動物地理の自然史―分布と多様性の進化学

  • 北海道大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832981010

作品紹介・あらすじ

本書は,5部15+2章から構成されている。序章において,これまでの日本列島にかかわる動物地理学を概観した。第Ⅰ部では,分子系統解析という新しい手法を用いて,従来の動物分布境界線を再考している。第Ⅱ部では,日本固有種や南西諸島の動物集団を対象にして,地理的変異と種分化や集団分化との関係そして宿主と寄生虫との生物地理的関係が議論されている。第Ⅲ部では,考古遺跡から出土する動物骨について形態的特徴や分子系統からみた地域変異の変遷,さらにそこから推定される家畜化の歴史を論じている。第Ⅳ部では,山脈や砂漠が生みだす局地的ならびに大陸間におよぶ動物地理が語られている。そして,第Ⅴ部では飛翔能力を獲得した動物の動物地理とその進化の過程が考察されている。終章においては,次の新しい展開への橋渡しとして,総合科学としての動物地理学の展望について語った。
動物地理学が古典的な学問だと誤解している研究者とその卵たちに贈る必読の書。

感想・レビュー・書評

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  • 入門書としては、面白い。
    最後に、地方博物館の意義も明示されている。

  • 北海道大学図書刊行会の自然史シリーズの一冊.主に日本および東アジアが主題の動物地理学を題材にした論考集である.最近の分子遺伝学的な分析と,系統分岐に関する理解や技術の進展を背景にこれまでの通説が覆っている部分が結構あって堅い印象より遙かに面白い.
    爬虫類両生類の研究からは日本の南西諸島の成り立ちがかいま見える.(この辺は地学的にはまだ定説がないこともあり興味深い)

    哺乳類の研究からはニホンジカの分析が特に面白かった.そもそもニホンジカというのは非常に分布の広い種であり,エゾジカやヤクシカなどすべてこの中の亜種なのだそうである.分子的に調べるととホンシュウジカは実は東西で大きく異なっており(東日本のものはむしろエゾジカに近縁)いったん津軽海峡と対馬海峡ができたあとに氷結した海を北海道から渡ってきたという仮説が展開されている.

    そのほかの主な項目としては,ヒグマについては分子的な証拠から北海道に3派にわかれて渡来してきている様子が図示されている.トガリネズミは大きく分けて2つのグループが互いに競争しながら広がっている様子と津軽海峡の成立と大陸からの移入の様子が描かれる.ホストとパラサイトの系統地理も齧歯類を題材に解説がある.イノシシについては考古学的な遺物から探られる.分子をいうツールを手にして意気盛んな研究者の様子がうかがえ,今ホットな分野という勢いを感じさせる.

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著者プロフィール

酪農学園大学獣医学群教授,同大野生動物医学センター教授

「2021年 『野生動物医学への挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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