- Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834007077
感想・レビュー・書評
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昔話ってやっぱり面白いなぁって思った一冊。
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最近、日本の昔話や世界のメルヘンをとても楽しめるようになった娘。
中でも、この「やまなしもぎ」は「読んで!」の頻度が高い1冊。
病気のお母さんのために、やまなしを取りに行く3人の兄弟。まずは長男が山に行くが帰って来ない。心配した次男が行くが、また帰って来ない。2人とも、なしを取ろうとして恐ろしい沼の主(ぬし)に見つかり、食べられていたのだ。
兄達を心配して、三男が山に出かけたところ、古い切り株に座った婆さまが「水をくんできてくれ」と話しかけてきて…
この昔話のことを最近まで「心優しい親切な末っ子が知恵や不思議な力を授かって、目的を成就する。不親切な兄達は痛い目にあう」類の話だと思って読んでいた。
でも、この絵本(平野直・太田大八版)をずっと読み続けているうちに、印象が変わってきた。
兄2人は決して「不親切で意地悪な子」ではない。「病気の母のためにただ先を急いでいる子」なのだ。
兄2人は、これまでの経験から総合して物事に優先順位をつけたり、見知らぬ大人に警戒する判断力を既に身に付けた年頃のようだ。
(だいたい、水をくんできてくれと頼むお婆さんの外見がとびきりおっかない。そりゃ警戒もする)
末っ子の三郎は、まだ幼く、疑う心もあまり持ち合わせていない。その場その場で目にするもの耳にすることを、ありのままに素直に受け入れる、より「天に近い存在」なのだと思う。
太田大八の絵でも、兄達はキッと意思の強そうな顔や慎重そうな顔立ちで描かれているが、三郎はまだ性格のクセが見えにくい、あっさりと素直な顔の描かれ方をしている。
三兄弟みな母想いの子だから、水を汲んであげなかった兄2人にも、不思議なお婆さんは無事生き延びるための知恵を授けたのだと思う。
ただ、兄達はせっかくの知恵を役立てることができなかった。お婆さんの話を軽く流していたのか、いざその場に来ると自分なりの判断をしてしまったのか。経験がかえって判断を誤らせることは、現代の私たちにもよくあることだ。
三郎は、素直に水を汲んできたので、お婆さんは沼の主と戦う刀と兄達を救う椀をくれる。不思議な力を持つ道具を扱えるのは、より天に近い存在の幼子の三郎だということかもしれない。
この絵本の中では、
・沼の主に体現される山の恐ろしさ
・親を思う子への天の慈悲
・幼いうちから経験を積まずには生きていけない厳しさと無垢の強さ
これらが大きな自然の内に当たり前に共存してうごめきあっている。
読む回数を重ねるごとに、単なる戒めの話にとどまらない、懐の深い絵本だなぁと実感する。
その懐の深さをそのまま絵にしたような太田大八の挿し絵もすごい。
全体的に引きの構図が多く、葉っぱや草の1つ1つまで描きこまれている。物語展開がわかりやすいだけでなく、自然も超自然も親子愛も慈悲も魔物も、平然と一緒くたにしている絵という印象。
最後に、やまなしを食べて元気になったお母さんと3兄弟の幸せそうな暮らしぶりが描かれている。これで経験を1つ積んだということなのか、眉が少し凛々しくなった末っ子三郎の表情が印象深い。 -
やまなしもぎ、ってなんだろう?
あっ、そうか!
「山に、成る、梨を、もぎにいく(収穫する)」ってことか!
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昔むかし、あるところに3人の兄弟とお母さんが住んでいました。
しかしお母さんは体の具合が悪く、ふせっていました。
「山梨が食べたい」というお母さんの願いをかなえようと、長男の“たろう”は山に入っていくのですが…
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図書館の昔話コーナーにあった1冊です。
「やまなしもぎ」の意味が最初わかりませんでしたが、お話を読んでいたらわかりました。
梨といえば果樹園で栽培されているイメージしかなかったので、「そうか、昔は山に生えている梨の木から採って食べてたのか」と思いました。
巻末の著者紹介のページによると、この「やまなしもぎ」という昔話は、「岩手県八重尋常小学校の当時高等2年生だった小原豊造君の話を、著者の友人の古川安忠氏が報告してくれたもの」(引用)だそうです。
ということは、小原くんのお話が古川氏に伝わり、著者の平野さんの元までこなければ、このお話は永久に失われていたかもしれないのです。
そう考えると、本という存在のありがたさをひしひしと感じます。
(ちなみに尋常小学校とはWikipediaによると、“明治維新から第二時世界大戦勃発前までの時代に存在した初等教育機関の名称“だそうで、高等2年は現代の中学2年生くらいの年齢のようです)
このお話は、病にふせっているお母さんのために、たろう、じろう、さぶろうが、順番に山に入って山梨をもぎにいくお話です。
途中までは「三匹のこぶた」のような展開で、たろうとじろうは山梨を持ち帰ることができません。
たろうがひどい目にあうところと、さぶろうが活躍するところは、ページ数が多くさかれていますが、真ん中のじろうの顛末は、たろうとほぼ同じため、さらっと終わってしまいます。
じろう、哀れなり。
小2の娘に読み聞かせをしたところ、じろうのところまで読んだあたりで「わかった!じろうも失敗して、さぶろうは賢いから成功するんだね!」と、気づきました。
しかし、そこまでわかっていてもなお、「やまなしもぎ」には「やまなしもぎ」の展開があり、「三匹のこぶた」とは細かなところが違っていますので、娘も最後まで楽しんで聞いてくれました。
兄弟3人を襲った沼のぬしが、最後にひっくり返っている絵は、意外とグロい絵でしたが、沼のぬしの異様な様子をうまく描いた絵だなと思いました。
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こゆきうさぎさん、こんにちは(^^♪
挿絵は太田大八さんでしたっけ?
