〜。

    現実のつまらなさのなかでなんだか消耗したり、疲れたりしていたな、ということに気づき、ちょっと元気になった。

  • ふむ

  •  わたしたちの住む世界は、地球温暖化とか世界資本といった悪夢のためにだけではなく、逆に自由と公正を求める夢によっても、あるいは夢にも思わなかった要因によっても激変したと実感している人はほとんどいない。どのくらい変化したかを調べなくても、わたしたちはその変化に順応してしまうし、どれほど文化が変化しても、見過ごしてしまう。(pp.12-13)

     歴史は急ぎ足で横這いするカニ、あるいは石を穿つ、やわらかな水の滴り、数世紀かけて蓄積した地殻の歪みを解き放つ地震なのだ。たったひとりの人がある運動に活気を与えることもあれば、ひとりの人の言葉が、数十年後になって実を結ぶこともある。(p.16)

     歴史は、共通の夢とうねり、転機と変わり目によって紡ぎだされる。歴史は、等価の原因と結果の連鎖よりも複雑な景観で、あの平和行動は、ブッシュによる治世の紀元をずっと超えて、はるか昔の時代に根を広げる原因から生まれたのだ。(p.95)

     500周年祭は、コロンブス到来の意味を、侵略、植民地主義、民族虐殺として捉えなおし、それらへの反応を「抵抗の500年」というスローガンに集約する機会になった。(p.196)

     希望とはただ待ち望むことではない。希望は、世界の本質的な不可知性、そして現在との決別を抱きしめることであり、驚きなのだ。あるいは、もっと注意深く記録を調べれば、たぶん奇蹟は期待できても、それはわたしたちの期待どおりの時と場所で起こるわけではない。(p.208)

  • 抗いがたい大きな力で暴力的に統合されていく世界の奔流に、非暴力直接行動でもうひとつの社会を示し続ける行動者達の姿を通して、希望はまだ捨てたものではないどころか、まさに行動の最中からボッティチェリの描くヴィーナスの如く立ち生まれている様を力強くしなやかに描出する。

  • 一見、暗い題名であるが、「暗闇」=未知であるところの未来、「希望」=現在との決別、「のなかの」=に向かっての、という意味であることを考えると、勇気づけられる小さな本と言える。

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著者プロフィール

レベッカ・ソルニット(Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。

「2023年 『暗闇のなかの希望 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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