消費税は民意を問うべし ―自主課税なき処にデモクラシーなし―

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828416625

感想・レビュー・書評

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  • 「ソビエト帝国の崩壊」などで有名な小室氏(故人)の旧著の復刊です。
    この方は天下の奇人のようにも思われていますが、これもなかなかw
    大平内閣の一般消費税、中曽根内閣の売上税と挫折した付加価値税導入について、竹下内閣が「インボイス無しの帳簿方式による前段階税額控除」「高すぎる免税点」「簡易課税制度」により中小企業の拒否感をなんとかクリアし、消費税を導入したいきさつを書く歴史の本ですね。
    消費税の話は全体の3分の1くらいですね。
    消費税導入の歴史的経緯は、日本公認会計士協会の「我が国の消費税の現状と今後の方向性について」が詳しいです。
    http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/24_11.html

  •  本書は1989年の消費税導入の頃に出版された『消費税の呪い』の復刻増補版です。著者が2010年に逝去したので、本文は当時のままです。
     が、本書の主張は、世紀をまたいだ23年後の現在の増税議論にもそのまま妥当します。それは、本書の主張の核心が「デモクラシーの理念に忠実であるなら、増税議論については、国民に正直にその全てを公開し、公開の場で反対派を説得していくしかない」というこれ以上無いくらい当たり前のものだからでしょう。
     しかし、この当たり前が全く守られていないどころか、その誕生の瞬間から後ろ暗い密室政治の産物であったのが日本の消費税です。
     本書では、デモクラシーの根幹である大原則から消費税について論じられています。政治学、理論経済学、数学、社会心理学とあらゆる学問に通暁した著者が、その博覧強記を遺憾なく発揮し、原理原則の基礎の基礎、そのまた背景から説き起こして、シンプルな原則から骨太の議論を議論を展開する。これぞ著者の真骨頂と言えます。

     こう書くともの凄く難しくて読みにくいと感じるかもしれませんが、著者の本はどれも読みやすいです。
     本書を含め、著者のハードカバー本の特徴を挙げると、以下のようになります。

    1.字が大きく行間もゆったり取ってある
    2.一文が短く、漢語を駆使したキレのある文章である
    3.改行を頻繁に使ってある
    4.難しい語にはルビや注釈がふんだんに振られている

     どこかで、著者が「中学生以上であれば読めるようにしてある」と言っていたような気がするんですが(うろ覚えで申し訳ないです)、それくらい読者に配慮した作りになっています。

     本書を読んでいて気づいたんですが、歯切れの良い議論が、漢語を駆使した短文でリズム良く繰り返されると、ある種講談のような印象を受けるのです。おそらく、文章の形式的な要素以外に、著者のデモクラシーに対する熱い思いや、自身が有している膨大な知をいかにわかりやすい形で読者に伝えるかに腐心しているその思いが、読み手をぐいぐい引き込む文章になっているんだと思います。


     著者の本は、他の本ではなかなか指摘されない原理原則中の大原則から論じられているのと、複数の学問分野に通暁した著者ならではの「しっかりした知の裏打ち」がある点で、オンリーワンの価値があります。
     民主主義のエートスの部分から消費税問題を考える上で、一読の価値がある本です。

  •  日本はデモクラシー国家ではない。このことが痛切に理解できる一冊。
     憲法は本質的に慣習法。だから、条文に明文化されていようといまいと、一度前例が確立されてしまうと、それが憲法の一部になってしまう。立派な憲法があっても独裁化する途上国は多い。これは慣習で民主的手続が死文化されてしまうからだ。魂のない仏像と同じ、単なる抜け殻だ。
     現在の日本も「税制は国民的議論によらず、一部の専門家が陰に隠れて進めるべし」が慣習化されてしまった。小室博士の説明通り、30年後の令和の日本は税制に限らず「何も知らされない」非民主的国家になっている。
     一部の専門家(分科会?や専門家(世界的に笑いものだ)によって国論が決定され、枠珍推進やマスク強制社会が実現している昨今だが、その土壌風土は広く蔓延している。
     「国会で決まったのだから民主的な手続は経た」というのは、国民が事前に十分な情報を得て判断ができることが必須。デモクラシー国家では「公正な手続」が最重要。その手続においてまともな議論も討論もなく税制(消費税)が決められているのはデモクラシーとはいえない。
     「統一教会の信者か」を国会で問うた野党議員に非常識と非難を浴びせた人達は、この本によれば、プライバシーの本質が分かっていないことになるだろう。
    「宗教はプライバシーです、私人ならそう言えるが、それは断じて公人が言えることではあり得ない。(p111)」。

  • 小室は消費税の簡易課税制度(※売上の20%を付加価値と見なし、これに消費税を貸す。残りの80%は仕入れと原材料費と見なされる)が脱税の温床であると指摘する。それどころか「脱税制度そのもの」であると言い切る。
    http://sessendo.blogspot.jp/2014/02/blog-post_8447.html

  • 「課税は、デモクラシー諸国に於いて、国家と国民との最大のコミュニケーション。自主課税なき処にデモクラシーなし」
    http://www.amazon.co.jp/review/R9Y0EYQA3TJC/ref=cm_cr_rdp_perm

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治学研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『戦争と国際法を知らない日本人へ』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』『封印の昭和史』がある。

「2023年 『「天皇」の原理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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