売られ続ける日本、買い漁るアメリカ: 米国の対日改造プログラムと消える未来

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828412627

感想・レビュー・書評

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  • 世界の市場、関係性が気になり手にとってみた本

  • サブプライム問題も発生していないアメリカが好景気に沸いているころに書かれた本なので、少し割り引いて考える必要があるのかもしれませんが、アメリカが日本を自分たちに都合のよい様に改造しようとしている内容について書かれた本です。

    数年前に郵政が民営化されましたが、これは何のために行われたのでしょうか。当時は郵便局が減るとか、郵便が届きにくくなる地域がある等の議論が多かったと思いますが、この本によると、その狙いは何百兆も貯められている簡保資金を外資を開放するアメリカの要求にこたえるものだったそうです。

    日本の政治家も、アメリカを向いて仕事をするのではなく、日本人のために仕事をしてほしいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・民間検査機関の最大手である日本ERIですら、ミサワホーム・大和ハウス等の大手住宅メーカが大株主となっている(p5)

    ・小泉政権の構造改革とは、米国から要求された事項(日米投資イニシアティブ報告書)を実に忠実になぞることであった(p21)

    ・日本人が国際的人脈からほぼ排除されているのは、言葉や人種の差ではなく、実は宗教の壁である、日本は戦争時にキリスト教との「神々の争い」に敗北した(p38)

    ・現代のキリスト教は、リベラル派と保守派の二大潮流に大別され、カリスマ派がその両者の間にあって、接着剤としての役割を狙いつつある(p40)

    ・米国の投資環境は不思議な不公平さがある、企業を乗っ取る側の資金確保は不透明なのに、買収される側は透明性の確保が要求される(p47)

    ・消費者相手の商売は儲けが大きいので、消費財ほど寡占体制が進んでいる、ところが素材産業は利益を一定枠内に閉じ込められる(p51)

    ・素材、基幹産業向けに融資を行う専門の機関が、日本では長期信用機関(日本長期信用銀行、日本興業銀行)であり、中小企業向けには、地方銀行・相互銀行・信用金庫が配置された(p52)

    ・ビルダーバーグ会議は1954年の1回会合以来、毎年開かれている、米英大統領、有力者が、権力者になる前にその会議に招待されている(p55)

    ・外国人による直接投資が生産した価値は、米国ではGDPの3%、日本では0.2%に対して、ドイツ:10%、英国:9%、中国:8%である(p67)

    ・政府他実施した19項目の外資規制緩和、1998年9月にはSPC法により企業切り売り可能となった(p69)

    ・三角合併の手順:1)外国にある親会社が、日本にある完全子会社に親会社株を譲渡、2)子会社は、譲渡された親会社株を買収したい日本の会社の株主に提示して、当該株主が保有している買収先企業の株式と交換し支配権を得る、3)合併会社をつくって完全な新子会社設立、4)買収された会社株式は新会社の新株に入れ替えられる(p80)

    ・米国医療費はGDPの15%でOECD平均の2倍、にもかかわらず、医療保険未加入者が16.6%:4000万人もいる(p99)

    ・ウォルマートで医療保険に加入しているのは38%に対して、同じ小売チェーンのコストコは90%以上である(p104)

    ・米国の医療サービスの約7割は非営利法人、2割は政府系、1割が営利法人、営利法人の目的は患者に尽くすことを手段として利潤追求を目的である(p106)

    ・WHOの2000年報告書では、米国の医療制度に対する評価は世界15位、日本は1位(p112)

    ・米国での労使交渉の大半は、医療保険と年金に関するもの、現役の従業員と企業が負担する積立金に対して、退職者への支給額とのギャップが大きくなっている(p136)

    ・米国が安全保障上の理由で禁止可能な9分野(航空、通信、海運、発電、銀行、保険、不動産、地下資源、国防)は、米国政府が日本政府に外資導入を積極的に要請している分野である(p143)

    ・保険の新分野(従来商品でない第三分野)においては、日本の簡易保険および大手企業は進出を禁止され、外資と日本の中小保険のみとなった。そのため日本の生保・損保会社は外資に吸収された形で進出した(p154、158)

    ・南北戦争後の憲法修正において、黒人の権利が認められたが、実際には、「祖父条項(南北戦争時に選挙権があったもののみ与えられる)」、「選挙登録の有料化・識字テスト」等により大きく制限されていた(p192)

    ・1972年に日米繊維政府間協定ができたのは、田中角栄が2000億円という補正予算を組んで繊維業界を黙らせたことにある(p207)

  • 分類=国際政治・日本・アメリカ。06年3月。

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著者プロフィール

1943年神戸市生まれ。兵庫県立神戸高校、京都大学経済学部卒業。京都大学大学院経済学研究科修士・博士課程を経て、1969年甲南大学経済学部助手、1977年京都大学経済学部助教授、同・教授、2006年同・大学停年退職。福井県立大学経済経営研究科、大阪産業大学経済学部教授を経て、現在、国際経済労働研究所長。京都大学経済学博士、京都大学名誉教授。京都大学経済学部長、日本国際経済学会会長、第18期日本学術会議第3部会員、大阪産業大学学長を歴任。2018年6月より国際経済労働研究所「AI社会を生きる研究会」主宰。

主要著書
『貿易論序説』(有斐閣、1982年)、『貨幣と世界システム――周辺部の貨幣史』(三嶺書房、1986年)、『環境破壊と国際経済――変わるグローバリズム』(有斐閣、1990年)、『南と北――崩れ行く第三世界』(筑摩書房、1991年)、『豊かな国、貧しい国――荒廃する大地』(岩波書店、1991年)、『売られるアジア――国際金融複合体の戦略』(新書館、2000年)、『ESOP株価資本主義の克服』(シュプリンガー・フェアラーク東京、2003年)、『民営化される戦争――21世紀の民族紛争と企業』(ナカニシヤ出版、2004年)、『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ――米国の対日改造プログラムと消える未来』(ビジネス社、2006年)、『金融権力――グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書、2008年)、『《集中講義》金融危機後の世界経済を見通すための経済学』(作品社、2009年)、『韓国併合――神々の争いに敗れた「日本的精神」』(御茶の水書房、2011年)、『アソシエの経済学――共生社会を目指す日本の強みと弱み』(社会評論社、2014年)、『人工知能と21世紀の資本主義――サイバー空間と新自由主義』(明石書店、2015年)、他。

「2018年 『人工知能と株価資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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