- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784828413013
作品紹介・あらすじ
最終戦争論、満州国設立、二・二六事件、敗戦、そして戦後の復興。昭和を駆け巡った国を思う男たちは、何を考え、実行し、何に挫折したのか。
感想・レビュー・書評
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歴史をどう捉えるか、という関心は、世代によって異なるのが常だが、個人史においても変遷するものだ。
最近、私が関心を持つのは、小林英夫氏の著作と歴史認識だ。
本書は、石原莞爾、北一輝、田中智学、井上日召、橘孝三郎、権藤成卿、岸信介などの思想と行動を追い、昭和を検証している。
「新体制をつくろうとした右翼」に着目した著者によれば、昭和を駆け抜けた右翼には、「現状破壊派」(井上日召、橘孝三郎、権藤成卿)、と「新体制構築派」(石原莞爾、北一輝、田中智学)があるという。さらに、北に付随する人物として西田税、石原に付随する人物として宮崎正義が加えられる。
また、「新体制構築派」と「現状破壊派」のあと、歴史に表舞台にたつ「官僚テクノクラート」として、岸信介が取り上げられている。
平易な文章の本にもかかわらず、役に立つ知見が多い。
私が学ばせていただいたのは、
1 日本型経営の典型と言える、終身雇用、年功序列賃金、企業内労働組合の“三種の神器”の元を作ったのは、宮崎正義であったこと、
2 計画統制経済はどうあるべきか、日本に社会主義を取りいれるにはどうしたらよいかを研究した宮崎正義が、人間の欲や日本の伝統文化を汲み、産業を三つに分けたこと、
●国家が直接運営する国営産業、
●法律に基づいて統制する半国営産業、
●自由な商取引による民間産業、
3 岸信介の東南アジア諸国の賠償問題への見事な対応、など。
平成18年9月、ビジネス社刊行。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の主観が強すぎるように感じる。それに加えて文章が読みにくい。
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石原莞爾、北一輝はいいとして、田中智学、井上日召、橘孝三郎、権藤成卿、宮崎正義は知らなかった。いや、名前ぐらい見たことはあるが、なにを言っている人でどういう人なのかは知らなかった。勉強になった。
そして、この系譜に岸信介が入っているのも面白い。
しかし、この本での要約を読む限り、田中智学の国体思想にせよ、他の人々がどこにそんなに惹かれたのか分からない。ナショナリズムというになんにせよ、稚拙というか暴論というか、ただのトンデモであって、いい大人がのめり込むものと思えない。
「知性の圧倒的欠如」
としか思えないのだ。若い日々とはいえこういうのに共鳴した石原莞爾にせよ北一輝にせよ岸信介にせよ、お里が知れるって思う。 -
昭和史における傑物を新体制構築派、現状突破派に分けて記述している。読み応えは若干少ないものの、入門書としては類似する作品がなく貴重。特に、岸信介の記述や官僚統制についての言及は非常に面白い。