オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833423991

感想・レビュー・書評

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  • オードリー・タンは台湾の行政院(日本の内閣)の閣僚のひとりであるデジタル担当の政務委員。

    初の自著となる本書は台湾と日本をオンラインで結んでデスカッションしながら作ったもの。
    8歳からプログラミングの独習を始めて30年間デジタルの世界に関わってきて、テクノロジーが世の中をどのように変えるのか考えを述べたもの。


    ○AIの目的はあくまで人間の補佐。最終的な調整は人間が行わなくてはならず、責任は人間が負う。民主主義のシステムと同じ。
    ○私とコンピューターの関係はスティーブ・ジョブズの言った「精神的な自転車(Bicycle of Mind)」ここで重要なのはツールではなく、あなたがどこへ行き、何をしたか。
    ○重要なのはいかにしてAIに人間の補佐をさせて次世代によりよい環境を残す方策を考えているか。
    ○AIがいくら進化しても人間にしかできない仕事がある。
    ○公共の価値を生み出すことに喜びを感じるように自分を再定義すると、同じことを行っていても、機械が十倍の結果を出せば十倍の公共価値が生まれたと思い、幸せを感じられる。
    ○デジタル技術は「誰もが使うことができる」ということが重要→それが社会のイノベーションにつながる。
    ○年配者は若者から「今のデジタル社会と、どうコミュニケーションをとっていけばいいか」を学び若者は年配者の知恵や経験を学ぶ。
    ○”Taiwan Can Help”→「台湾がコロナに関して解決できた問題を国際社会にシェアしたい」デジタル担当委員としての役割の一つは、人々がお互いに語り合える場をオンラインで提供すること。
    ○プラスティック製ストローを全面的に禁止にしたのは、女子高生の提案だった。私たちのプラットホームでは「二カ月以内に五千人が賛同した場合には必ず政府が政策に反映する」
    ○インターネットは間接民主主義の弱点を克服できる重要なツールとなり得る→そこにデジタル民主主義の未来の可能性を見ている。
    ○わずかな部分、あるいは少人数のためのイノベーションによって、弱者を犠牲にしてはならない。
    ○「AIによって人間の仕事が奪われる」というのは、やや誇張した言い方である→「AIを導入すれば人間の職業が消える」ということはあり得ない。
    ある仕事のうち「重複性が高い部分についてはAIや機械に任せる」というスタイルに変わるだけ。
    イノベーションを行えば行うほど、人間の仕事はクリエイティブになっていく。
    ○子どもたちにイノベーションのパートナーになって欲しい→必要なのは「スキル」ではなく「素養」。
    ○重要視しているプログラミング思考とは、純粋なプログラミングを書くための能力や思考ではない→「デザイン思考」「アート思考」と言い換えることができる。
    ○デジタル社会で求められる三つの素養「自発性」「相互理解」「共好」
    ○デジタルの素養を身に付けるには何が必要か→「多くの人が共通して関心を持つ特定のテーマを見つけ、そこにある問題をどうすれば解決できるのか一緒に考えてみる」
    ○アート思考を重視するのは既存の可能性にとらわれないようにするため。
    サイエンステクノロジーしか学んでいなければ学んだ内容は誰もが同じになってしまう。
    また文才があればあるほどプログラムがうまく書ける。
    ○自分が行くことが可能な範囲内で旅をし、その中からできる限り自分の文化やこれまでの人生経験とは異なるような友人をみつけ、話を聞く。
    ○選挙権を持たない15、16歳ぐらいの若者も重要。
    未来は若者からやってくる。

  • 良書。大陸とは対極にあるもうひとつの中国である台湾からの強烈なメッセージでした。

    ・だれも、置いていかない
    ・デジタルが高齢者に使いにくいのなら、使いやすいように、改良すればいい
    ・5Gは地方から導入する。なぜなら、そうでないと公平ではないから
    ・台湾の教育の基礎は、「自発性」「相互理解」「共同作業」

    本書を日本向けに用意いただいたことが「あとがき」にあり、読んでいて、恥ずかしくなりました。

    李登輝や、蔡英文なども紹介しながら、台湾の現状のIT政策などが、タン氏の理念とともに描かれた書でした。

  • 前からインタビューなどを読んでいて気になる存在ではあったけど、著作を読んで改めて考え方が素敵だと感じた。
    高齢者等のデシタル弱者も置いてけぼりにしない世の中を、AIを活用して進めていく事が大事。その為に国民一人一人の声を聞いていく場を設けて、社会をAIを使ってより良いものにしていく。
    未来が明るく希望のあるものに感じて、少し嬉しかなった。
    AIと聞くと、仕事を奪われる等悪い部分も取り沙汰されているけれど、AIと人間の関係はドラえもんとのび太くんみたいなものと事。ドラえもんはのび太くんのことを道具を使ってサポートしてくれるけど、のび太くんの人生をコントロールしたりはしないと。だからAIとどう向き合っていくかは人間次第。なるほど。

