- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834000795
感想・レビュー・書評
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こちらも、今読み進めている本の関連本。
読み終える前にストーリーを頭に入れておこうと思って。
戦後の長編児童文学にしてベストセラー。
1955年には映画化もされ、出演者には原節子や徳川夢声と豪華俳優陣が名を連ねている。
4人(と犬1匹)家族の末っ子 信子ことノンちゃんは木登りの枝から落っこちて、そのまま「地下天国」と呼ばれる場所に辿り着く。そこで出会った「雲のおじいさん」に促され、彼女の身の上話が始まる…というあらすじだ。
戦前…恐らく1930年代の話ではあるが、社会の風潮を表すような描写は一切ない。片田舎に暮らす、ある一家の物語といった感じ。
東京から越してきた核家族というのもあるだろうけど、古いしきたりに囚われないリベラルな一家で、羨ましいくらい和気藹々としている。
主人公ノンちゃんは絵に描いたようなお利口さんで、成績も優秀。
父親はどことなくのんびりしていて、母親は上品で優しい。(映画版のご両親の配役が驚くほどピッタリだった) 兄はわんぱく者で妹のノンちゃんに乱暴を働くこともあるけど、何だかんだで妹おもい。
そして、みんなノンちゃんの話をちゃんと聞いてくれる。「子供にとってはそれが一番嬉しいんだろうなー」と、ほっこりとした気持ちでページをめくっていた。
「おじいさん」に身の上話(幼少期にかかった赤痢の闘病記や家族・自分自身の紹介)を語るにつれ、自分でも気づかなかった家族への想いに目覚めていく描写が本当に優れていた。
ラストまで感情移入したのは久々だったし、思い返せば著者の巧みな筆遣いに完全に乗せられていたんじゃないかな。「おじいさん」が操縦する雲に乗せられるがままになっていた、ノンちゃんみたいに笑
あと子供への読み聞かせも意識されていたのか、擬音語も結構面白い使い方をされていたな…。「おじいさんのおなかの底から、笑い声がギュッギュッとあがってくるのがわかりました」とか笑
「ツバサをなくした国の空には、もう自分たちの飛行機は飛んでいません」
戦後を迎えた終盤には、これまでのおとぎ話然とした空気とは打って変わって、このようにハッとする文言が飛び出してきたりする。
幼かったノンちゃんやお兄ちゃんの成長に合わせて彼らの視点も変化させたんだと思うけど、突然の変わりように幼い読者達はきっと戸惑うことだろう。「大きくなるってこういうこと?」と、何となしに思うのかもしれない。
けれどもラストになれば、心は自ずとノンちゃんと天上を見上げているはず。その心にはあたたかくて澄み切った何かが、何となくで良いから残っていて欲しいなと願っている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2015.3.16市立図書館
評伝を読みつつ、遅まきながら処女作を読む。
信頼しきっていた人に裏切られた絶望というのは、幼子だからこそ深いのかな、と気付かされた。
ノンちゃんのゆたかにあふれでる気持ちがまさにこどもの言い分そのままで、大人が子どもの気持ちに寄り添っているというより、石井桃子さんはほんとうに子どもの心をあざやかにたもったまま大人になられたのだなぁと感じた。そして、まじめで優等生の主人公ノンちゃんに対して、雲の上のおじいさんがさりげなくいいことを教えてて(ノンちゃん本人にはいまひとつ響いていない感じだったけれど)、いちいち付箋をつけたくなる。ノンちゃんの両親の姿勢にも学ぶことが多かった。
「教わった→おさった」のような口語をそのままうつしたリズミカルな文体も落語的というか、すいすい読める。
中川宗弥さんのさらっと描いたような挿絵もいい。「ももいろのキリン」を思い出した。 -
私的さよなら子ども図書館フェア、7冊め。あまりに有名な本ですが、今まで読んだことなかったの。著者の石井桃子さんはこの本をまだ戦争中の1944年に執筆して、戦後すぐに出版しています。
おはなしは、おかあさんと兄ちゃんにだまされて家に置いていかれたノンちゃんが、全身で「うわあッ!わあわあわあ・・・」と泣いているところから始まります。うんうん、この気持ちわかるなあ。下手になぐさめられたって、どうしようもないから泣いてるのに、いっそう悲しくなっちゃうんだよね。
こういうところとか、大好きな「おかあさん」が「田代雪子」という名前をもつひとりの人であるということを発見し、それが、それまでひとつだったおかあさんとノンちゃんの間に「すきま」を生じさせ、それゆえにいっそうおかあさんを大切に思うようになった、という話なども、まったく時代を感じさせず、子どもの感覚をよくとらえてるなあと思う。
