ねずみ女房 (世界傑作童話シリーズ)

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レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (52ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834005400

感想・レビュー・書評

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  • 来年の干支に合わせて「ねずみ」の登場する話を探していたら、この本を見つけて久々の再読。初版は1977年。
    ところが今読み返しても古さは全くと言ってよいほど感じない。
    ストーリーテリングの巧さと石井桃子さんの翻訳の良さか。
    有名なお話なので、ご存じの方も多いかもしれないが、今更ながら載せてみる。

    バーバラ・ウィルキンソンさんの家に住むねずみの夫婦。
    このめすねずみの方が、他のねずみとは少し変わっている。
    それは「今持ってない何かが欲しい」と望んでいること。
    それが何なのかは、自分でも分からない。ただ、何かが満たされない。
    おすねずみにはそれが不満でもある。
    ある日この家で、鳥籠に入れられたハトを発見しためすねずみは、餌の調達をしながらだんだん言葉を交わすようになる。
    ハトが語る自由な頃の世界は、めすねずみの心を惹きつける。
    「風のにおい、木々のざわめき、それらが失われた今は生きる意味もない」・・・
    ハトが失ったもの、それこそが自分が得られなかったものであると気が付いためすねずみは・・

    これは1951年に書かれた作品で、ゴッデンはこのとき44歳。
    専業主婦が「ここではないどこか」「これではない、何か」を望むなど、到底理解を得られなかったことだろう。
    めずねずみ自身も、自分の気持ちを言い表すことさえ出来ない。
    何か新しい体験をしたい、外の世界というものを見てみたい、
    そこで新しい自分を発見したい、そしてそれを肯定して生きたい、
    そんな些細なことも許されない時代がどんなに長かったことだろう。

    ある夜、めすねずみはとうとう行動に出る。
    鳥籠を渾身の力を込めて開け、ハトを逃がすのだ。
    そんなことをしたら二度と話相手もいなくなると知っていて。
    そして、窓の向こうの夜空に輝く星を見る・・
    ここのめすねずみの心情とその後の経過が非常に心に残る描写なので、ぜひともお読みいただきたい。

    小学校中学年くらいからとあるが、いやいや、これは大人向け。
    特に女性の皆さんにおすすめ。

    めすねずみに共感しすぎるとおすねずみが悪者になりそうだが、決してそうではない。
    彼女を現実に引き戻す重要な役目を担っている。
    めすねずみは元の暮らしに戻り、少し変わったおばあちゃんねずみとして孫たちから大変尊敬されることになる。
    あの日勇気を出して失ったことで、もっと大きなものを得たのだから。
    主人公の心の動きをそれは丁寧に描いた、ルーマー・ゴッデンの名作。

    佐野洋子さんは「不義密通の話」とどこかで解説されていたが、
    そこまで深読みせずとも楽しめます。

  • 自分でものを見るということ。
    自分の目で確かめるということ。

  • ウィルキンソンさんの家に住み、この家が全世界と思って生きてきた、女房ねずみ。
    我儘なオットと、小さな子どもたちを抱え、日々の生活に追われる。

    でも彼女は他のねずみとはちょっとちがう。

    窓ガラスを通して見る、遠くの庭の花々や、木々に憧れを抱いていた。

    ある日、金ピカの鳥かごの中にある豆を取ろうとカゴに入り、そこにはハトがいることに気づく。

    そしてハトとはなかよくなり、ハトから外の世界のことを聞かせてもらうことが、何よりも楽しみになっていく。、ハトも、捕らわれ、飛べなくなってしまったやるせない身の上から、
    女房ねずみと話すのを唯一の楽しみとしている。

    オットに耳を噛まれようが、外の世界とハトが気になって仕方ない女房。

    彼女の決断は。。



    素敵なお話だった。まるで恋みたいに。
    フランス文学かと思った!

  • 河合隼雄推薦の書。
    無意識の世界へ導くアニムスがハト。
    見かけは変わらないけど飛ぶということを知ったねずみ女房は何か違うと思われていた、というところがいい

  • 2015.9.19市立図書館
    40ページあまりのささやかなお話。
    このお話については、いろいろな批評がでているけれど(河合隼雄や赤木かん子、清水真砂子のは読んだが他にもあるらしい)、わたしにとって、めすねずみの鳩への感情は友情とも恋・愛情ともちがう、でもとても尊い気持ちだという印象だった。そしてそれは、鳩から見たことのない世界の話を聞くことでしだいに養われた「想像力」によってうまれた感情なのだと思う。
    遠いものへ憧れ、他者への共感、そうした気持ちを通じて行動する源泉である想像力をもって、ねずみはちょっと変わった、でもひいひいまごたちから一目置かれる存在になり得たのだろうな。想像力を得ても、ねずみは自分のテリトリーから出て行かず、相変わらずの暮らしのまま老いたけれど、それでもねずみはしあわせだったのだとわたしは思う。

  • 自由。
    わたしが何よりも大切なもの。
    社会の中で生活する以上、たくさんの制約があり、家族がいる以上、たくさんの責任があり。でも、心は常に自由でいたいのです。時折読み返すたび、そんなことを考えます。

  • <THE MOUSEWIFE>
      
    装丁/辻村益朗

  • 毎日に忙殺されて、夢見ることを忘れちゃいけない。

  • 面白かった。小さい世界しか知らないねずみが、広い広い空を見上げて、知らない世界を思うのか。鳩を逃してあげても、自分も外に行くわけじゃないのがいいな。自分の知らない世界を夢見て楽しむやり方だってあるよね。冒険だけが素晴らしいわけじゃない。誰の心だって自由でいいはず。子供や孫たちの中にも、空を見上げる子はいなかったのかなあ?あとこれ、人間の子供はどう詠むんだろ?

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著者プロフィール

ルーマー・ゴッデンRumerGodden1907~1998。英国サセックス州生まれ。父の仕事の関係で、生後六カ月で当時英国領だったインドに移り住む。十二歳のときに英国へもどるが、その後もインドとを行き来して暮らした。一九三五年に作家として活動をはじめ、おとな向けや子ども向けに数々の作品を生み出した。作品は長編小説、短編小説、戯曲、詩など多岐にわたる。日本で紹介されている子どもむけの本に、『人形の家』(岩波書店)、『ねずみ女房』(福音館書店)、『バレエダンサー』(偕成社)、『ディダコイ』(評論社、ウィットブレッド賞)、『ねずみの家』『おすのつぼにすんでいたおばあさん』『帰ってきた船乗り人形』『すももの夏』などがある。

「2019年 『ふしぎなようせい人形』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ルーマー・ゴッデンの作品

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