  • コロナ禍で注目されたデジタル担当政務委員のオードリー・タンの語る、台湾のコロナ対策、デジタルを活かした社会づくりのビジョン・民主主義・ソーシャルイノベーション・教育について。

    感想
    ・AIが人間社会にもたらす負の影響に着目した本も読んだけど、オードリー・タンの語るAIのビジョンはあくまで優しい。誰もが社会参加しやすい社会(例えば軽度認知症の人に優しい都市設計)を作るためのインフラとして、AIを役立てようといった発想。現実的には良い側面と悪い側面は同時にやってくるんじゃないかなとは思うけど、ポジティブな見解に触れられたのはとても良かった。それを見失ったままAIの波に飲み込まれると、ただの厄災になりかねないから。
    ・日仏比較の中で、デモの成功体験を持っているか否かでデモ・スト文化の有無が変わりそう、という感覚を持っていたんだけど、台湾もデモの成功体験を持っている地域だったんだ。結果、官民対話が活発な文化があり、それを支えるインフラ(デジタル)が整備されているのは純粋に羨ましい。日本の(オリンピックでもまざまざと見せつけられた)長老文化と、そして硬直的で疲弊した巨大な行政組織とを考えると、オードリー・タンのような次世代の感覚を持った閣僚が生まれること自体、素晴らしいと思う。日本のことを考えると重苦しい気持ちになるけど、諦めずに社会参加しないといけないんだろうな。そして、自分より若い世代の社会参加の支援も。

  • 台湾デジタル担当政務官のオードリー・タン氏のインタビューを基に構成された一冊。
    オードリー氏はあくまでも社会問題の解決や公共の利益向上のための手段の一つとしてテクノロジーを捉えており、その柔軟な考え方に感銘を受けた。
    またオードリー氏を起用した公平性、透明性の高く、公益性を重視したオープンガバメントな台湾政府だからこそコロナ禍に柔軟に迅速に対応できたんだろうと思う。

    日本の政権も台湾から見習う点が多々あると思うが、クローズドで極一部が儲けるための中抜き事業が目立つからなんとも…

  • 台湾、メッチャ良い国だなぁ…としみじみ思う1冊。
    「民主主義とは何か?」を考え抜いて実践していて、凝り固まったルール主義や多数決に囚われず、進取の精神で社会課題を解決していっている。
    オードリー・タンという人物は台湾という国を愛していて、同時に台湾という国を体現している。優秀な若い人材が国を離れてしまう日本とどう違うのか…。そんな課題認識を持ちながら、本書と向き合いました。

    本著でまず感じたのは、「インクルージョン」の素晴らしさ。
    本著では同氏の生い立ちにも触れられているのですが、病気を抱えながらも、両親が才能を伸ばすために心を砕き、14歳で中学校を中退し、会社を設立して…という流れは、もちろん一筋縄ではいかなかったんだと思いますが、ご両親だけでなく校長先生等、周囲の理解にも支えられて実現したんだろうなと。
    日本だったらどうなんだろう。型にはめられて逆にできない子扱いされていたおそれすらあるのでは…。仮にそう育ったとして、育った国へ愛情を持てるようになるのか。(まぁ仮定の話でここまでする必要はないんですが)
    また、本著で取り上げられていた「ピンクのマスク」の話からは、何かが起きた時に、それに対して適切に対処する力が台湾の社会にあることを感じました。

    また、デジタル担当政務委員(閣僚)ながら「IT慣れしていない高齢者に、使い慣れた現金等を手放すよう迫るのはナンセンス」して誰も置き去りにしない姿勢を堅持するのは、現実を見据えながら、お年寄りに無理にIT利用を迫るでもない、優しく民主主義的な進め方だと感じました。
    青年と高齢者が一緒にイノベーションを起こす「青銀共創」という試みに触れられていましたが、コレ具体的にどうやってるんだろう…日本でもマネできるのでは?と思いました。

    こういったコトを著者以外の人間が言っていたら、「また理想論を…」となったのかもしれませんが、実際に社会の課題を解決してきた他ならぬオードリー・タンが言っているのだから、IT化が遅れに遅れている日本も奮起しないといけないところなんだと思います。

    あと、本著で印象に残ったフレーズで「自分の精神が健全で安定していれば、自然とスマートで礼儀正しい人間になれる」というのが。。
    そうありたいものです。まだできてないですが…(笑

    ちなみに、ちょっと検索していたら、著者のお母様が『成長戦争』という手記を出されているそうで。こちらもぜひ読んでみたいと思いました。
    https://forbesjapan.com/articles/detail/44671/1/1/1

