領土という病

  • 北海道大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832967922

作品紹介・あらすじ

今日の日本で領土・国境がブームとなるとき、世を賑わす議論の多くは、一方的な思い込みや幻想を振りまいているにすぎない……。本書は、まるで「病」に罹患したような日本の言論状況を乗り越えるべく、北方領土、竹島、尖閣という領土問題を、国際政治の動向やローカルな国境地域の実情をつぶさに見据えつつ討議したシンポジウム、対談の記録。国際関係論、地域研究、政治地理学、政治思想、歴史学など、様々な知見から領土問題に取り組む研究者と、領土問題を追うジャーナリストが集い、熱い議論を繰り広げる。「ボーダースタディーズ(境界研究・国境学)」の学際的・実践的展開を伝える一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 昔の職場の上司が編集された本。

  • 岩下さんは北海道大学の先生で、境界問題、領土問題を専門にし、これまでも『北方領土問題4でも0でも、2でもなく』や『北方領土・竹島・尖閣、これが解決策』などという問題提起の本を著し「国賊」などと罵られてきたという。本書で出てくる人たちの中にも「売国奴」「国賊」と言われてきた人は少なくない。いったい、このように人に簡単にレッテルを貼るというのは単細胞の人間、思考のストップした人間のやることで、こうした人たちとは議論もできないのかと悲しい気持ちになる。領土というのは国家や主権といった概念に伴うもので、領土として区切られる以前に「生活圏」としての領域、境域というものがあった。岩下さんや本書に登場する岡田充さんはそうしたことを早くから強調してきた人だ。本書にはまた、北海道にあって地域の取材と報道をながくやってきた北海道新聞などの新聞社の記者の人たちの報告もある。いわば研究者とジャーナリストのコラボが行われているのである。その中で、ジャーナリストが組織に属するがゆえの制約も語られる。新聞で報道される以外に行間を読まなくてはならないということである。知床は世界遺産になっているが、ウルップ島を含めての世界遺産申請というものもあるそうだ。こういう発想は地域ならではのものだ。また、竹島は日本がそれを韓国領と認めたとたん韓国の漁民には多くの漁業を失うことになるとか、沖縄もまた領土問題の一つであるなど、はっとさせられる発言も多い。元朝日新聞主筆の若宮さんが、安倍政権の誕生には、韓国や中国もずいぶん追い風を送ったという、ソウル大での発言はもっともだ。習近平や朴クネ大統領は安部政権を標的にしているのだろうが、かれらが日本に対し強くでればでるほど、日本国民の両国に対するイメージは悪くなるということをもっと自覚すべきだ。神戸大の土佐さんのいう「ジオボディ」という考えも面白い。これは係争の地を含めた領土の地図をあたかも自分の体のように感じ、領土と聞いた途端に思考停止に陥るような現象を言うらしい。そこで土佐さんは日本列島を中国の側から見た地図をあげているが(77p)、これを見ると,日本はなんと大陸とつながっていることか、日本列島は決して孤立していないということを思い知らされる。

  • ボーダースタディーズ(境界研究・国境学)

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著者プロフィール

所  属:北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授
専門分野:ボーダースタディーズ、北東アジア地域研究

「2021年 『北東アジアの地政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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