三月ひなのつき (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
制作 : 朝倉 摂 
  • 福音館書店
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本棚登録 : 73
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834000184

感想・レビュー・書評

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  • 朝倉摂さんの絵による、わたしの大好きなお話です。
    主人公は「よし子」という10歳の女の子。
    東京で、お母さんと二人で暮らしています。
    よし子の家にはひな人形がありません。
    お母さんが長年大事にしてきたひな人形は、1945年の空襲で家と一緒
    に燃えてしまいました。
    よし子のひいおばあさんに当たる方がお母さんに贈ったというその人形
    がどんなに素晴らしいものだったか、よし子は繰り返し聞かされて育ちました。
    去年お父さんが亡くなって、ますますひな人形が買えない状態になり、
    それでもよし子は、自分だけのおひな様が欲しくて欲しくてたまりません。
    ひなまつりが近づいたある日、とうとうよし子はお母さんに思い切って
    ねだってみるのですが。。

    話の中盤で、お母さんがよし子に話す言葉があります。
    お金がないからとか、意地悪でおひな様を買わなかったわけじゃない。
    お母さんには強い願いがあったのです。
    わたしはいつもここで胸がいっぱいになってしまいます。
    そして、その言葉を受け止めてから、よし子は変わっていきます。
    やがてやって来たひなまつりの日。
    どきどきしながら学校から帰ったよし子の目に飛び込んできたものは。。
    この展開で、わたしはまた涙がこみあげてしまうのです。

    60年代に書かれた作品なので、古く感じる描写もありますが、流れる
    テーマは今も、これからもずっと変わらないものだと言えます。
    何十年経っても読まれるような本というのは、その中にあるものが本物
    だからなんでしょうね。それは、この作品のテーマとも共通します。
    読み終えたあと、自分は子供の夢や思いを壊すような親ではなかったか
    しばらく考え込んでしまいます。
    親と子の深い心のふれあいを描いたものですが、どの年代の方にも
    通じるものがあるように思います。

  • 晴れやかな表紙のピンクに、ドキドキしながら読み始めました。
    お母さんの葛藤や心の痛みが、悲しい位に伝わってきて、そんなお母さんを労わろうというよし子の気持ちが、悲しい位に伝わってきて、なんとも言えなかった。
    大きな愛情で子どもを包み込み、子どものピンチには、適切な言葉をかけてあげるお母さんのお話は、もちろん素敵だけれど、お母さんだって、傷つき悩み、忙しい時にはイライラしてしまう、ただの小さな人間なのです。この本のお母さんは、普通のお母さん代表みたいで、がんばれ、がんばれと応援したくなってしまいました。ラストが良かったな。お母さんは、子どものおかげでお母さんでいられるんだなって、つくづく思う。

    普段あまり使わない「がいとう」などの言葉に苦労していた娘さんでしたが、「〇〇って、何?」と、流れを壊さないように気を使うようにして質問しながら、真剣に物語と向き合っている姿が、なんとも愛おしかったです。

  • 初めてこの本を読んだのは、確か小学校低学年の時。
    正直なところ、当時はあまり好きな本ではありませんでした。
    どこか感じた“暗さ”が引っ掛かって…

    あの頃からもう十数年。
    今日の昼下がり、祖父の家の本棚を散策していますと、少し埃をかぶった姿で、偶然にもこの本と再会しました。
    本当に何と無く、手にとって読んでみたのですが…

    …あれ、こんなに心にしみる、優しい物語だったのか…
    …と、胸にぐっときまして…途中どうしても涙があふれました…。

    あれから私も、大人になったのか…
    色々経験してきたのか…
    日々の時間がゆるゆると流れてゆく中で、中々自分の変化など、気づきもしなかったけれど、
    こうしてちょっと立ち止まって向き会ってみると、あぁ、私も変化していたのだなぁ…と。

    これからもよろしくね、と、
    本をぎゅっと抱きしめたくなりました。

  • 通し番号:62

  • ◆きっかけ
    実家にあった『家庭画報2016年三月号』3.11絵本プロジェクトいわての記事で、美智子様が送られた最初の絵本の一つとして、この絵本の見開きページが写っていて、お内裏様、お雛様、三人官女と五人囃子が散りばめられた愛らしい絵に惹かれて。2017/4/4

    ◆感想
    私の娘のお雛様は、ばぁばが作ってくれたちりめんのお雛様。この本では、昔お母さんが持っていたお雛様の描写があって、それぞれのお雛様やお道具の名前を娘と覚えるのに良いなと思った。お雛様に対するよし子の温かい気持ちが伝わってきて、桃の節句にぴったりなお話。
    お雛様を出すのは楽しみでもあり、少し大変と思う気持ちもあるけれど、本書を読むと、よし、丁寧に出して、菜の花か桃の枝を飾って、ひなあられや豆菓子を用意して、ごはんもひな祭りメニューを用意しよう!というやる気も出てくるなと思った。娘が成長するにつれて、きっと本人もひな祭りが楽しめるようになるだろうと思う。何より、娘の笑顔と晴姿を。健やかな成長を願う時間を。