さてノンちゃんが「雲のおじいさん」に自分の家族のことをおはなしするあたりから、ノンちゃんがずいぶん優等生であることがわかってきます。なにしろ今でいえば成績はオール5、おまけにうそのひとつもつけないというのだから、ちょっと嫌味なくらい、いや危ないくらいのいい子ちゃん。
「雲のおじいさん」は、そんなノンちゃんに、優秀すぎて謙虚さを忘れてはいけないとか、いたずらや嘘もときにはいいもんだと言ってくれたりするので、このいい子ちゃんがどんなふうに変わるのかなと思って最後まで読んだけど、けっきょくノンちゃんはいい子のまま大人になったんだね。戦争の時には、お兄さんや近所の男の子が出征するのをちゃんと見送って、自分はお医者さんをめざそうと決めて。戦争が終わったら、いっそう希望を胸に勉学にはげんで。うーん、なんだか昔の青春映画みたいな清く正しいラストだな。
この本が戦争直後に大ヒットしたのは、子どもの気持ちを生き生きと描いていることの魅力も当然あったのだろうけど、リベラル派に、さあ戦争も終わったし、これから「いい子」を育てましょう的な像を提供したという部分があったんじゃないだろうかとも思う。 -
自分の読書歴は、まさにここから始まりました。
まだ小学校に上がる前、母から少しずつ読み聞かせられ、まだ自分では絵本しか読めなかったのを、いつかこの本を自分の力で読んでみたいと思ったのを覚えています。
小学校の時、中学校の時、高校生、それ以上の時と、いつ読んでも面白く、また、読むたびに新しい発見ができる、希有な一冊です。 -
「オノレ、コシャクナ、コワッパメ」
のんちゃんのかわいさ、たまらない♪
「本は人にもらうものではない。自分で選んで買いなさい」
という家訓で育った私。小さい時から本は自分で選んでました。
この本は、小学3年生の時、唯一、父から贈られた本です。
大人になって読み返して、なつかしさがいっぱい♪
父の思いを感じる事ができました。
すてきな本です。日本語も美しいです。 -
小学生の私に叔母がプレゼントしてくれた。
きれいな文章と優しい紙。
子供の柔らかい心を豊かにしてくれる一冊。
どんな思いでこの本を私にプレゼントしてくれたのだろう。
大人になった今、また違う意味で心があたたまる。 -
母親になるときのやさしいあまやかな気持ちを思い出す。美しい言葉づかい、満ち足りた時間。
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これ
小学校のころからだーいすきな本。
体外の本や映画は大人になってからみなおすと、
違ったとらえ方をするのに、
この本だけは昔と変わらず。
おんなじ風に感じる。それがうれしい。 -
「私の原点の一冊」みたいな特集を見て、思い出した。小学生の頃、紀伊国屋書店本店で、親に「欲しい本を一冊選んで来なさい」と言われ、この本を選んだら誉められた。(おっ、この子はスジがいいな!みたいな 笑)
それもあってか何度も何度も読んだ。好きなおやつの日には必ず引っ張り出してきた。
戦前のお話なので、当時でもかなりのレトロだったけれど、頁を開くたびに友だちとなったノンちゃんといっしょに雲の上に行くことができた。
簡単に言うと、木から落ちたノンちゃんの夢(臨死?)の話だが、仙人のようなおじいさんと家族や友達のことを語り合い、ノンちゃんも自分自身を見つめ直していく物語。昔ながらの家族が暖かい。
だが成長したノンちゃんを待っているのは戦争で、いじわるな兄ちゃんやケンカ友だち?の長吉も兵役へ。
子ども心に平和であることの良さをおやつとともに噛みしめた記憶。
いつかまた読もうっと。
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いい。すごく。
自分が今まさに、子どもを育てているからというのもあり、いちいち響くとこだらけ。
子どもの舌たらずな話し方が、かわいい。やんちゃ坊主のお兄ちゃんが愛おしい。良い子のノンちゃんの心理。ノンちゃんほどじゃないけど、わりに良い子な我が子の心に想いを馳せる。
そーいや私自身も良い子やったな。お母さんにこっち向いてほしかったんかな。弟に負けたくなかったんかな。読みながら、どうしても自分自身に重ね合わせてしまう。。
落ち着いて子どもに向き合っているノンちゃんのお父さんとお母さんの姿も、尊敬するわ。
そして、、優等生で、わんぱくなどしないノンちゃんが、こうやってヒョンなきっかけで、池にボチャンしちゃったりするんだな。。死んだかもしれなかったやろ?。。こどもは目を離しちゃいけないな。。しかしもう小学生じゃいつも目を光らせていられないよ、こわいよ、、
雲に乗った髭のオジンが出てきたあたりで、はやくも、ノンちゃん死ぬのかとドキドキしちゃって、ほんの最後の方をサッと覗き見てしまう。文字の色が変わっていて、現実の部分の描写が再びあったので、死んではいないようだとホッとしたりして。
紙の質、字体とインクの色味、細い線描画など、本そのものの造りも美しくて。図書館で借りたけど、自分の蔵書に入れたいなあ。買おうっと。