群れはなぜ同じ方向を目指すのか?

  • 白揚社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826901659

作品紹介・あらすじ

リーダーのいない群集はどうやって進む方向を決めるのか?渋滞から逃れる最も効率的な手段は?損をしない買い物の方法とは?最高の結婚相手を見つけるには何人とお見合いをすればよいか?…アリの生存戦略から人間の集合知まで「群れ」と「集団」にまつわる科学を一挙解説。

感想・レビュー・書評

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  • たぶん、かなり面白い本だと思う。かなり急いで読んだので、ひとつひとつの検証が出来ていないが、鳥や魚の見事な群行動は本能や知識ではなくて、単なる幾つかの規則性の発現だということを示すことから、大災害でどれだけ安全に避難出来るか、民主主義の有効性まで、その行動を「科学的に」明らかにしようと努力していた。

    複雑なことを一生懸命わかりやすく書こうと努力している。各章の終わりに必ずまとめを置き、最終章では、本全体の主張を34のルールにまとめて見せている。
    これから活かしておきたいルールのみ、以下に列挙する。(数字は著者が置いた順番の数)
    (4)自分がいる群集が危険な状況にある時は、脱出のために混合戦略を用いること。60パーセントの時間は群集についていき、残りの40パーセントは自分で脱出経路を探すのに使うこと。
    (6)多人数からなる集団を納得させたい、さらには熱狂すらさせたければ、影響力のある人に働きかけてメッセージを伝えてもらう方法に頼らないこと。それよりも、一定数のアーリー・アダプター(アイデアや製品を一回見ただけで採用する人々)に訴えかけてみる方がずっとよい。
    (9)歩行者の集団は、自己組織化して、流れる川のようになる傾向がある。川に従うこと。川岸に引っかからないこと。
    (10)車を使って都市全体を複雑な順路で回ることを計画するときは、できるだけ右折を(左側通行の国なら左折を)多く入れること。
    以下、「複雑系」の判断基準に移る。
    (20)うまくいった人の例に倣うこと。ただし、自分の持っている資質がその人と同じであることを確かめること。
    (30)はっきりとした正解が一つだけある問題の場合、集団内で多数決を行うことによって、正解にたどり着く可能性が最大になる。集団の規模が大きくなるほど、多数派が正しい可能性も高くなる。
    (31)投票で合意を形成するには、理想に近い投票方法より、実行しやすい方法を選ぶこと。理想の投票方法というものはないし、そもそもありえない。

    その他、各章で面白かった処をメモする。
    ・密集してる群の場合、回避(分離)、整列、引き寄せ(結合)という規則に従う。
    ・目標に行く個体が少しでもいれば、群れは規則性を持って動く
    ・見えないリーダーでいい。全体のわずか5%が事情を知っていれば、90%の確立で集団を目標に導くことができた。
    ・アリがいつも最短距離でエサから巣に戻れるのは、フェロモンのあとを辿る一点の規則性だけ。アリ一匹が偶然最短距離を選べば、そのアリが多数派になるからだ。我々の社会でも近道は、そのように発見される。
    ・パニックのとき、群集の密度が非常に高いときは、行き先を自分でコントロールすることはほとんどできなくなる。そのとき、できるのは群集に巻き込まれないようにすること。もし群集の外にいるのであれば、遠ざかって他の人にもそうするように言うこと。

    メモしているのは、ほとんど前半である。現実の社会は、複雑系であり、なかなか「群れ」を理想的な目標へと導けない。「理想的な投票方法はない」と著者も「科学的に」断言している。そういう意味では、「民主主義」の限界と可能性を見極めるためにも有効な本かもしれない。しかし、小さな事柄でより効率的な「方法」があることも言及している。幾つかを実践に移したあとにまた読み返したい本である。

    2018年6月読了

  • 原題は『The Perfect Swarm:The Science of Complexity in Everyday life』という。直訳で『完璧な群れ━━日常生活における複雑性の科学』だそうだ。

    無知な私は今回、「複雑性の科学」という分野が存在することを初めて知った。それまでの概念では十分に説明できない事柄を現代科学的手法で研究する分野だとかなんとか。ようわからんけれども。
    よって、関連する分野も多岐にわたる。社会学、行動学、心理学、統計学、生物学、気象学などなど。
    しかし本書は、原題にもあるように、また訳者が「『日常生活』に科学的な知見がどのように姿を見せるか、というのが著者の主題」と言っているように、私たちが普段の生活の中で遭遇する様々な場面を具体例に挙げて解説してくれているので、専門用語も頻出するものの、まるっきりの門外漢の私でも非常に興味深く読むことができた。

    たとえばアリの行列はなぜいつも最短距離で目的のエサにたどり着くかといった群れの原理(同じ原理を私たちも車の運転の近道探しでも使っている)に始まって、蟻コロニー最適化の理論、自己組織化する群集から考える渋滞の脱出の仕方、集団の知恵を使った問題の解決方法、ウェブに代表されるスウォーム・ビジネスなど、イメージしやすい日常的な事象が必ず同時に引かれている。

    また、各章の最後でポイントをまとめ、尚且つ最終章で「日常生活に役立つ34のルール」として、本書全体をコンパクトに総括しているのがとてもよい。なんとなくで読み進めてきた部分が一気に整理できた。

