日本資本主義の精神 (B選書)

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828412665

作品紹介・あらすじ

「美しき品格」を持ち「優秀な知恵」を兼ね備えた日本人の原点がここに…。

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  • 藩閥は藩がなくなっても機能し、派閥という形で今なお機能しており、擬制の血縁集団というべき共同体に転化する。会社が機能すれば、そこに会社共同体が生ずる。新入社員の採用試験や入社式は、共同体加入のための資格審査であり、通過儀礼である。共同体に加入すると、共同体の一員としての訓練があり、それが終わって初めて機能集団としての会社の役割が与えられる。共同体への加入であるから、追放されない限り終生そこにとどまり、雇用契約はない。

    会社が共同体であるという意識は、会社の名誉を汚してはならないという意識を生む。名誉ある共同体に所属することは、犯罪の抑制になるが、共同体の一員の犯罪を外に出さないという形にもなる。

    日本を敗戦に導いた最大の要因は、軍部がその共同体を維持するための要請がすべてに優先してしまったこと。組織を維持するために行動されることは、今でも変わらない。機能集団が同時に共同体であることは、共同体を維持するためだけに機能することになり得る。

    著者は、日本の資本主義を作った人物として、鈴木正三と石田梅岩をあげる。正三は1579年に生まれ、関ヶ原にも大坂夏の陣にも出陣し、戦後は大坂番を勤めた後、出家した禅坊主。「世俗の業務は宗教的修行であり、それを一心不乱に行えば成仏できる」と説いた。この発想の背景には、戦乱から秩序へと移り変わったものの、戦国の夢が消えて精神的閉塞状態をきたし、人々が何に生きがいを求めればよいかわからない時代となったことがあると考えられる。

    石田梅岩は1685年に中農の家に生まれ、一介のサラリーマンとして過ごした後、退職して45歳の時に私塾を開いた。弟子と孫弟子の時代には、石門心学として日本国中に広がり、武家・公家社会にまで浸透していった。

    著者は、藩を資本の論理に基づく経営体としてとらえ、明治の「富国」と戦後の「日本株式会社」の原型と考える。戦乱なき時代には武士の存在理由はなく、資本の論理に基づいて藩の経営者とならざるを得なかった。徳川時代は、諸侯から庶民まで、いやおうなく経済を教え、資本の論理に従わない者は破滅することを実地に教育した。開国後は、機械さえ購入すれば、これを生産に活用し得る優秀な労働力があり、労働を少しも賤業と考えない国民がいた。合理的経営を当然とする町人がおり、藩の政治にも経済的合理性に立脚する伝統があった。

    正三の「あらゆる事業はみな仏行なり」という思想は、経済性を無視してひたすら働くことに精神的充足感をもたらし、それに満足してしまう傾向も生んでいる。さらに、その行為を認めることを求め、夜遅くまで残業すれば評価される社会を生んだ面もある。

  • [ 内容 ]
    「美しき品格」を持ち「優秀な知恵」を兼ね備えた日本人の原点がここに…。

    [ 目次 ]
    第1章 日本の伝統と日本の資本主義(日本のこれまでを支えたものは何だったのか;血縁社会と地縁社会;「契約」の社会と、「話し合い」の社会)
    第2章 昭和享保と江戸享保(日本をつくった二人の思想家;禅とエコノミック・アニマル;神学と心学)
    第3章 現代企業のなかの「藩」(「資本の論理」と「武士の論理」;日本資本主義の美点と欠点;日本資本主義の伝統を失わないために)

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  • 日本人の資本主義に関する考え方を学べる良書。

    なんで堀江貴文がパクられ。村上世彰の判決で安く買って高く売ることに裁判長が戦慄したのか。利益を出すことを企業の目的にするとあさましく思われるのか。クビにされた人が人格的に問題あるとみなされるのか。



    色々な疑問がほどける。立派な本。

  • 岩崎勝彦先生推薦

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著者プロフィール

1921年、東京都に生まれる。1942年、青山学院高等商業学部を卒業。野砲少尉としてマニラで戦い、捕虜となる。戦後、山本書店を創設し、聖書学関係の出版に携わる。1970年、イザヤ・ベンダサン名で出版した『日本人とユダヤ人』が300万部のベストセラーに。
著書には『「空気」の研究』(文藝春秋)、『帝王学』(日本経済新聞社)、『論語の読み方』(祥伝社)、『なぜ日本は変われないのか』『日本人には何が欠けているのか』『日本はなぜ外交で負けるのか』『戦争責任と靖国問題』(以上、さくら舎)などがある。

「2020年 『日本型組織 存続の条件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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