ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834000399

感想・レビュー・書評

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  • 本書の文を書かれた、「松居直」さんは、1956年に「こどものとも」を創刊し、編集長として、多くの絵本作家を世に送り出したのですが、その中の一人である、本書の画を描かれた、「赤羽末吉」さんは、この絵本で『サンケイ児童出版文化賞』を受賞されたそうです。

    そう、「ももたろう」といえば、私も幼い頃に読んだであろう、その簡潔で分かりやすい内容は、ほぼ忘れずにいて、本書は1965年発行というのだから、もはや日本人にとって、すっかりお馴染みの物語かと思われますが、実はももたろうの数だけ、その内容が細かく異なっている点に、奥の深さがあることを知り(倉持よつばさんのおかげです)、本書は松居さんと赤羽さんの絵本という興味もあって、久しぶりに「ももたろう」、読んでみようと思います。

    まずは表紙を見てみると、早速、どっしりとした構えの力強いイメージを持った、赤羽さんによる、ももたろうの絵が一際存在感を放っておりますが、更に存在感のある、その上の題字を書かれたのが、「安永蕗子」さんで、あの塚本邦雄さんをして、『肥後の魔女』と言わしめた妖艶で華麗な歌人だそうで、彼女の歌集にも興味を持ちました(勿論、書家でもあります)。


    それでは、物語の始まりです。

     むかし、あるところに、おじいさんと
    おばあさんが すんでいました。
     おじいさんは やまへ しばかりに、
    おばあさんは かわへ せんたくに ゆきました。

    まずは記憶通りというか、私のよく知る、ももたろうの出だしです。

     あるひ、おばあさんが かわで せんたくをしていると、かわかみから、ももが つんぶく かんぶく つんぶく かんぶくと ながれてきました。
     おばあさんが ひろって たべてみると、
    なんともかとも おいしい ももでした。

    どんぶらこ どんぶらこではなくて、つんぶく かんぶくという表現が、独特で面白いのと、それから、おばあさん、その場で早速食べるんだね。私の記憶だと、桃を持って帰って包丁で切ってみるんだけど・・しかも、その後、更におばあさんの凄いところは、おじいさんにも持っていってあげたい為に、呪文のようなものを唱えるだけで、大きい美味そうな桃がおばあさんの方に流れてくるという・・

    そして二人は、持って帰った桃を切ろうとしたとき、桃が自ら、じゃくっと割れて、ついにももたろうが生まれますが、この場面での、三人それぞれの絵がほぼ一色で塗られているのには(ももたろうの赤は赤子だからか、それとも元気さの現れ?)、ももたろうが生まれた時の、一種の衝撃的な心理描写を表しているようで印象的でした。

    その後、ももたろうはすくすくと成長してゆく中、ある日、鬼ヶ島の鬼が来て、村で米や塩を盗ったり、姫をさらったりしたことを知るのですが、なんとそれを知らせてくれたのはカラスであり、正直、この辺は誰が知らせてくれたのか覚えていないのですが、でも、カラスがねぇと思っていたら、古くは『神さまの使者』と考えられ、世界中の神話や伝説に登場し、日本でも古来、『吉凶を示す鳥』として、そういえば八咫烏もいるし、なるほどと思いました。

    そして、知らせを聞いた、ももたろうは、礼儀正しく、おじいさんとおばあさんの前に座り、両手をつきながら、わたしも大きくなったので、鬼ヶ島の悪い鬼を退治しにゆきたいと思い、どうか、日本一のきびだんごをこしらえてくださいと頼み、いよいよ鬼退治に旅立ちますが、この辺りのももたろうは、赤羽さんの淡い水彩画もあって、実直で力強い中にも、どこか優しさもあるようで(おじいさん、おばあさんに手を挙げる仕種と、その視線からも)、それは松居さんの文体からも、そう感じさせるものがあるからだと思い、お二人の息の合った姿を垣間見るようでした。

    この後は、オーソドックスに、いぬ、さる、きじと出会い、十人力のきびだんごを与えてお供にするのですが、その道中が、山あり谷ありしてからの海越えと、割と大冒険している感じが、私には新鮮でした(ももたろうが岩肌にしがみついて登っている絵には、ちょっと健気さが)。

    そして、ようやく鬼ヶ島に到着し、その後は予想通りに、鬼を片っ端からやっつけてしまうのですが、その根拠が、どうもきびだんごをどっさり食べている事らしくて、結局は、きびだんごを作った、おじいさん、おばあさんが凄かったんだなということに帰結し、これはやはり、序盤のおばあさんの呪文が伏線になっていたのだと、一人悦に入るわけです(そんなことはない)。

    それから、この後の展開は、松居さんのお人柄を感じさせるようで、とても印象的だったのですが、鬼の大将がももたろうの前で手をついて、涙をぽろぽろこぼして謝ると、ももたろうはそれを許してあげて、お詫びの印に全て差し上げると言った宝物は、いらんと断り、お姫さまを返してもらうだけで帰路に着く展開には、理不尽さの無い、松居さんの平和の思いが宿った慈悲深さを感じさせられて、私の幼い頃の記憶が、宝物を大量に持って帰った展開だっただけに、尚更、こうした展開にハッとさせられるものがありましたし、もし、子どもに読み聞かせするならば、このももたろうを読んであげたいと思いました。

