日本がギリシャになる日

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828416045

感想・レビュー・書評

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  • このジャンルの本はひと通り読んでいるために、欲に新しい吸収はありませんでしたが、ギリシア危機問題の本質に触れたい方、そこから日本の将来がどうなるかを考えてみたいと思う方。読まれてみてもよいかもしれませんね。

  • 最近は三橋氏、増田氏、日下氏、長谷川氏等の日本をある程度は礼讃する本ばかり読んでいたので、考え方が偏ってはいけないと思い、いわゆる日本の危機を警鐘している「財政破綻本」も読むべく、この本を手に取ってみました。

    私の理解力が達していないのかもしれませんが、この本には不満な点が残りました。本の中にはいくつかのグラフは掲載されていますが、肝心の危機感を煽っている点については、納得のいくもの(日本を礼讃している本のデータに対して、なぜ危機なのか)が私には無かったように思いました。

    なぜ日本がギリシアになるのかも分かりませんでした。強いて言えば、日本の国債が国内で消化できずに海外資金に頼り始めることがあれば危ない、つまりそれまでは安全と言っているのでしょうか(p83)

    破綻本はまだ他にもあるので、それらを読んで、この本の著者の論点を理解したいと思っています。但し、日本の特許収支が黒字になった理由についての解説(p211)は参考になりました。

    以下は気になったポイントです。

    ・スイス国際経営開発研究所が発表した競争力では、4つの分野で評価されるが、2010年版では日本は27位へ急落、1989~1993年まで首位であった(p16)

    ・今の若者がどれだけの年金をもらえるかは、将来の若者がどれだけの保険料を納めるか、すなわち、将来の日本経済の大きさにかかっている(p46)

    ・全国の銀行でどれだけの預金が貸し出されているかを表す預貸率は2010年3月現在で75%、残りの25%の殆は国債購入で130兆円(p66)

    ・資産を取り崩すことで貯蓄率が低下し、穴埋めを海外資金に頼らざる得なくなったときには、日本のギリシア化のカウントダウンが始まる(p83)

    ・家計純資産1083兆円のうち、最終的に国債に回っているのは600兆円、残りと2009年度の国債発行(44兆円)を考えると、後11年ほどで家計の純資産を超える(p93)

    ・破綻したGMは、GMACと呼ばれる金優子会社を抱えて、住宅ローン等の金融ビジネスを積極化してそこで儲けていた(p101)

    ・サブプライム問題が発生するまでは、個人は住宅価格の上昇の恩恵を、銀行からの借金の容易化というかたちで自由に使える資金に変換できた(p109)

    ・韓国メーカでは国内では実質的に寡占状態になっていて、グローバルな市場を目指した戦略立案が日本企業に比べて行い易い(p159)

    ・周知のとおり、日本の貿易依存度は高く、GDPの15%は輸出によって稼いでいる(p177)

    ・1962年にIMFによる国際収支困難国支援に合意した10カ国(日米英独仏伊加+オランダ、ベルギー、スウェーデン)をG10と呼んだが、このG10の初仕事はイギリスの救済であった(p193)

    ・日本の漏水率は3%であるが、これはアジアの主要都市の2、3割と比較して優秀、漏水率を下げることは新たな水の需要地を創出するのと同じ効果がある(p205)

    ・特許など使用料の収支が平成11年ころから黒字になっているのは、わが国企業が生産拠点を海外に移したことで、グループ内の資金移動(海外現法からのロイヤリティ受取り)が国際収支に反映された点は大きい(p211)

    ・2009年の農地法改正により、企業の農業への参加を可能にした(p225)

    2010/12/19作成

  • 、日本の長期低迷の原因と、財政の現状をまとめ、これから進
    むべき方向性を提言した一冊。

    タイトル自体はじつに過激ですが、ギリシャと日本を比べることで、
    日本がなぜか持ちこたえている理由、今後何が起こった場合、最大
    のリスクとなるのか、詳しく理解することができます。