  • 以前、NHKの番組でオードリー・タンさんと落合陽一さんが対談していたのを観て、関心を持ちました。
    まず本自体は、翻訳とは思えないくらい読みやすいのでご安心を。
    日本人のいわゆる仕事術的な本は時短や効率化、稼ぐことや健康管理の話題に終始する感じがしますが、オードリー・タンの目指すところは全く違うのだな…と。自分が得た知識や技術を共有して世の中を効率化、より良くすることが生き方になっています。だからといって、自分の人生を慈善活動のために…という動機でもないところが、この人が比類のないタイプのリーダーで、世界で注目されることになった理由なのかな、と感じました。
    オードリー・タンの圧倒的な教養を感じさせる一冊です。
    「GungHo」という言葉がネイティブアメリカンの「共同で仕事をする」という意味だと、この本で初めて知りましたー。

  • 33歳で引退し、公益のために生きているという。トランスジェンダーで高IQ、中学中退などのキーワードで認識されがちなオードリータン。その心根は純粋に尊敬に値する。素晴らしい。

    本著は日本で取り上げられるオードリータンの著作と似通っていてあまり目新しいことが無い。オードリータンのポリシーや考え方を述べている本であり、著作が変わろうと、ポリシーや経験譚が大きく変わる事はないからだ。

    それでも改めて読むことでの気付きや共感があった。例えば、こんな表現。「AIと人間の関係はドラえもんとのび太くん」本当に忠実な表現かは置いておいて、このような例えはオードリー独特。来たるシンギュラリティをドラえもんの世界に置き換え、しばし行間から夢想へトリップする。

    柄谷行人の交換モデルXの考察も興味深い。交換と言うことを考える時、縦と横に軸を取る。片方は知り合いと交換するか見知らぬ人と交換するかという方向性。もう一つは交換の中で見返りの関係になるかどうか。知り合いで見返りを求めないのは家族関係。見知らぬ人で見返りを求めるのは市場関係。知り合いで見返りを求めるのは就労関係、政治関係。交換モデルXは、見知らぬ人で見返りを求めない関係の事だ。

    オードリータンは、これを知識の交換のようなモデルとして想定。知識を誰かとシェアしたからといってその知識が失われるわけではない。オードリーらしい、と思う。私なら単に募金とか宗教、慈善活動を当て嵌めてしまう。オードリーのシェアには、テクノロジーの裏付けがある。

    恐らくこの考えが根源となり、オードリーの思考は発展する。自らの利益にならぬようなお節介こそ民主主義では重要。交差性というアイデンティティの差による抑圧を理解する枠組み。圏論という異なるアプローチが共通解に辿り着く数学理論。多様性を認め、差異による価値を損得感情無しにシェア出来れば、そうして到達する世界こそが理想だと考えているように見える。

    …そうした到達点の産物の一つに〝萌典“がある。オードリーはとてもキュートだ。

  • ズームバック落合で彼女を見てから気になっており、手にとってみた。プロマインクラフターの龍波しゅういちさんの活動を見ていても感じたが、プログラミング思考において重要なのはデザインやアートの思考であって、子育てする身としては日本で行われるプログラミングの授業でも、そういった視点を大切にして欲しいと思った。デジタルネイティブ世代の輝かしい未来を祈っています。

  • 昨今ダイバーシティ(多様性)という言葉が持て囃されひとり歩きしているのですが、その中には、多様なうちの1つの性質に属する人たちが、これまでの考えを否定するようなことも起こっています。台湾ではインクルージョンという保守的なありようも多様なありようも同様に認めていこうという考え方があります。これはわたしの考えでいうと「一般化」の考えに近いと思いますが、理科系であり性マイノリティである(氏は性別を「無」としている)というバックグラウンドから親和性があるのかもしれません。恐れ多いですが、勝手に親近感をいだきました。
    議論のさいに何を問題意識とすべきか、そして全体的な方向性は何かということを共有せず細かい批判に終始すると会議はあらぬ方向に行ってしまいますが、世界全体(特に政治の世界)もそのようなことが多いのではないでしょうか。氏は、持続可能な開発、イノベーション、インクルージョンを共有することから始めるのが良いのではないか、という世界観を展開しています。保守も革新もこの「大きな方向性」を大事に議論できるといいですね。

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著者プロフィール

台湾のデジタル担当政務委員(閣僚)、現役プログラマー。1981年4月18日台湾台北市生まれ。15歳で中学校を中退し、スタートアップ企業を設立。19歳の時にはシリコンバレーでソフトウエア会社を起業。2005年、トランスジェンダーであることを公表(現在は「無性別」)。アップルやBenQなどのコンサルタントに就任したのち、2016年10月より、蔡英文政権でデジタル担当の政務委員(無任所閣僚)として、35歳の史上最年少で行政院(内閣)に入閣。2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムや「ショートメッセージ実聯制」を構築、台湾の防疫対策に大きく貢献。デジタル民主主義の象徴として、世界にその存在を知られる。

「2022年 『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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