2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!
- プレジデント社 (2017年8月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833422406
感想・レビュー・書評
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今年(2018)の初めに読んでいた本ですが、部屋の片隅に、私にレビューを書かれることをずっと待っていたような本です。テーマは、今年になって興味を持ち始めた、私が社会人を引退することに世の中はどのようになっているのか、というものです。
世の中では、定年60歳は過去の話、65歳ならず75歳まで、更には生涯(死ぬまで)現役!ということまで言われていますが、その一方で、企業側はしっかりと人材不足になったときの準備も着々としていると感じます。
この本では、ジャックアタリ氏による、2030年までの変化を予測した本です。残りの社会人生活を悔いなく送れるように、自分らしさをいかに表現できるかを考えつつ日々を過ごしたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・世界人口に占めるインターネット利用者の割合は、1996年の1.3%から、2016年の49.2%へ増加、世界人口74億人のうち、23億人がSNSを積極的に利用している(p25)
・宿泊先を共有する、エアビーアンドビー社は年間換算で1.5億人の宿泊を提供する、これは高級ホテルチェーンヒルトンの宿泊者の延べ人数1.27億人を上回る。ウーバー社の時価総額は、デルタ・アメリカン・ユナイテッド航空の価値を上回っている(p32)
・世界中の外国の軍事基地の95%はアメリカ軍のもの、世界160か国に800の軍事基地に駐留している(p37)
・世界の紛争のほとんどは、世界人口のおよそ6分の1が暮らす、マリからパキスタンの地域で起きている、戦死する兵士の数を年間人口10万人当たりで表すと、第二次世界大戦中は300人、朝鮮戦争22人、ベトナム戦争9人、イランイラク戦争5人、2011年以降は0.3(p47)
・難民のおよそ86%は途上国が受け入れている、トルコ・パキスタン・レバノン・イラン・エチオピア・ヨルダン・ケニア・チャド・ウガンダ、先進国が受け入れた難民の数は160万人(p52)
・都市部で暮らす人口の80%は、WHOの定める環境基準を超えた大気汚染にさらされている、途上国・中進国の人口10万人以上の都市の98%では大気汚染に関する基準が守られていない(p53)
・海洋の温暖化により、グリーンランドの氷床の年間平均減少率は、1992-2001には34Gt(10億トン)だったが、2002-2011年には、215Gtと急増した、これにより海面上昇(1.7ミリから3.2ミリ)も起きている(p55)
・農業に関する懸念材料として、農民たちは種子を毎年購入せざるを得なくなり、種子を交換することもできない、種子市場は、モンサントーバイエル、デュポン、シンジェンタによる寡占状態(p59)
・先進国上位25か国の世帯の65%(5.4~5.8億人)は、2005-2014年にかけて収入が横ばい、減少した、中産階級が貧困化している(p62)
・2011年以降、世界中のGDPは20%増加したが、国際貿易は停滞した、保護貿易障壁はいたるところにある(p77)
・アメリカの公的年金システムを維持するには、3.4兆ドル足りない、将来的にバランスさせるには、州と都市の負担割合を現在の歳入の7.3%から、17.5%まで引き上げる必要がある。だがこれは無理、シカゴ・ヒューストン・ダラス、イリノイ州、オハイオ州はすでに破たん寸前である(p79)
・世界中の人々の平均寿命は横並びになるだろう、2030年、人類の3分の2は都市部で暮らす。1000万人以上の人口を持つ巨大都市の数は、41になる、都市化したから農業生産性は向上する(p112)
・2025年以降、コンピュータは1秒間に、2.88x1017回の計算をする、人間の脳は同じ時間内に、10x1017回でありその差は3.5倍しかない。予測モデルは効率かつ詳細になり、知識および医療分野は次第に自動化される、2030年には1500億個のものが互いに、そして数十億人の人々とインターネットにより接続される(p115)
・3Dプリンタが産業界、一般家庭に浸透するだろう、これにより一部の製造現場は先進国に回帰、一般家庭ではカスタマイズしたモノが作られる(p115)
・拡張現実や仮想現実の道具を利用すれば、ホログラフィー対応のスマホで通話中の相手を3Dで眺められる、今後15年間に進化する視線追跡と顔追跡のテクノロジーにより、現実と仮想の相互作用が促される。スクリーンを利用せずに拡大した現実に、我々のデジタルデータを投影することが可能になる、現実と仮想が行動および思考において混ざり合う(p116)
・2030年、セマンティック・ウェブにより、検索エンジンと自然言語で会話できるようになる、人工知能とセマンティック・ウェブを組み合わせると、自動翻訳機となり、これがあれば世界中の専門家の見解を知ることができるようになり、国境はいずれ廃止される(p117)
・今から2030年までに、KWh当たり150ドルのバッテリーが開発されるので、ハイブリッド車が急速に普及する。航続距離が内燃機関車(600キロ)と同様になるだろう(p123)
・共有経済の5つの主要分野(金融、求人情報、宿泊、自動車共有、音楽・動画のストリーミング)の市場規模は2016-2030において、30倍になるだろう(p127)
2018年7月1日作成詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界を取り巻く現状から2030に向かって、次の大戦が起きかねないと予想。これの裏付け的な文章が9割がた続くのが読んでいて辛い。この手の本によくある参考文献の多さも…
ホラーストーリーからの主題としては、憤懣が充満して行く世界において、「利他の精神」がキーワードと説いている。
トルストイは「人生にはただひとつだけ疑いのない幸福がある ~ 人のために生きる事である」と言っているし、共通の部分は精神性としてはあるのだろう。
本の中では、「集団の活動に大きな変化が必要な際には、すべて必ず個人が変わることから始まる。」であったり、「自分自身になる」というキーワードも。これは「自他共の幸福」という事なのだろう。
著者は、アルジェリア生まれのジャックアタリ氏。フランスのご意見番といったところか?
いくつかの「〜せよ」説を挙げているのだが、彼の説を実現させるのは政治の範疇では無いし(フランス向けの部分は政治に対してかな)、利益追求の組織でもない。個人が変わるしか無いと言いながらも、多くの人を糾合し団結させ大戦を回避させる力を持つものはなんなのかについての考察がほぼなくて、「~せよ」って言うのは、個人的には、ちと共感しにくかった。