    あと、帰りの船に、赤鬼と青鬼が同乗していた展開に、また独特さを感じましたが(護衛?)、最後の家に帰り着く場面は、まるでももたろうと、おじいさん、おばあさんがハイタッチするかのような、これはある意味、とても現代的な描写でもあるなと感じさせられたのが凄く、こうした時代性を越えた、人懐こさを思わせる表現には、赤羽さんのお人柄が窺えるようで、見ている私も、思わず顔がほころび、めでたし めでたし。

  • こちらも『不道徳お母さん講座』からのフォローアップ。『桃太郎』は、かつて戦意高揚に使われた話だと知って読み比べてみることに。

    こちらは私が幼少期に親しんだバージョンで、読んだ中では一番ストーリーが丁寧に表現されていた。

    赤羽末吉は児童書のノーベル賞とも言われる国際アンデルセン賞を、日本人として初めて1980年に受賞。

    • たださん
      shokojalanさん、こんにちは。
      いつも、興味深くレビューを拝見しております(^^)

      こちらの「ももたろう」、「こどものとも」の初代...
      shokojalanさん、こんにちは。
      いつも、興味深くレビューを拝見しております(^^)

      こちらの「ももたろう」、「こどものとも」の初代編集長だった、松居直さんの作品ということを、「絵本のつくりかた」で知りまして、私も読みたいと思っておりました。

      また。赤羽末吉さんの絵は、目で見る以上に、心で見る印象が強く、このお二人が合わさることで、どんな桃太郎になるのか、とても気になりますね。
      2023/04/16
    • shokojalanさん
      たださん、コメントありがとうございます。
      こちらこそ、たださんのレビューいつも参考にさせていただいています!

      私が読んだももたろうの中では...
      たださん、コメントありがとうございます。
      こちらこそ、たださんのレビューいつも参考にさせていただいています!

      私が読んだももたろうの中では(自分が親しんできたという贔屓目もあるかもしれないですが)一番作りが丁寧な印象を受けました。鬼退治に行かないといけない理由の説明や、鬼退治をした後の決着の付け方が誠実というか。

      赤羽末吉さんの絵本はずっと読みたいと思っていたのですが、松居直さんのことはよく存じ上げませんでした。教えてくださりありがとうございます(^^) 絵も魅力的なので、楽しんでくださいませ♪
      2023/04/16
    • たださん
      shokojalanさん、お返事ありがとうございます(^^)

      そういえば確かに、鬼退治に行く理由というのが、「桃太郎」によっては不明なもの...
      shokojalanさん、お返事ありがとうございます(^^)

      そういえば確かに、鬼退治に行く理由というのが、「桃太郎」によっては不明なものもありますよね。その後の誠実な決着の付け方等、絵本は子どもたちに読み聞かせるものであるという、松居さんの思いを感じさせられるようで、印象深いですね。

      是非、楽しみたいと思います。
      ありがとうございます(*^_^*)
      2023/04/16
  • 季節…なし
    対象…中〜
    メモ…つんぶくかんぶく からすから鬼の噂を聞く 「たからものはいらん。おひめさまをかえせ」 鬼も舟に乗っている

  • 購入本。4歳娘と2歳8ヶ月息子に読み聞かせ。
    娘が発表会の劇で『ももたろう』の鬼の大将役になったと言い出した。今まであらすじだけの短い『ももたろう』の本しか読んであげていかなったので何かいい本ないかなと探してた処に息子と行った交流センターで息子が『ももたろう読んで〜』と持ってきた。まだ字が読めない息子が表紙の絵を見ただけで『ももたろう』と解る絵と、読んであげたら『ももたろうかっこい〜!』と絶賛していたのでこの本に決めた。
    娘にも読んであげてたらなかなかの好感触。ただ娘がやる鬼の大将は青鬼らしく、本の中の鬼の大将が赤鬼なのを『違う!鬼の大将は青鬼だし!』とダメ出ししていた...
    2013.1.31,2.1,2.2,2.27,

  • いけめんだった

  • 1年生に読み聞かせるために初めてしっかり読みました。
    自分が覚えていたももたろうのお話とは多少違いましたが
    それでも、あぁそうそう、こんな話だったねと懐かしく読みました。
    でも、からすがきっかけで鬼退治を決めたとか、新しい発見でした。

    それにしても、ももたろうの自立していること(笑)
    りっぱな青年ですよ、彼は。

    宝には目もくれず、鬼を全滅させるのでもなく
    お姫様を救いたかったのね♪(と、オバサンは解釈しときます^^)
    これ、初代、王子様なんじゃないの??

    そんな視点で読んだら別の意味で楽しめました。

  • 1965 初版

    心優しいももたろう

    おにもいっしょに船に乗ってるけどいいのか


  • 昔話は微妙にあらすじが違うものが多いけど、これがいちばん昔ながらで良いと思う

  • 子供の頃に読んでいた絵本。

    きびだんごはどんな味なんだろう?
    あんな小さな袋に何個入るのだろう?
    きびだんごは足りるのか?
    きびだんごはカチカチになったりカビが生えたりしないのか?

    とにかくきびだんごが気になり、ももたろうの腰の袋ばかり見ていた記憶。

    今あらためて読んでみると、情景や展開がわかりやすく伝わるし、桃やきびだんごなどがパッと鮮やかに描かれていて、とてもよい挿絵だと思う。

  • 3歳2ヶ月


    「じゃくっと」割れて
    とか
    「わりわりと」かかってきました
    とか
    聞き覚えのない表現が結構あって新鮮。
    家来になるくだりは繰り返しのリズムで楽しく覚えたみたい。

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