シチリアを征服したクマ王国の物語 (世界傑作童話シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834001426

感想・レビュー・書評

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  • ブッツァーティ自身の手による挿し絵がかわいい子ども向けの本。それなのに内容はほろ苦すぎ!イタリアの子どもはこんな厭世的な本を読んで育つのか。

    ブッツァーティの小説には、右往左往するものの、結局運命の大きな流れに押し流されてしまう人物がよく出てくる。クマの王さまもその一人で、クマなだけあっていっそうもの悲しかった。最後の命令にみんなが従ったのが救いかも。

  • 子供のころに読んで、大人になってからまた読みたいと思っていた本。
    表紙や「シチリア」という単語だけ憶えていたのを、「はじまりのはじまりのはじまりのおわり」の後ろについていた広告でみつけた。
    文庫版は絵が小さくて白黒らしいので、大きい本で読めて嬉しい。
    読むまで忘れていたけれど、けっこう内容を覚えている。

    むかしむかし(あんまり昔だから架空のシチリアといってよい)、山からおりてきてシチリアを征服したくまたちの話。
    王様の冒険譚だったり、悪そうだけど人間味あふれる魔法使いの不安のお話だったり、おばけのはなしだったり、「ゆたかさ」の寓話だったり。

    昔読んだときは、友達が読んでいたのを見て手を出したけれどあまり好きじゃなかった。
    血を流してバラバラと死んでいく「戦争」が怖かったし、単純なハッピーエンドでもないからだと思う。
    今読むと、残虐だとか悲惨だという印象ではない。
    すっとぼけた文章(たとえば海の怪物の説明に「ただし、いつも海の水の中に住んでいるので清潔」とある)や、個の表情が描かれない挿絵のおかげもあって、ちょっと「自殺うさぎ」みたいな印象だ。
    「ホッツェンプロッツ」から子供向けの配慮を取り払ってキリスト教成分をちょこっとだけ入れた感じ。

    詩と文章がまじっているけれど、あまり詩と言う感じはしない。
    とても寒かった頃のおはなしだけど、鮮やかな色の挿絵のおかげであまり寒そうな気がしない。
    だけど違和感はなくて、不思議なこの本の世界ができあがっている。

  • 今よりもずっとずっと大昔のお話。。
    けものたちは善良で、人間は性悪だった時代。
    クマたちの王・レオンツィオ王は、暮らしていた山を後にして人間たちの暮らす平地へと下ることに。
    人間やイノシシやばけ猫と戦い、ついにシチリアを征服したクマたち。
    しかし、そこに持ち上がった新たな問題が…。

    この語り口がなんとも言えず、わくわくさせられます。
    まず最初の登場人物紹介で、本編への期待を掻き立てられちゃうんですよ。
    舞台で演じられている、演劇を鑑賞しているような気持ちで読みました。

    ユーモアたっぷりですが、同時に人間やクマの醜い部分も隠さずに描いています。
    登場人物のいずれもがどこか欠点を持っていて、余計に夢中にさせられるのです。
    だからでしょうか、読後にふつふつとした悲しみも呼び起こされるのです。

  • Dino Buzzati 1906-1972 イタリア
    「人間は、定められた枠にはめられた人生を歩みつづけてゆかねばならない、なぜそうなのかも理解できず、この檻から外に出られる希望もなしに…」
    こんなに素敵な童話を書いた人の台詞とは思えなかった。それでブッツァーリに興味を持って、他の本も読んでみようと思った。

    二度の世界大戦を体験した世代の人が、人生を悲観するしかなかったのも、仕方のないことかも。私はすべてを決めるのは自分だと感じる。自分を取り巻く世界。自分の感情。すべてはコントロールできるという前提で、そうであるように努力して生きたい。

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著者プロフィール

1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短篇集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『絵物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。

「2022年 『ババウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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