青蓮院の獅子 (時代小説文庫 (94))

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829110942

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  • 中川宮と呼んだ方が通りがいいかも知れない。伏見宮邦家親王第四王子として生を受け、仏門に入り青蓮院門跡となったため青蓮院宮とも呼ばれる。法諱は尊融法親王。文久2年には国事掛首座として朝政に参画、翌年には還俗して中川宮の宮号を賜った。本書はこの中川宮を主人公として、幕末動乱期の混沌とした京都の政情を描く。
    孝明天皇は「朕を佐(たす)くる尋常連枝の比に非ず」と勅語する程に中川宮を厚く信頼し、宮も叡慮を奉じて朝幕の連携により内外の難局を乗り切る方途を模索した。そのため、八月十八日の政変を主導し長州藩と尊攘派公卿を京都から駆逐するが、二度に亘る長州征伐の途次で将軍家茂が病没、各戦線での敗北により長州征伐は頓挫し、幕府の威信は地に堕ちる。それに伴い岩倉具視ら尊攘派が蠢動を開始、孝明天皇の不審死によって後ろ盾を失った中川宮はまさに岩倉に「寝首をかかれる」形となり、歴史の表舞台から姿を消すのである。
    中川宮と岩倉との確執は岩倉の勝利に終わるが、後に岩倉は中川宮に密かに面会しこれまでの非礼を詫びたという。宮の至誠は政敵だった岩倉でさえ認めざるを得ず、宮を不遇の身に追いやったことに忸怩たる思いを抱いていたのであろう。宮に加担した隠密おちよの次の言葉が全てを物語っている。
    「無念がったって、どうなるものじゃないよ。宮様が追いつめられたのは、負けたからじゃないのさ。所詮は、岩倉との育ちのちがい。いってみりゃあ、悪くどくなれないお人柄のせいなんだ」

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