ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅

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  • ビジネス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784828417141

作品紹介・あらすじ

兵器としてアメリカで生まれ、ヒロシマに落とされた「核」。その双子の兄弟「原発」は、なぜ日本へやってきたのか?福島第一原発の故郷を訪ねる旅の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 原爆と原発という双子の兄弟。ヒロシマからフクシマへ原発をめぐる不思議な旅だった。アメリカ。

    なんとなく読み過ごしてしまうパラグラフの最終文にとことん引っかかるものが用意してあった。ひとつも読み過ごせなかった。

    最後に年表があるのがいい。

  • 日本の原子力発電の源をたどって、原発が生まれたアメリカまで出向き、できるだけ当時の施設を見学、そして関係者に取材を重ねて作られた、丁寧でわかりやすいレポート。反原発・脱原発、あるいは原発推進などという枠組みから離れた立ち位置で、できるだけフラットな目線で見聞きしているところが良い。

    核分裂反応から生まれる膨大なエネルギーを軍事目的に利用しよう、というのがスタート地点。時はちょうど第二次世界大戦のさなか、ナチスの核兵器開発と競争するようにして核爆弾は生まれた。
    終戦後は、その膨大なエネルギーを「平和利用」という名のもとにに発電に利用する流れとなる。そうして生まれたのが原子力発電。平和利用とはいえ、この技術を通じて世界中に影響力をおよぼしたいというアメリカの思惑は簡単に見て取れる。核爆弾と原発が双子の兄弟であると著者は述べているが、まさにそうとしか言いようがない。

    だからこそ、アメリカの技術者たちは原発がどれほど危険なシステムなのかよくわかっていたのだが、日本にやってきた原発技術はすでに出来上がったものの上澄みだったと言ってよい。初期の関係者こそ、その危険性をよく理解していたものの、世代が変わるに連れて80年代ごろから、安全に対して金をケチるようになってゆき、そこから狂いが生じ始めたのだという。

    やはり福島原発の事故は、完全に人災だったんだな。しかも30年近くかけて仕込まれた年季物の人災。

  • 原爆と原発のルーツは一緒。当たり前の事実が日本ではタブーとなっている。核兵器を開発し、そこから自力で原発を作り出したアメリカにとっては、それは自明であるだろうし、核の恐ろしさも含めて両方の技術を受け入れている。だから安全性に対しても過信しない。日本はあえて原爆の兵器としての面を原子力に見ないようにしている。そこから呑気な安全神話が生まれ、安全性は経済性の下にないがしろにされていく。物事の本質を見ない、根源を追求しない、日本的な技術運用が、福島の悲劇をもたらしたと言えるのではないだろうか。

  • フクシマ南相馬の子どもたちを引き受けて、明日がヒロシマ原爆の日の前に読了できてよかったと思える、核と原子力の歴史の真実をえぐり抜いたレポート。
    米国の科学者・軍人も、日本での導入にかかわった人たちも、危険なもの事故は起こるものと冷徹に考えていたのが、まったく今の日本に受け継がれていない現実を変えていくには、核発電と呼び変えるしかない気がします。

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著者プロフィール

1963年1月京都市生まれ。
1986年、京都大学経済学部を卒業し朝日新聞社に入社。名古屋本社社会部などを経て1991年からニュース週刊誌「アエラ」編集部員。
1992~94年に米国コロンビア大学国際公共政策大学院に自費留学し、軍事・安全保障論で修士号を取得。
1998~99年にアエラ記者としてニューヨークに駐在。
2003年に早期退職。
以後フリーランスの報道記者・写真家として活動している。
主な著書に『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社 2013)、『フェイクニュースの見分け方』(新潮社 2017)、『福島第1原発事故10年の現実』(悠人書院 2022年)、『ウクライナ戦争 フェイクニュースを突破する』(ビジネス社 2023)などがある。

「2023年 『ALPS水・海洋排水の12のウソ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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