こころの座標軸

著者 :
  • 婦人之友社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829205013

感想・レビュー・書評

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  • 『一億の地雷 ひとりの私』に続き…


    老齢の著者が若者にメッセージを送る形式は司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ』を彷彿とさせた。

    この前に読んだ『一億の地雷 ひとりの私』(1996年)は独白っぽさが際立っていたが、こちらは全体を通して易しい言葉で綴られており、メッセージ性もまだ強い。『一億の…』で見られたあの凄みも幾分か和らいではいるが、やはり行動派の芯は揺らいでいなかった。

    あとは著者ご自身がカトリックで聖書学を専攻されていた事もあり、作中は聖書関連の話が多かった。「キリスト教の話か…」と小首を傾げた感じのレビューもちらほらあって、そこは少しご容赦いただきたかったかな笑

    今回は「コモンセンス」の話が心に足跡を残した。一般的に「コモンセンス」は【常識】の意味やけど、著者曰く「(知識ではなく)心で感じて知っていること」だという。
    道徳的に、人が人であるために大事なこと。
    祖父である犬養毅暗殺のあった5.15事件のあと、あろうことか首謀者らは減刑に処せられ、逆に一家は世間的に煙たがられた。そのさなか、自宅周りにいた私服警官の検問にも臆することなく何度も一家を助けに訪問した中国人がいらっしゃったという。「犬養首相は自分達に良くしてくれたから」と。

    中国人の話に関しては本書ではなく『一億の…』で知った。しかし同じ考えを強いられていた時代、今よりもっと閉塞的な時代に命をかけたアクションを取られた彼がまさにその「コモンセンス」を持ち合わせていたんだなと今になって思っている。

    命をかけるで言うと、著者のように兵士でもカメラマンでもないのに銃弾が飛び交う戦場に出向くようなアクションにはやっぱり腰がひける。もうこの時点で足元にも及んでいない。大小さまざまなアクションに対する失敗にもいちいちすくみ上がっている。自分は彼女の言う口先だけの平和主義者なんだと再認識するのが関の山だった。

    『21世紀に生きる君たちへ』を受けて、友人の一人は「作家さんからいただく手紙みたいで素敵やね」と言っていた。本書を同じように例えるならば、それは間違いなく戒めの手紙になるだろう…

  • 私はキリスト教信者ではないが、本書は人間の生きる原点を示してくれているように感じた。宗教を争い事ととらえずに、すべての宗教の基本となるところは同じと考えている。▼難民救済に尽力した著者は、平和とは何かを考え、和の基礎づくりは、一人ひとりが「良心のささやき」に心して聞き入ることがスタートだと説く。その「種」を芽吹かせて大きくするのは家庭であり、主役は父母。保育所では遅すぎると言う。▼一方では難民・貧民の児童に対する教育支援の重要性も説き、自ら活動している。こころを支えてくれるよい本だと思う。▼追記:良心というものも正義と同様に、各人各様であるとも解釈できる。良心が人間に本質的に備わったのもか、教育等による後天的なものか、疑問が残る。

  • 犬養道子氏(1921~2017 享年96)の「こころの座標軸」、2006.4発行です。一読しましたが、精読しないと著者の思い迄は到達できない気がしました。深い意味のある作品だと思います。日本語の常識、英語ではコモンセンス、常識と言うと「総理大臣の発言は常識の域を越えていない」とか「あの人はいつも常識的なことしか言わない」とか、つまらないことという意味で使われがちですが、コモンセンスは違うと。人は教えられなくても、誰でも共通して知っていることがある。知識や理屈ではなく感じて知っている。それがコモンセンスと!

  • 澄んだ心とはこの方のこと。
    心の持ち方、生き方のお手本にしたいと思います。

  • キリスト者としての彼女の多くの書籍は、私には少し読みにくかった。
     宗教者の書くものは、あるところまでは理解できても、その先はどうにもついていけないフェーズになる場合が多い。読者(私)は理解不能になってくるのに、著者は盛り上がって更に先に行く・・というような乖離が、この本にはない。
    難民救済に向かう彼女の真摯な態度の根底なす宗教観が、うらやましい。
     「共に歩む」ということの歓びを教えられた。
    レイチェル・・カーソンを「静かな警告者」として紹介する文書は秀逸。

  • 犬養道子さんの本を初めて読んだ。犬養毅の孫娘にして80代も半ばになる著者の、感性のみずみずしさに驚ろかされる本。世界各地の経験とカトリック信仰者としての敬虔が、深い教養の中できわめて自然な形に溶け合っている。ドクマティークな偏狭さとは無縁ながら、聖書が持つメッセージの(国際情勢から個々人に至る)現代世界に対する妥当性が心に染み入る。このような文章が心から書けるような人間になりたいものだ。

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著者プロフィール

1921-2017。評論家、エッセイスト、難民支援活動家。著書に、『聖書を旅する』(全10巻)、『お嬢さん放浪記』『こころの座標軸』など。難民支援活動の一環に〈犬養道子基金〉を創設した。

「2021年 『やさしい新約聖書物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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