お医者さんにガーベラ (プラチナ文庫)

著者 :
  • フランス書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784829624623

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹かれ、裏のあらすじを読んですぐにレジに持って行ったのに、読了したのはそれから一か月以上も経ってから。
    そんな自分の頭を後ろからはたきたい衝動に駆られた小説でした。
    買った後すぐに読め、と。



    自他共に厳しい。そして自分の行動が間違っていないと信じている甫。
    それは自分にも厳しい人だから取る行動なのかもしれないなと。
    上司の勧めで、整形外科からリハビリ科に転科した甫は、業務改革の改良や改善をしていこうとし、それに対して療法士が不満を持っていくが、結果的に業績が上がっているのだからいいだろうとつき通す。
    二、三年すれば昇進できるという理由もあり、打算的な部分が動いていたとはいえ、根が真面目な分仕事や療法士達を集めての勉強会と、真面目に力を注ぐけれど、周りはそれを快く思っていなく、結果的に孤立してしまう。
    そんな時、一人だけついてくる理学療法士の知彦がいた。
    それでも、弟の恋人である知彦は愛しい弟の遥を奪った男であり、そう思うと素直になれなく、きつくあたってしまう。
    仕事面でも孤立し、そしてずっと自分が面倒をみていた弟の遥が自分の手を離し、自分が改めて一人だと痛感する。

    いつもは流せる事も流せなくなり泥酔した甫は、投げやりな気分のまま路上で寝てしまう。
    そんな時に手を差しのべたのは、病院に花を配達にしにくる花屋の九条だった。
    放っておいて欲しいと思っているのに、甲斐がいしく世話を焼く相手に戸惑いつつ、借りは作りたくないと甫は伝え金をだそうとすれば、金の代わりにお願いがあると返される。


    一つ目は自分の名前を覚える事。
    そしてもう一つは。



    ==========================================

    「あなたを慰めて、甘やかす権利を僕にください」
    「……何?」
    「へこんでいるあなたを慰めて、寂しがっているあなたを甘やかす権利を、僕に。それで、あなたの仰る『借り』は帳消しにします。いいですか?」

    ==========================================


    そんな彼を言葉通りに甘やかし、そして九条は甫をガーベラの花に例える。

    華やかで、堂々としていて。
    そして可愛い花。


    少しだけほっとしたのもつかの間、職場に出勤した甫を待っていたのは、甫の指導に不満を感じている療法士達からの反抗だった。
    一週間に一度の勉強会を放棄され、冷戦状態になる。
    身を引こうと整形外科に向かい、リハビリ科へと進めてくれた上司を訪ねるが、そこで同僚の陰口や自分を厄介払いにしていたという上司の本音にショックを受け、今まで築いてきたものがすべて崩れていく感覚を味わう甫。
    そして、弟にも非難され、完璧に足場を崩し、居場所を見失ってしまう。




    ==========================================

     生まれて初めて、心が壊れそうになるというのがどんな状態なのかを己の身で思い知らされ、自分が世界のすべてから拒絶されたような気分で、甫はしばらくそのまま、立ち上がれずにいた……。

    ==========================================

    ……ここでもう涙腺が崩壊。







    自分が絶対だと信じていたものが砕かれるというのは、きっと人生観すら見失わせるんだろう。
    大切な存在に裏切られ、尊敬ていた存在に失望し。
    ……それでも、信じていたかったという心が軋んでじくじくと痛む。


    九条を訪ねた後、彼が思いっきり甫を抱きしめて甘やかした時、そういった存在がいる事が素直に嬉しかった。
    心で、体で、全部を使って甫を包み込む九条。
    そんな彼が、すべてがうまくいきますようにと伝えた魔法の言葉があるけど、それは人と人の間を円滑にする潤滑剤でもあるだろう。誰だって、ちょっとした時にそうやって声を掛けられると、心があたたかくなると思うから。
    それを知らないのならば、これから知ればいい。分からないのなら、教えてもらえばいいんだと。

    だからといって、そう簡単に培ってきた性格が変わるわけはないだろうけど、少しずつ誰かと触れ合う事で良い方向に運ぶものもあるのかもなと考えたり。

    二十三歳にして達観している部分がある九条。「お花屋さんに救急箱」を読むとなんだか納得してしまう。
    好きな相手に合わせて生きてきた彼だからかもしれない。
    人を受け入れる事は、最初からその器が広いんじゃなくて、ゆっくりと自分で大きくしていくのかもね。
    きっとその間は辛かったり、それでも幸せだったり。傍にいる事で生まれる感情があって、それが九条の性格を形成していったのかも。



    環境や自分の大事な人の影響で、象られて今の自分があるんやろうね。
    なんて最後にはつらつらと考えてみたり。

  • 間違いなくBLです。
    苦手な方は回れ右。
    私はあんまり積極的に読むわけではないけど抵抗もないです。

    ひとまずこちらの続き(ボーナストラック?)になるものを先に読んでしまったので
    気になって出会いから読みたいと思って読みました。

    大野木先生はよくそれで生きてこれたな、とちょっと思っちゃったり…(´・ω・`)
    しかしよいタイミングで九条さんと関わりが持てましたね。
    ほっとひと安心です。
    素直じゃない大野木先生ですが、
    九条さんもなかなか癖のある人なので
    アンバランスのようで結構ぴったりくる気がします。
    続きの遥くん、深谷さんペアのお話も楽しみです(*´∀`)

