アベノミクスでデフレ・外食不況は脱出できるのか!?一杯の牛丼から見えてくる日本経済の軌跡とこれから

  • ビジネス教育出版社 (2013年4月24日発売)
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本 ・本 (206ページ) / ISBN・EAN: 9784828304731

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  • 一杯の牛丼から見えてくる日本経済の軌跡とこれから、アベノミックスでデフレ・外食不況は脱出出来るのか?

  • 日本経済の動向および将来日本が発展するための提言を行っている本ですが、この本の著者の経歴である調理師のプロの視点から「食」の切り口からの解説が興味深かったです。

    私が大学生の頃、牛丼と言えば、倒産から蘇ってきた「吉野家」が代名詞でしたが、数年前の狂牛病への対応の仕方で、業界トップから落ちてしまっているのですね。あまり牛丼を家以外では食べないので気づいていませんでしたが、駅前には「すき家」や「松屋」をよく見かけることを思い出しました。

    以前は週末のどちらかは外食をしていた我が家ですが、娘達の生活が忙しくなってきたこともあり、いわゆる外食産業での食事はしなくなりましたが、最近の外食産業にも新しい流れがあるようですね。

    本書で解説されているように、単に安いだけでなく、消費に合った価値を提供できる外食・飲料産業が栄えていって欲しいと思いました。

    牛丼屋さんを具体例で解説していましたが、牛丼本体ではほとんど利益が出ていない価格設定にしている中で、どのようにして利益を出しているかの解説(p49)は良かったです。他の業界へも応用がきくし、マーケティング戦略を立案するときのヒントにもなると思いました。

    長い間、狂牛病問題において、吉野家と他の競合他社はなぜ違う対応を取ったのか不思議に思っていましたが、表向きの理由(販売展開方式の相違)と、それ以外の理由(タレを維持するために原価が上がっても販売継続は止む無し)が私なりにわかったのはためになりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・1985(昭和60)年には、高齢者一人を 8.2人の生産年齢人口で支えていたが、2015年には 2.6人に一人となるので、今までと同じ保障や給付を行うためには、支えての負担を増やす必要がある(p19)

    ・飲食業界が低賃金なのは、参入障壁の低さと、競争過多にある。参入障壁の低さは、1)保健所の営業許可、2)適当な立地の場所と、お金・人、3)提供するコンテンツ(内容)、があれば開業できるから(p22)

    ・デフレが長く続いたのは、不良債権処理の遅れもあるが、過剰な価格競争と固定費の低減によるジリ貧化により、経済のパイそのものを縮小させていたから(p28)

    ・吉野家の牛丼価格が競合2社比較で高いのは、カウンター接客に加えて教育に経費がかかるため、実際の一杯当たりの利益は、吉野家で9円、すき家:1円、松屋:3円(p49)

    ・吉野家の場合、牛丼のみの利益率は 2.4%(9/380=2.4%)だが、卵をつけると 12.6%(54/430)、さらに味噌汁をつけると 20.6%(99/480)となる、アラカルトを単品で頼むよりもセットにした方がお得であることをPRして購買単価を向上することで利益率を確保(p53)

    ・狂牛病問題で決断スピードが吉野家において遅れた理由の一つとして、直営店以外にもFC展開しているので、FCオーナーの意向もくみ取る必要があったため(p63)

    ・牛丼販売を一時中断することになった吉野家は、煮肉用のタレ(牛丼の命)を結果として廃棄することになった、競合他者がコストが上がっても豪州産を使ってまで販売継続した裏には、煮肉用のタレを活かすための戦略でもあった(p64)

    ・すき家は、牛丼屋ではじめて「スプーン」を常設した、それも漆塗りの上品なもの、これにより他者がターゲットにしてこなかった女性を取り込めた(p70)