    さまざまな悲観論、楽観論が入り乱れる中、バランスの取れた一冊
    で、GDPや労働人口、主要産業の推移、さらにはアメリカやユー
    ロ圏の話に触れながら、日本が現在置かれている状況を客観視する
    ことができます。

    民主党の政策に関しては手厳しい評価ですが、その理由についても、
    極めて理性的に述べています。

    ケインズが提唱したwise spendingの考え方、手厚すぎる生活保護
    や雇用保険の問題点、成長なき増税への意見など、読んでいていち
    いち頷くことばかり。

    後半では、わが国が今後取り組むべき課題も整理されており、現在
    の経済状況に不安を感じる人は、ぜひ読んでおくべき一冊だと思います。


    人口減少・少子高齢化が進み、企業も、国際競争力を失いつつある
    状況下、政府が、現在のようなペースでバラマキ型の財政支出を続
    けていると、いつか必ず、国内の資金だけでは、大量に発行される
    国債を消化することができなくなるはずだ

    グローバル化社会では、単なる技術の高さだけでは勝ち残れない。
    地域や国ごとの需要者のニーズの違いを細かく汲み取って、人々が
    欲しいモノを供給するスタンスが必要なのである

    ケインズは、同時にwise spending(賢い支出)という考え方も示し
    ている。これは、利用者がほとんどいないような道路や橋、市庁舎
    のようなハコモノを作るのではなく、将来的に生産性を高めるよう
    なハード・ソフト両面でのしくみ作りのために工夫して、賢く支出
    するということである

    元々、高いリターンは高いリスクへの報酬であるから、リスクを避
    けることに終始していれば、資金の流れが停滞することになる

    今や、労働力人口六六〇〇万人の内、サービス業の就業者は二五〇
    〇万人に迫り、一〇〇〇万人強で推移する製造業を大幅に上回って
    いる。また、GDPに占めるサービス業の割合は約七割である

    生産性の向上が経済にとってプラスに作用するためには、不必要に
    なった経営資源が、より収益性の高い分野へと移ってゆく必要がある

    手厚すぎる生活保護や雇用保険では、労働意欲そのものを失わせて
    しまう危険がある

    日本の国債は九三~九五%が国内で消化されている。国債の保有者
    別の内訳を見ると、約七割が国内の金融機関によって保有されてい
    るのがわかるだろう

    一九八〇年代前半には二〇%、一九九一年度には一五%もあった貯
    蓄率は、この二〇年間に急降下し、近年は三%台で推移している

    成長なき増税は、経済の活力を殺ぐだけである

    ◆わが国の展望・重要なポイント
    1.国内の需要を高める
    2.労働生産性を高める
    3.新興国の需要を取り込みつつ、協力体制を構築する

    教育機関のあるところに若者が集まり、街ができることはどこの国
    でも同じであり、ごく自然なことである

    日本の企業が今後たくましく発展するならば、法人税を下げて、よ
    り多くの資本が翌年の企業活動の拡大に充当されるようにし、大き
    くなったパイの下で、雇用拡大に伴う個人所得税の増加や、消費の
    増加に伴う消費税の増収を図る方が、経済政策としては整合的である

    中国では、日本の農産物や日本企業の加工食品等にはブランド価値がある

    長期的な「期待」の変化で経済は変わる


    序 章 失われた二〇年
    第1章 日本が財政悪化に直面するとき
    第2章 経済構造の大変化=多極化する世界
    第3章 わが国の行く末=四〇年後の日本
    第4章 まだ間に合う日本経済復活の道筋

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著者プロフィール

1953年神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。83年ロンドン大学経営学部大学院(修士)卒業、85年メリル・リンチ社ニューヨーク本社へ出向。帰国後、98年第一勧銀総合研究所金融市場調査部長、内閣府経済動向分析チームメンバー、第一勧銀総研やみずほ総研の主席研究員を経て、03年から信州大学大学院イノベーション・マネジメント・センター特任教授に。05年から同大学経済学部教授。

「2014年 『よくわかる金融政策の見方・読み方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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