日本既成権力者の崩壊

著者 :
  • ビジネス社
3.20
  • (0)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 23
レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828416571

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 日下公人 (著)
    著者初の試みである自伝的要素をふんだんに入れ、日本の今と未来を鋭く切り込んでいく。著者は言う。「2012年は大変化と大動乱の時代になると思う。誰にとっての変化かと言えば、それは今までの中変化、小変化の波を乗り切って地位を築き、資産や名声を得た人たちで、エスタブリッシュメントと呼ばれ自信に満ちた人たちである」。彼らは既成の権威に胡坐をかき甘い汁を吸って日本を食い物にしてきた。しかし、昨年の東日本震災以降、庶民はその嘘に気付いてしまった。第1章 新しい時代を生き抜く頭の使い方/第2章 変化してきた大学教育と人材登用/第3章 国や企業から自立せよ/第4章 大震災が告げた時代の転換期/第5章 国は原発事故で遁走した。とりわけ第1章は著者が始めて語る青年期の体験は現在を生きる我々に大きな指針を与えてくれる。

  • 日本でも格差が拡大してきたと言われますが、欧米諸国や中国・インドが格差以上の「階級社会」であることを考えると、日本の中流層はまだ健在だと思います。私が愛読している増田氏もこの本の著者の日下氏と同様の意見ですが、日本の場合は、庶民やMBAを取得していない経営者の資質が高いことが、日本の国力を高めていているようです。

    インターネットの発達で以前とは異なり、庶民は多くの一次資料(例:国会の全中継、各省庁が公開している生データ、放射能等の測定データ等)を使う等して、マスメディアが流す情報の信憑性も判断することが可能になってきました。

    この本は、日下氏が以上のような状況を「既成権力者の崩壊」と捉えて、既得権者の権威が失墜して「新しい風」が吹いてきたとして、その内容を解説しています。まさに戦国時代と同じ状況になってきました、「変化を感じてそれに対応できたモノが生き残る」という時代なので、変化を感じられるようにアンテナは磨いていたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・戦前は外国に追いつくためのと、追い越すための教育の両方が日本にはあった、東大と京大、お茶ノ水と奈良の二本立てにそれを感じる、東京は欧米追いつきで、関西は日本の伝統から見ての東西融合(p18)

    ・自分で勉強することが大事、引っかけ問題だらけの「下らない」学力は不要、興味があればそのときに自分で調べれば済む(p24)

    ・アナロジー(たとえ話)がうまい人がトップになるとは限らないが、アナロジーがうまい人がトップになれば政治も経営もうまくいく(p26)

    ・新しい知識を身につける方法は、必要になった時に自分で勉強すること(p32)

    ・イデオロギーが発生するのは、ある程度勝負がついて勝った方が「これ以上やるのは面倒で、答えはこれ!」と固定した考え方を押し付けた時(p35)

    ・閃くのは、集中と放心によってである、数日ものすごく集中して考えることで頭の中の電圧が高まり、それを解いて放電(神経細胞間の通電回路が形成)するのが放心(p41)

    ・2011年春の大卒者:55.2万人で就職したのは、34.1万人弱、大卒が誰でも就職できる時代は終わった、1990年には大学進学率(浪人含)は、24.6%だったが20年間で 50.9%になった(p51)

    ・米国でも本当に優秀な経営者は、企業経営には「損して得取れ」や長期的観点が必要なことを知っている、MBA取得者は理屈が先行して商売の機微がわからない(p58)

    ・筑波大学の教授には東大や各省から人が集まり、本心は「自分よりも賢い人間が来たら困る」だったので、優秀な人は集まらなかった(p71)

    ・明治大正時代は、人材は発掘や登用するもので育成するものではなかった、発掘した人は自分のポストを譲ることになっていた(p74)

    ・日本の工場が海外へ移転する原因を電力代のせいにするのは財界が官庁に遠慮しているから、本当の原因は手続きに時間がかかるから(p84)

    ・その年齢層が人口比率で3%程度だとマイナーらしく振舞うが、20%になると我を通すようになる(p106)

    ・関東大震災後に、東京市には自動車時代が到来してタクシーとバスが走るようになったのはアメリカが援助してくれたから、日本に自然発生したのは、馬車鉄道・市電・地下鉄(p127)

    ・ユーロには財政危機のユーロ加盟国を救済する緊急措置を発動できないことが表面化してユーロ安となった(p139)

    ・米国で債務上限引き上げ法が成立し、今後10年間で2.5兆ドルの財政赤字を削減、債務上限を2.1兆ドル引き上げた(p146)

    ・戦争に勝つ目的でつくられて今も継続されているものとして、「もっと働け」「もっと産め、殖やせ」貯蓄奨励、農業保護、一県一新聞・一銀行、9電力、NHK、生産現場への終身雇用と年功序列型賃金、社員食堂、社宅、国営強制保険、贅沢品を国家が決める、天下り等(p149)

    ・傾斜生産方式では、繊維産業の負担で重化学工業を育てた、日本の鉄を輸入してくれるインドの綿花を割り当てて、アメリカ綿は使用禁止にした(p152)

    ・台湾の李登輝総統は、「税率が高いと国民は節税・脱税に努力するが、10%くらいであれば払ってくれる」ことを体験した(p160)

    ・東日本震災の被害額:16.9兆円は、阪神大震災の9.6兆円よりも大きいが、被害の大きかった福島・宮城・岩手のGDPを合計しても兵庫県よりも少なく、過大ではないかと議論されている(p164)

    ・日本で建設中、計画中の原子炉は第三世代であり、今では第四世代になっている、最も注目されているのが「トリウム溶融塩炉」である(p184)

    ・放射線は年間100ミリシーベルト程度は浴び続けてきた、それが悪いものならば人類は絶滅していた、生き延びたのは、適応したか必要な刺激としてきたから(p191)

    2012年3月25日作成

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

日下公人の作品

ツイートする
×