    ・蕎麦の原価は非常に安いので、回転が上がれば相当な利益がでる、吉野家が「そば処 吉野家」を出店したのはそれが関連しているかもしれない。非常に関連性の低い2つがシナジー効果を出せるかが今後の見どころ(p79)

    ・カレーの壱番屋が凄いのは、1)ハウス食品がカレールーの安定供給を行っている、2)カレーに合うトッピング(チーズ、揚げ物)や野菜を追加しやすくしている点にある(p103)

    ・うどん屋の丸亀製麺(トリドール社)は、注文して、うどんができるのを待っている間に、天ぷらや、おむすび等を選ぶ時間があることがポイント(p108)

    ・飲食業の基本はQSC、Q:商品品質、S:サービス、C:清潔(Cleaness)である(p116)

    ・業界で1位にならなければ意味がない、2位の知名度が低い、1位になるためには、「差別化」して、「一点集中」すること(p134)

    ・日本が中国等に進出した理由は、人件費が安く固定費も安いことであったが、何よりも大切なのは、品質と納品までのスパンである(p165)

    ・撤退後の生産設備は、多くが日本に戻ってきている、ポイントは、1)完成品の出荷リードタイム短縮によるコスト削減、2)法人営業ならではの付加価値戦略によるシェア拡大にある(p169)

    2013年7月14日作成

  • チェック項目7箇所。有難いと思っている低価格商品の広がりが、結果として、巡り巡って私たちの懐を寂しくし、日本経済の長引く不況・経済低迷を助長していることに気づくのです。私たちの生活の中に最も大切な要素として”食”があります、飲食業界が元気になり、好況となれば、日本経済は必ず復活すると信じて本書を執筆しております。飲食業の平均年収は230万円、医療・福祉は386万円、1位は電気・ガス・熱供給・水道業713万円(14業種中)。飲食業界が「デフレの象徴」と言われる理由……①(他社よりも)「低価格で販売」、②(その結果)「薄利多売へ」、③(常態・慢性化)「値下げ競争へ」、④(エンドレス)「ジリ貧」、元の価格では売れなくなり、低価格が継続し、ジリ貧化の道を歩むことになり、その行き着く先が現在の日本経済を象徴する低価格指向のデフレ経済になったというのがデフレ経済の真実なのです。安売りはしませんという吉野家ですら一杯380円の牛丼の利益はたったの9円しか出せない状況、それよりも安く販売しているすき家に至っては一杯280円の牛丼で利益はわずか1円。著者がキャストとして働いていた当時の牛丼と、現在販売されている牛丼の味とは比較にならないほど別物だと思えてしまうのです。私は、国が豊かになり国内の付加価値をさらに生み出して、日本経済が元気になっていくためにはすべての女性が就労をするべきではないかとも感じています。

  • 飲食業界出身の筆者が、牛丼に象徴される低価格競争が、経済低迷の元凶と説く。

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著者プロフィール

付加価値評論家。
東京都新宿区出身。
埼玉県内の高校卒業後大学受験に失敗。その後調理師として延4年間調理の現場に従事するも、体調不良と職務不適合が発覚して退社。しかし、その3日後にリーマンショックが発生し、約8ヶ月間ニートになる。運良く就職できた不動産管理会社で顧客目線でのサービスと営業の面白さに目覚める。
紆余曲折な人生の中でお金に困る時期を過ごした経験より、「すべての人に、身近な金融経済教育の普及を!」を痛感し、欧米の強欲資本主義とは異なる日本的な「徳のある経済学」を担う人間教育を研究。それを世の中に広める志をもって、TSPコンサルティング株式会社を設立、代表取締役に就任。
独学でファイナンシャルプランナー(FP)資格を取得。現在では企業研修・資格学校講師を始め年間100件以上の講演活動を実施。
・日本プレゼンテーション協会認定 プロプレゼンター

「2013年 『アベノミクスでデフレ・外食不況は脱出できるのか!?一杯の牛丼から見えてくる日本経済の軌跡とこれから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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