- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784828831701
感想・レビュー・書評
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春樹訳の『結婚式のメンバー』があまりにもハルキムラカミだったので、加島訳で再読した。こちらの訳のほうが、しゃべり言葉が自然(六歳児が六歳児らしく話す)。登場人物の息遣いとか汗と涙の匂いがただよってくるようで、より近い距離で物語を体験できた。フランキーは調子外れだけどやっぱり普通の女の子だし、ジョン・ヘンリはときにうざったい年下のいとこだった。
ベレニスの、最初の人の影を追い続ける人生の話、自分に閉じ込められてどこにも行けない話は、二回目もぐっとはいってくるものがあった。それと同時に、三人でくっついて心を落ち着けるところ、一緒になって泣くシーンはなにか救われる気持ちになる。最大限がんばっても自分にはそういうことしかできないだろうというあきらめもありつつ、それでだれかの心臓のどきどきが治まるんだったら、くっついていてあげたいものだと思う。それならできるから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夏の黄昏の台所。シロップみたいな空気が漂うそこは、少女にとって「速すぎる世界」と異なる時間が流れる唯一の場所だったのだと思う。
真っ暗な台所に響く泣き声が頭から離れなかった。きつく抱きしめられて温もりを感じても、〈あたし〉が〈あたしたち〉になることは永遠にない。その現実の残酷さに打ちのめされる。何もかも嫌になって全部捨てたくなっても、名前を変えたとしても、〈あたし〉が〈あたし〉であることからは一生逃れられない。絶えず世界と、誰かとの繋がりを探さなくてはいけない。
人はどこまでも孤独でたまらなく淋しいから。
《2014.12.11》 -
若さの成分って、愚かさとか閉塞感とか万能感とか、、
今は忘れているけれどふいにただよってきて、つかみとろうとしたりする。
「オレンジ色のサテンの、大人みたいなイブニング・ドレス着てさ。それで肘にはかさぶただもの。その服とかさぶたは、はっきり言って合わないよ」
あはは -
アメリカ的な少女の成長、イニシエーション・ストーリー。沈んだトーンと象徴的事物の描写が良い。アメリカ南部の沈滞した雰囲気と、気だるい夏が実感できる。その中で生と死が淡々と進行し、少女はそれに逆らおうとする。