三月ひなのつき (福音館創作童話シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834000184

感想・レビュー・書評

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  • 朝倉摂さんの絵による、私の大好きなお話です。
    主人公は「よし子」という10歳の女の子。
    東京で、お母さんと二人で暮らしています。
    よし子の家にはひな人形がありません。
    お母さんが長年大事にしてきたひな人形は、1945年の空襲で家と一緒に燃えてしまいました。
    よし子のひいおばあさんに当たる方がお母さんに贈ったというその人形がどんなに素晴らしいものだったか、よし子は繰り返し聞かされて育ちました。
    去年お父さんが亡くなって、ますますひな人形が買えない状態になり、それでもよし子は、自分だけのおひな様が欲しくて欲しくてたまりません。
    ひなまつりが近づいたある日、とうとうよし子はお母さんに思い切ってねだってみるのですが。。

    話の中盤で、お母さんがよし子に話す言葉があります。
    「お金がないからとか、意地悪でおひな様を買わなかったわけじゃない。」
    お母さんには強い願いがあったのです。
    私はいつもここで胸がいっぱいになります。
    そして、その言葉を受け止めてから、よし子は変わっていきます。
    やがてやって来たひなまつりの日。
    どきどきしながら学校から帰ったよし子の目に飛び込んできたものは。。
    この展開で、また涙がこみあげてしまうのです。

    60年代に書かれた作品なので、古く感じる描写もありますが、流れるテーマは今も、これからもずっと変わらないものだと言えます。
    何十年経っても読まれるような本というのは、その中にあるものが本物だからなんでしょうね。それは、この作品のテーマとも共通します。
    読み終えたあと、自分は子供の夢や思いを壊すような親ではなかったかしばらく考え込んでしまいます。
    親と子の深い心のふれあいを描いたものですが、どの年代の方にも通じるものがあるように思います。

  • 子どもの頃おこなった行事は、辛いことにせよ良いことにせよ、特別なものだった。特に、女の子にとっては、3月3日は特別だった。

  • 晴れやかな表紙のピンクに、ドキドキしながら読み始めました。
    お母さんの葛藤や心の痛みが、悲しい位に伝わってきて、そんなお母さんを労わろうというよし子の気持ちが、悲しい位に伝わってきて、なんとも言えなかった。
    大きな愛情で子どもを包み込み、子どものピンチには、適切な言葉をかけてあげるお母さんのお話は、もちろん素敵だけれど、お母さんだって、傷つき悩み、忙しい時にはイライラしてしまう、ただの小さな人間なのです。この本のお母さんは、普通のお母さん代表みたいで、がんばれ、がんばれと応援したくなってしまいました。ラストが良かったな。お母さんは、子どものおかげでお母さんでいられるんだなって、つくづく思う。

    普段あまり使わない「がいとう」などの言葉に苦労していた娘さんでしたが、「〇〇って、何?」と、流れを壊さないように気を使うようにして質問しながら、真剣に物語と向き合っている姿が、なんとも愛おしかったです。

  • 初めてこの本を読んだのは、確か小学校低学年の時。
    正直なところ、当時はあまり好きな本ではありませんでした。
    どこか感じた“暗さ”が引っ掛かって…

    あの頃からもう十数年。
    今日の昼下がり、祖父の家の本棚を散策していますと、少し埃をかぶった姿で、偶然にもこの本と再会しました。
    本当に何と無く、手にとって読んでみたのですが…

    …あれ、こんなに心にしみる、優しい物語だったのか…
    …と、胸にぐっときまして…途中どうしても涙があふれました…。

    あれから私も、大人になったのか…
    色々経験してきたのか…
    日々の時間がゆるゆると流れてゆく中で、中々自分の変化など、気づきもしなかったけれど、
    こうしてちょっと立ち止まって向き会ってみると、あぁ、私も変化していたのだなぁ…と。

    これからもよろしくね、と、
    本をぎゅっと抱きしめたくなりました。

  • ■伊藤忠062
    #三月ひなのつき
    #1階本棚

    #読んであげるなら5・6歳から
    #自分で読むなら小学低学年から
    #小学中学年

    ■出版社からの内容紹介
    「母と子の心の交流をすがすがしく描いた童話」
    3月3日は、よし子のお父さんの命日です。「まだ鳴かないかな」と待っていたウグイスの声もきかずに、2年前、お父さんは旅立ってしまいました。翌年、よし子は朝はやく目が覚めました。お母さんに声をかけられますが、沈黙の中にも心では同じことを考えていたでしょう。そんなよし子は、ひな人形を欲しがりますが、お母さんが規格品を買い与えてくれません。ひなまつりを通して、母と子の心の交流をすがすがしく描いた童話です。

    #96ページ
    #21×19cm
    #伊藤忠寄贈図書

  • ◆きっかけ
    実家にあった『家庭画報2016年三月号』3.11絵本プロジェクトいわての記事で、美智子様が送られた最初の絵本の一つとして、この絵本の見開きページが写っていて、お内裏様、お雛様、三人官女と五人囃子が散りばめられた愛らしい絵に惹かれて。2017/4/4

    ◆感想
    私の娘のお雛様は、ばぁばが作ってくれたちりめんのお雛様。この本では、昔お母さんが持っていたお雛様の描写があって、それぞれのお雛様やお道具の名前を娘と覚えるのに良いなと思った。お雛様に対するよし子の温かい気持ちが伝わってきて、桃の節句にぴったりなお話。
    お雛様を出すのは楽しみでもあり、少し大変と思う気持ちもあるけれど、本書を読むと、よし、丁寧に出して、菜の花か桃の枝を飾って、ひなあられや豆菓子を用意して、ごはんもひな祭りメニューを用意しよう!というやる気も出てくるなと思った。娘が成長するにつれて、きっと本人もひな祭りが楽しめるようになるだろうと思う。何より、娘の笑顔と晴姿を。健やかな成長を願う時間を。

  • 我が子のための既製品ではないお雛様にこだわる母の気持ちに心うたれます。

  • 女の子にとって、雛人形は飾りたいものね

  • 『改訂新版 私たちの選んだ子どもの本』で知り、三月中に読みたいと思い、図書館で借りた。

    三月三日は、女の子の節句でもあるけれど、よし子のおとうさんの命日でもある。
    よし子のおかあさんのお気に入りだったおひなさまは、空襲で焼けてしまった。

    おひなさまの描写が楽しく、絵が美しい。
    私のおひなさまは平安雛だけれど、寧楽雛もいいなぁ。
    おかあさんの思いも、よし子の思いも、どちらもわかる年頃の私。
    三年生のよし子が大人びているのが、少しかなしい。
    ぎこちなくも、まるくまとまっている。
    難しいおはなしだと思った。

  • 朝倉摂の名前を、子どものときにこの本で覚えた。実家にまだあるはずだが、挿絵を鮮明に覚えている。

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著者プロフィール

1907年埼玉県生まれ。1951年に『ノンちゃん雲に乗る』で文部大臣賞受賞。1953年児童文学に貢献したことにより菊池寛賞受賞。童話に『三月ひなのつき』『山のトムさん』、絵本に『くいしんぼうのはなこさん』『ありこのおつかい』(以上福音館書店)、翻訳に『クマのプーさん』『たのしい川べ』『ちいさいおうち』(以上岩波書店)、『うさこちゃん』シリーズ、『ピーターラビット』シリーズ(以上福音館書店)など多数。

「2022年 『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー KATY AND THE BIG SNOW』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石井桃子の作品

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