なぜ、セブンでバイトをすると3カ月で経営学を語れるのか? (プレジデントブックス PRESIDENT PLUS)

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  • プレジデント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (87ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833450393

感想・レビュー・書評

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  • 2012.09.05購入〜2012.10.01読了

    イトーヨーカドーからセブンイレブンを立ち上げた鈴木敏文氏と記者とのインタビュー形式で書かれた、セブンイレブンの経営哲学を学べる本。

    やや刺激的なタイトルですが、ある意味これは事実でした。セブンイレブンでは徹底的に現場の人間に裁量権を与える方針を貫いており、店舗経営にかかる殆どを店舗側で決めさせています。しかもそれは例えパートやバイトの人間に対しても同じで、彼らは経営者と同じ目線でお客様の立場に立って商品を見つめ、自らの判断で明日の仕入れを発注する権限が与えられているのです。


    これは販売業に限ったことではないと思いますが、私の経験上でも現場に裁量権が与えられているとそこに居るメンバーのモチベーションは高まり、ただ「やらされている」時に比べて明らかに現場が活性化されます。日本の教育は「性悪説」に基づいて構築されてきたので、下の者はあさましく、自由を与えると怠けるので、上の者の言うことをとにかく守り、自分たちが自ら考えて行動することを抑えるような教育を徹底してきました。このセオリーは当然そのまま日本の企業理念などにも持ち込まれていて、大抵の企業では現場から裁量を取り上げ、マニュアル化をすすめ、トップダウンで仕事をやらせています。会社が大きくなればなるほどこの傾向が高く、日本企業が軍隊のようだと揶揄される原因にもなっています。

    この「何もかも画一化することで品質の統一を図る」というアプローチは、物理的な製造業かつ大量生産を行うようなものでは通用するでしょう。これはかつて日本が高度成長期において製造業が爆発的に増えたとき、生産量が増えても質を落とさない為に、これまでの日本の教育や日本人の気質を考えて作られた素晴らしい経営方法でした。しかし今は製造の拠点の多くは海外に移され、日本国内で何かを大量生産するようなことは稀であり、むしろお客様と直接相対し、移ろいゆくユーザーニーズを的確かつ迅速に掴む必要がある業務形態をもつ産業が大半を占めています。そして、モノが飽和状態にある日本では、単に「品質が良い」というだけではお金を落とさなくなってしまったのです。

    この部分に着目し、脱マニュアル、現場への権限委譲などを推し進め、地域や世代や季節やなどによって全く異なるユーザーニーズを本部の了承を経ることなく全て店側でこなせるようにしたのがセブンイレブンです。またマーケティングを数字だけで見ることはせず、数が売れた商品をそのまま仕入れるのではなく、売れたものや売れなかったものには何の理由があるのかを考え、仮説を立て、それを改善するための検証を行うという一連の行動をすべて店側の判断で行えるようにしているのです。しかもバイトにも社員と同様の発注権限が与えられているので、例えバイトであっても販売データを見つめ、世の中の動向を感じ、明日のユーザーニーズを予測し、実際に発注し、販売データを得る、という一連の流れを経験できるので、必然的に経営感覚が身についてきます。これがこの刺激的なタイトルの由来になります。

    セブンイレブンも立ち上げ当初は全く上手くいかなかったそうです。いまのセブンイレブンの成功があるのは、この仮説と検証を商品の発注だけではなく社内のあらゆることに適用し続けててきた結果がもたらしたものと言えるでしょう。鈴木氏の考える本当の意味での現場主義は、我々のの業界においてもとても大切なことだと思いました。



    ●脱モノマネ思考(14ページ)
    一度モノマネをすると常に相手の動向が気になって、進む道が制限され、差別化出来ないまま、やがて単純な価格競争に巻き込まれる。
    日本はモノ余り時代で消費は飽和状態。今の日本は柳の下にドジョウが一匹いるかいないかの時代。どこにドジョウがいるかは自分で探す。社会が豊かになればなるほど自己差別化が求められる。

    ●市場を輪切りにする(34ページ)
    日本の消費は多様化などしていない。商品のライフサイクルが極端に短くなっただけで、一定の時間内で立体的にみると多様化のように見えるだけで、ある時点を捉えると特定の商品に人気が集中する画一化以外の何ものでもない。ある商品がブームになるとある一定量以上まで流行する勢いが凄まじく、その後急速に忘れさられて行くといった商品サイクルをもつ国は世界で日本しかない。日本だけが異常なくらいに画一化が起きている理由は所得格差や文明レベルの差が他の先進国にくらべてまだまだ少ないのがその理由の一つ。

    ●自己差別化と横並び(48ページ)
    人の消費行動には目的買いと衝動買いの二種類がある。マグロの解体ショーはいわゆる衝動買いになる。この衝動買いも以下の二つの矛盾した心理によって引き起こされる。
    【自己差別化】普通の売り場に並んでいる刺身は誰でも買えるが、目の前で魚を裁く実演販売の場にいて、新鮮な刺身を買うのは今そこにいる自分しかできないとあう、自分は他の人と違うのだという心理。
    【横並び】その場には大勢の観客がいて、販売が始まるとみんなが買い始めるので自分も買いたいという、人と同じでありたいという心理。
    消費が飽和した現代日本では衝動買いが主流になっている。顧客の心理に働きかけて、以下に衝動買いを起こさせるかという演出力が店には求められる。