  • 我が子のための既製品ではないお雛様にこだわる母の気持ちに心うたれます。

  • 女の子にとって、雛人形は飾りたいものね

  • 『改訂新版 私たちの選んだ子どもの本』で知り、三月中に読みたいと思い、図書館で借りた。

    三月三日は、女の子の節句でもあるけれど、よし子のおとうさんの命日でもある。
    よし子のおかあさんのお気に入りだったおひなさまは、空襲で焼けてしまった。

    おひなさまの描写が楽しく、絵が美しい。
    私のおひなさまは平安雛だけれど、寧楽雛もいいなぁ。
    おかあさんの思いも、よし子の思いも、どちらもわかる年頃の私。
    三年生のよし子が大人びているのが、少しかなしい。
    ぎこちなくも、まるくまとまっている。
    難しいおはなしだと思った。

  • 朝倉摂の名前を、子どものときにこの本で覚えた。実家にまだあるはずだが、挿絵を鮮明に覚えている。

  • 読もう、読もうと思いつつ、なかなか読めないでいました。
    読んでみて、よかったです。

    この本が発行されたのが1963年なので、時代は私が生まれる10年くらい前、読んでみるととても懐かしい感じがしました。

    主人公のよし子は、10才になる女の子で、お母さんと2人暮らし。3年前の3月3日にお父さんはなくなりました。
    よし子には雛人形を持っていませんでした。よし子のお母さんはおばあさん(よし子のひいおばあさん)から、近所の人形師に頼んでつくってもらった、木彫りの「寧楽(なら)びな」を初節句にもらいました。
    その、雛人形は1000年も前の日本の風俗に従ったつくりになっていました。すべてが一つの箱に収まり、五人囃子は雅楽の楽人になっていました。

    このお雛様を箱から出すところから、一つ一つ説明されているのですが、それが目に浮かぶようで、とてもわくわくして読みました。

    お母さんのお父さんは転勤が多く、このお雛様は持ち運ぶにもよく、お母さんにとっては大切な友だちのようになっていました。毎年毎年、大事に出してはしまい。話しかけ…。しかし、戦争の空襲で家とともに焼けてなくなってしまいました。

    おばあさんが孫のことを思って送った雛人形は、お母さんにとって、とても大切な存在になっていることがとても伝わってきました。
    自分の支えになった、このお雛様をよし子に渡したかったのですが、それはできません。

    女の子が生まれ、その子の為にも良いものをと悩んでいるうちに、3月3日は過ぎてしまい、毎年夫婦雛の色紙を飾ってすませていました。

    お父さんのこともあり、我慢はしていましたが、よし子も自分のお雛様がほしくなりました。お母さんからこの素晴らしい「寧楽びな」の話を何度も聞かされていたので、お母さんには自分のお雛様があったのに、自分にはない。別に良いものでなくてもいい。どんなものでもいいから自分のがほしいと思ったことでしょう。そんな子ども心が伝わってきました。

    結局、お母さんはよし子とデパートに雛人形を見に行くのですが、やはり決められません。よし子も疲れてしまいます。休憩の食堂でお母さんはよし子に真剣に雛人形がいかに自分にとって大切で自分の心の支えとなってきたかを話ました。よし子は、話の全てが分かったわけではなかったのですが、お母さんの真剣さに心が動いたようでした。
    急に大人になったように。

    お母さんも、よし子も今まで以上に、お互い気遣うようになっていました。よし子はお雛様がほしいとも言わなくなりました。

    そして3月3日、学校から帰ってみると、和紙で折られた「折り雛」と木彫りの「夫婦雛」が飾られていました。そこにはお母さんからの手紙が添えられていました。

    折り雛はよし子が、お母さんに進めて行った同窓会で教えてもらって、お母さんが折ったもの。木彫りの雛人形もそこで教えてもらった物を買ったとのこと。

    この場面では、涙があふれてきました。お母さんの気持と、よし子もそのお母さんの気持ちが分かっているのがよく伝わってきました。

    雛人形をめぐって、母と子の愛情がとても伝わってくる話でした。
    石井も桃子さんの文章も安心して読めるし、描写がわかりやすく挿絵も手伝ってドラマをみているような感覚でした。

    この本は児童書として書かれていますが、きっと今の子どもたちでは時代背景が分かりにくいように感じました。雛人形の値段も出てきますが貨幣価値も変わっています。
    本当なら、子どもたちにも読んでほしいのですが、大人が読んだ方がよくわかる話なのかもしれません。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。『クマのプーさん』『ちいさいおうち』「うさこちゃん」シリーズなど数々の欧米児童文学の翻訳を手掛けながら、『ノンちゃん雲にのる』等の創作も行い日本の児童文学普及に貢献した。2008年没。

「2018年 『新しいおとな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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