- Amazon.co.jp ・本 (84ページ)
- / ISBN・EAN: 9784832913981
作品紹介・あらすじ
2億3千万年におよぶ歴史を多数の図や写真を使ってやさしく紹介。 オールカラー版!
太古の日本にはワニが棲んでいました。本書では,約2億5千万年前まで遡り,ワニの起源と繁栄を,時間軸に沿って紹介します。ワニの祖先が出現したペルム紀(約2億5千万年前)。この時代生きていたワニの祖先は陸上を闊歩し,さまざまな進化を遂げていました。恐竜はまだ地球上現れていなく,当時の陸はまさにワニの先祖の時代だったのです。ワニへの進化の道を選んだ動物たち,そして恐竜への進化の道を選んだ動物たち。その分岐点はどのようなものだったのか,環境がどのように左右したのかを解説します。約2億3千万年前,ワニが出現します。この時代は,恐竜類,哺乳類,カメ類など現在知られている動物たちが次々と現れました。当時の恐竜の体はまだ小さく,大型化したワニの祖先たちに生活圏を追いやられ,細々と暮らしていました。ワニと恐竜は生活圏を争いながら,共に進化の道を歩んでいった時代です。その後,状況は一変します。巨大化したワニたちは環境変化に耐えられず絶滅し,それに耐えることができた恐竜たちの時代がやってきます。大量絶滅を生き延びたワニたちは,陸上を離れ,水辺へと生活圏を変えます。白亜紀には体長12mを超える巨大ワニ,デイノスクスが登場し,恐竜をも襲ったことが知られています。ワニの繁栄は留まることなく,水辺を支配し続けます。約6,650万年前,小天体が地球に衝突し,約1億7千万年間続いた恐竜時代が終わりを告げます。しかし,水辺に棲んでいたワニたちは絶滅をまぬがれるのです。小天体衝突のときワニに何がおこったのか,なぜワニが生き延びることができたのか,謎が多くさまざまな説が出ています。それらの説を検証します。小天体衝突後,新生代という新しい時代がスタートを切ります。鳥類に姿を変えた恐竜たち,そして水辺の覇者であり続けるワニ。長い地球史のなかで,ワニの役割は何だったのか,そして恐竜との共存はあったのか,昔の日本に生息していたマチカネワニの絶滅は何を語りかけるのか。本書では,これらの疑問について,ワニの視点から見つめ直し,読者に考えてもらいたいと思います。本書は,ワニと恐竜の共存についての最新知識を得るためのガイドブックです。全国のワニや恐竜ファンの人々にとってとても興味深い内容が紹介されています
感想・レビュー・書評
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北海道大学出版会の絶版でオンライン中古市場では8倍〜20倍という強気な価格が付いているレアな書物だが、2時間かからず読めるので最寄の図書館で所蔵を検索して見つけるのがよい。日本を代表する恐竜博士である小林快次先生が執筆。ワニと恐竜の共通祖先から始まり、いかに多様化し進化していったかを現生ワニまで追う。まず爬虫類から、ワニと恐竜の共通祖先である動物を考えるが、これはヘタするとペルム紀まで遡る。その後、クルロタルシ類がワニ類へ、アヴェメタタルサリア類が恐竜類へ分岐していく。まずこの2種類が名前からしてややこしく、前者は偽鰐類だったり後者は鳥中足骨類と表記される場合もある。大量絶滅を越えた空白は歩行生に優れていた恐竜ではなくクルロタルシ類が支配することになる。多様化するのが早かったからと推測される。ラウイスクス類とティラノサウルス類は収斂進化で頭骨がそっくり。どちらも直立歩行で素人が骨格を見ても恐竜と見分けがつかないが、プロ相手でも過去の研究でワニ類と恐竜が混同されてしまうケースも多かった模様。そして三畳紀までにクルロタルシ類は絶滅し、恐竜が台頭することになるが原因は謎で、おそらくは生態系の変化。クルロタルシ類のうちワニ型類のみが生き残って命脈を継いでいく。その後の多様化は非常に面白く、植物食のものや、ゴンドワナには哺乳類のように多種の歯をもつものもいた。ローレンシアには小型哺乳類がいたからこれも収斂進化の模様。さらに海棲に適応したメトリオリンクスやダコサウルスはモササウルスそっくりでこれも収斂進化。現代型のワニ、正鰐類は白亜紀後期に出現し、姿を変えることなく今に至り、白亜紀の大量絶滅を乗り越えている。恐竜や大型の海棲爬虫類が絶滅し、ワニ形類が生き延びたかはまだまだ謎。このとき、完全陸棲のセベクスクスや、完全海棲のディロサウルスも生き延びている。ワニ類の方が代謝がゆっくりで食料が少なくて済んだからでは、と素人的に思ってみたり。
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