    そしてちょっと面白いのが、実は著者は、「ビスケットのお茶への最適な浸し方」という研究で、十数年前にイグノーベル物理学賞を受賞しているのだそうだ。訳者も「著者の研究者としての専門と、日常生活に現れる科学を見せるという社会的活動の意図が一体になった、著者らしい成果」と言っているように、著者の本書執筆にあたっての姿勢が推し量れるというものだ。

    専門的で難しいかなと警戒したが、思いのほかスラスラと読み進むことができた本書であった。

    訳者あとがきに、本書が非常に簡潔に紹介されているのでここに引用しておく。
    「本書は、とくに何かを計算して考えているようにも見えない生物の個体が無数に集まった群れ、人間の群衆、さらには膨大にあふれる情報をもとに何かを選択したり判断したりする人間や組織の意思決定といった、要素が複雑にからみあっているように見える系や行動に着目します。実はそうしたものがしばしば、そんなに複雑な法則や方法で動いているわけではありません。しかもそれでいて、意外なほど高い確度で、整然とした行動が生じたり、妥当な判断が行われたりします。複雑性の科学と呼ばれるこの何十年かで急成長した分野は、こうした現象を取り上げ、そういう現象がどのように生じるのかを、数学的なモデルを立てて再構成し、そうした現象を成り立たせている要素を取り出そうとしてきました。本書はその成果を踏まえ、自然界からそれこそ日常生活まで、おなじみの現象を具体例にして、複雑性の科学の成果を解説し、またその利用のしかたを提案しています。」

  • 途中から難し過ぎて何を書いてるのかサッパリだったけど、ひとつだけ役に立ちました。
    【同調圧力をかけてくる人の思考】をフワッとだけど分かったのです。
    .
    僕なりにまとめると、
    同調圧力をかけてくる人は『自分の意見』を持っていない。
    つまり、個人思考(自分の意思、意見)を確立せず、集団思考(集団の意思決定)を自分の意見としてしまう。
    その結果、
    「自分の意見は多数派と一致しているから正しい。」
    と思い込み同調圧力をかけることになる。
    .
    同調圧力をかけてくるから「なぜ?」と問うても、
    その人自身の意見を持っていない人がたくさんいて不思議だったのですが、
    この本のおかげで少し霧が晴れた感じがします。
    (´-`)

  • 最もおもしろかったのは、集団の認知的多様性を利用した「状態推定問題」。集団内の各個人が個別に判断を下すという条件付きながら、どうしてそのようなことが起こるのか、たいへん興味深かった。

  • 感想
    傾向とも言えない揺らぎ。それはやがて群れ全体に伝播しみんな同じ方向を目指す。一度確立してしまえば理由は考えられない。それが群衆。

  • 面白かったです!
    魚や動物の群れと人間は別物だと思っていましたが、ある一定の条件下では同じような行動・現象が起きていて、集団のしくみは面白いと改めて感じました。

  • 企画、編集、制作を担当。

  • FBでUPしている方がいらして図書館で予約。その時点では、COVID-19もここまでの状況ではなかったのだが、まさに時宜を得た1冊となってないる。

    「正のフィードバック」効果、「正」に正しいとか見習うべき等の意味はない。単に数学的な意味での「正」。ただし、これが群衆の中で発生すると、今回のような買い占め、品切れ、無意味な行列…という「どんどん酷くなる」状況を引き起こす。本来「神の見えざる手」は「負のフィードバック」として働くが、現代では「正」側の再生スピードが早すぎるため、この調整機能が適切に働き得ない。

    結びつきのまばらなネットワークにリンクをランダムに加え続けると、突然、ネットワーク全体がつながる時が訪れる…。
    六次の隔たり、見ず知らずの人とも、間に6回の媒介が有れば結びつくことができるという仮説。1人が100人と繋がれば、六次で何と1兆人と繋がる。
    ★だからこそ、全体がつながることを避けるために、意図的にネットワークの断絶を起こす必要がある。不幸の手紙とまったく同じ理屈である。

    ランダムな長距離のリンクが少数加わるだけで、広い世界が狭い世界へと縮んでしまう…。
    ★疎開的発想の愚かさよ。

    「#群れはなぜ同じ方向を目指すのか?」(白楊社、L.フィッシャー著)
    Day124

    https://amzn.to/39t3bb4

  • 海の中の小魚や、夕焼け空を舞う小鳥たちのかたまりが、それ自体生き物ののように変幻自在に姿を変えるのが不思議だ。あれ、どうやっているんだろう? 誰かが決めてるわけじゃないし。
    で、こちらの本も動物学、生態学の本だと思って読んだのだが、違った。群れが「なぜ」同じ方向を目指すのかは書いてない。むしろ群れが「どうやって」同じ方向を目指すのかを書いてある。動物であれコンピュータ・プログラムであれ、いくつかの決まりを守って動き回る集団は、外から見ると意志があるかのような統一行動を取るのだそうだ。本当かな。
    動物が「なぜ」群れとして統一行動を取るのかはあまり興味がないらしい。そこが知りたいんだけどなあ。

  • 一見複雑に見える世の中の現象も、実はシンプルなパターンの積み重ねで構成されている(複雑性)ことを科学的に説明した本。「影響力の武器」を読んだときと似ていて、「人間って無意識に合理的な行動をとるようにできてんだなー」という印象を持った。
    1番印象に残ったのは買い物の仕方。色んな選択肢があるなかで意思決定する時は納得できるラインを作って、そこで決めてしまうのがハッピーってのが確かにと思った。

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