  • これぞ、見事なツンデレ受け(笑)途中は痛いけれど、結果オーライ?弟って、無条件で兄の庇護を受けるくせに、自分は知らんぷりで旅立っていくんだよね。お兄ちゃんの気持ちも考えろよ、って思うわ。↑そんな私は末っ子だけど(笑)

  • 挿し絵がすきー黒沢要さん。
    つんつんしたコミュ障医師は
    ふしのセンセの作品でもう何度読んだろう。
    おれだけはカワイイとこ善いとこ知ってますからね、
    って家事能力高い攻めが懐ひらいて待ってくれてる
    って、夢か!
    花屋さんのガーベラ話や、リハビリ科の
    人間関係掌握の展開はなんか役に立つなーと
    思うけど、関係なかった。

  • 新刊が出たので再読、フラワーショップ店主・九条✕リハビリ科医師・甫。何となくほのぼのした雰囲気が印象にあった気がしてたんですが、甫がこんなに仕事場で孤立してたっけ!とほぼ内容を忘れ去っていた自分… おかげでまた楽しめましたが。ボロボロになって前にも後ろに進めなくなった甫が九条の所に行く場面では思わず涙が… 九条も年下だけど不器用な甫をしっかり包み込める大きな男で素敵です。

  • 登録するの忘れてた。好き。

  •  主人公はお医者さんの甫。
     彼は、自他共に厳しく、整形外科からポストに空きが出れば、戻してくれる、という約束でリハビリテーション科に出向することになった。
     当然、「期限付き」ということではあったけれど、完ぺき主義の甫は、手を抜くことはしなかった。
     今までの古い体制を改革し、新しい技術や機械を導入し、リハビリテーション科の重要度を格段にレベルアップさせたのだった。
     けれど、その甫の厳しさが他のスタッフの負担を大きくしているのもまた事実であり、一方では反感を買っていた。
     けれど、甫としては「結果を出している以上直接甫に文句を言ってくるやつはいないだろう」と思っていて、意に介してはいなかった。
     そんな甫にも、頭の痛い問題が一つあった。
     溺愛していた弟が、医大を中退し、パン屋を始め、あろうことか、自分の部下と恋仲である、というのである。
     そのことから視線を逸らすようにしていた甫だったが、いつまでも視線を逸らしているわけには行かず、渋々、弟の様子を見に行くことに。
     そこには、弟によりそう自分の部下の姿があり、そのことに大事に守ってきた弟の自立を感じ取った甫は、その足で行きつけのバーに行き、したたかに酔っ払う。
     そして行き倒れた甫を、介抱してくれたのは、病院に出入りもしている花屋の九条であった。

    「あなたを慰め、甘やかす権利をください」と優しく甫を介抱してくれる九条だったが……
     という話でした。

     うーんっと。
     とりあえず、弟の話を後に発行する予定なのであれば、こんなに弟カップルを前面押しにする必要があったのだろうか……? と頭を抱えてしまう。
     もうちょっと甫の人となりを説明して、病院の中での問題を前面に押し出してから、弟の問題……というようにした方が、物語としてはスムーズだったんじゃないんだろうか……? とちょっと疑問に思ってしまいました。
     どう考えても、この順番は不自然。
     最初から、弟の恋人を目の敵にしているところから始まって、弟の過去も具体的な思い出は何も語られず、「そんな程度で……」と思うようなことで、強かに酔っているところに花屋登場……では、さすがにご都合主義すぎるというか、設定ありきの、キャラクター後付感がすごいです。
     作者さんの中では物語が出来上がってるんだと思うんですが、ついてけないまま、物語が始まって終わった感じですねー。
     九条のキャラクターとか、甫に対する甘やかし方とか、すっごくほのぼのしてて好きなんですけど、そういうところがうまく活かしきれてないのが、本当にもったいないなあ……と思わされてしまいました。

     伏線なら伏線でもうちょっとひそませて欲しいし、そうでないなら、弟カップルを前面押しにしてもよかったと思うんですけどね……もったいないです。

  • 色々泣けてきたのはどうしてなんだろ?ヤバい、ちょっと受け様に同調しちゃったかも・・・

  • ひどいご都合主義(((^-^)))
    偶然に人に会いすぎ。
    登場人物に出くわしすぎ笑
    他にも、主人公に関する噂話耳にしたり、主人公の弟と部下が付きあっているなど。。

    ほんとにご都合主義で話が進む。

    ただ、文章力があるのと、舞台であるリハビリ科に関する内容がきちんと書かれているので読める。

    一番良い点はキャラクターの書きわけがうまいところ。

    イラストもいい。
    水彩画っぽいタッチの表紙も、この話に合っている。

  • 花屋×整形外科医
    懐の深い花屋。
    ちょっとあっさり問題解決かな。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2023年 『妖魔と下僕の契約条件 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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