    ●価格の心理学
    牛肉の例
    グラム¥700の一種類のみ→高いと感じて買わない
    グラム¥500と¥700と¥1000の3種類にする→真ん中の¥700を買う
    顧客は「価値」を買う。質の面から価値を比較出るような価格が設定されていることが大切。

  • わかりやすいし、納得も出来る。図解が丁寧。
    お金の話が苦手な人でもとっつきやすいムック本。

  • 社長が語る、セブンイレブン経営学
    http://www.amazon.co.jp/review/RRYOZMVE20UOC/ref=cm_cr_rdp_perm

  • みんなが反対することは成功する。みんなが賛成するものは失敗する。これは非常に心に残った格言です。しかし、バイトでそれが実践できるかは微妙。タイトルは明らかに過大広告だね。もうちょっと違うタイトルでもよかったと思います。
    バイトの話がほぼ出てこないし、鈴木氏の経営理念を話しているのにも関わらずタイトルの主語(っぽい)のがバイトってのはどうかと。
    しかし、リテールの仕事は世間の風がダイレクトに見えるので、自分がやったことに対してのアクションが見えやすいし、すぐ目に見えるよね。というのはやりがいがある領域のように思えました。しかし、薄利多売なので、量が必要。となると粒粒は見えなくなるんだよね。むふぅ、いいのか悪いのか分からない。

  • 簡単によめるムック。図解もあって内容が頭に入ってきやすい。変化を恐れず、本当の意味での顧客視点で、情報をあつめ、仮設をたて、実行していく。
    の繰り返し。

  • isbn:9784833450393:image
    タイトルと内容に少し食い違いがある。しかし、内容自体はなるほどそのとおりで、面白い。
    ・顧客のニーズに応えることは、顧客が飽きる商品を提供していること。だから、日々供給し続ける不条理との戦いだ。
    ・「顧客の為に」ではなく「顧客の立場で」考える。
    ・顧客はわがままで多くの矛盾を含んでいる。だから矛盾を共感できる方法で解消してくれると、店に足を運んでくれる。
    ・顧客は価値を買いたい。重要なことは価値を比較できる基準が示されていること。
    ・マニュアルがあってもどこかで感覚や価値観のズレが生じる。だからマニュアルに頼らず、ミーティングによるダイレクトコミュニケーションをたいせつにする。

    当たり前のように思えるのだが、なかなかできないこと。わかり易い例で述べられていて、頭の片隅に残りやすい。

  • セブンでバイトすると、
    経営についての感覚が得られる。
    それは何故か?

    何故なら、バイトであろうとも、
    自分達で予測を行い発注をかけるから。
    自己責任ということで、売れる商品は何か?
    また、どうやって売れるかを真剣に考えるため、
    気付いたら経営ノウハウが身につく。

    そういう内容は最初の数ページで書かれており、
    その後は、鈴木社長の考え方をインタビュー形式で
    まとめた感じになっています。

    図も多用されていて分かりやすく、
    また読みやすい構成になっているので、
    気になる人は読んでみてはどうでしょう。

    [共感を得た言葉]
    ・顧客のためではなく、顧客の立場で考える
    ・制約をたくさん出せる人=可能性を見いだせる人
    ・商品供給過多の場合は、心理学が有効
    ・運をつかむ人は、挑戦して努力する人のこと

  • 常に顧客の立場に立って展開していくという姿勢、
    一歩も二歩も先を見る視点、
    流通・マーケティングでは語り尽くされたことかもしれないが、
    やっぱりそこが基本なのだと、
    トップに立とうともそれを忘れてはいけないのだと。
    それにしても、顧客の心理、自分にも思い当たること多々あり。
    戦略に乗せられてたのか?と思いながら読むのも
    また楽しかったりして。

    実は、娘(高1)が冬休みの課題に選んだ本。
    実例もわかりやすく解説されていて、夢中になっていた。
    若い世代が読んでも面白いと感じる一冊だったよう。
    「大学生になったらセブンでバイトしてみる?」と聞いてみた。 (Y)

  • 業界を限定した本ながらも鈴木氏のビジネス術の一角がわかります。

  • 201005/201502/
    「顧客のために」ではなく「顧客の立場」で:大切なのは視点の180度転換/できない理由をできる理由に変える:「できない理由」がはっきりしているならば、それを裏返せば「できる理由」に転換できる/「反多様化論」:市場を輪切りにしてみると、むしろ画一化とブームの短期化が強まっていることがわかる/市場は富士山型から茶筒型、そしてペンシル型へ(商品サイクルの瞬間沸騰・超短期化)/価値を比較する基準商品が入ると売れ始める:グラム700円の牛肉が売れるのは、グラム500円やグラム1000円の牛肉が並んでいるから/仮説とは、明日の顧客に向けたメッセージ(物語づくり):梅おにぎりを陳列する際に「海辺の町で、陽気のいい日の釣りの昼食は傷みにくい梅おにぎりを買おう」という顧客の物語が背景にあるか/仮説は常に「顧客の立場で」考える:真冬でも冷やし中華が食べたくなるという仮説/

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著者プロフィール

ジャーナリスト
1952年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退後、フリージャーナリストとして経済・経営分野を中心に執筆。企業組織経営・人材マネジメントに詳しい。

「2020年 『共感経営 「物語り戦略」で輝く現場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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