このお話大好きで、梨の出回る季節によく読みますよ。
3人兄弟の末...こゆきうさぎさん、こんにちは(^^♪
挿絵は太田大八さんでしたっけ?
このお話大好きで、梨の出回る季節によく読みますよ。
3人兄弟の末っ子が賢いという王道パターンですが、冒険談としても面白いし上の兄ふたりも見捨てずに助けるというのが好きですね。
(グロイなと思ったらむしろあっさりと読んでくださいませ)
残念なことに園芸種の梨しか知らないので、そこだけが少々寂しいです。2020/11/17 -
そうです、挿し絵は太田大八さんです。昔話によく合う、にじんだ色使いがいいなと思いました。沼の主が腹ばいになっているところが蛙みたいに見えて、...そうです、挿し絵は太田大八さんです。昔話によく合う、にじんだ色使いがいいなと思いました。沼の主が腹ばいになっているところが蛙みたいに見えて、ぬるっとしたグロさがありましたが、人間とは違う異様な存在としての主は、絵によくあらわれていました。わたしも梨は売られているものしか知らないです(^^;)山になる梨はきっと今ごろ、動物たちのごちそうになってるでしょうね♪2020/11/17
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なんという豊かな世界だろうと、圧倒される民話である。
病気の母親のために「おくやまにやまなしもぎにいく」のが、3人の兄弟。
ひとりめのたろうは、あえなく失敗して沼の主に飲まれてしまう。
ふたりめも同じ。
そして3番目は・・と、わくわくする冒険の話としても楽しい。
兄弟たちに「あかいかけわん」を出して水をねだるばあさま。
「あかいかけわん」の意味を、子どもたちはどう解釈するだろう。
そして、3つに分かれた道に3本の笹が生えていて、「ゆけっちゃかさかさ」と笹がなるのが正しい道なのだ。
間違った道は「ゆくなっちゃ がさがさ」となっている。
この、不思議な言葉の繰り返しも、独特のリズムを持って心に残るだろう。
笹が鳴るだけでなく、きつつきもふくべも音を立てて登場する。
自然の不思議さや大きさが、随所に感じられる。
やまなしがいっぱいなっている様は「ざらんざらんとなっている」と表現されている。
よくある3人きょうだいの話のパターンでは、末っ子が賢いという描写が多いが、この昔話はそうではない。
母親を思う気持ちは、みんな同じなのだ。
では何故、末のさぶろうだけが上手くやまなしを取れたのか。聞き所はそこだろう。
更に、無事にやまなしをとって、ついでに兄たちも救い出して帰還する。
それを食べると、母親の病気は「けろけろっと」治ったというのだ。
この結末がまた良い。
子どもが冒険に出ても、危険な目にあっても、元の場所に戻れるというのが、子ども向けの話の基本。
民話の語り口が、淡彩で描いた雰囲気たっぷりの挿し絵で見事に盛り上がっている。
「やまなし」は、文字通り山の中に自生する梨のことだろうが、残念ながらそちらは見たことが無い。
約10分。一年生くらいから。 -
5歳からおすすめ。
日本の昔話は本当に面白い。
日本各地で伝承されてきたものや、私たちがテレビや本でよく知っているもの以外にも、本作品のような魅力的なものがあります。
この絵本は、加えて絵も魅力的です。
表紙だけですと、地味な印象を受けますが、ぜひ読んでほしいです。
加えて思うのは、本作品のような、認知度の低い昔話を、子ども向けに絵本化されているものを、まとめたものはないか、ということです。
あれば、紹介してほしいです! -
福音館
内容:
三兄弟が病気のお母さんに食べさせるため順番になしをもぎに出かける。ところが太郎と二郎は沼のヌシに飲まれてしまい、三郎の番になる・・・。
太田大八さんが描く沼のヌシが不気味!で面白い。
「ゆけっちゃかさかさ」「ゆくなっちゃがさがさ」
のフレーズが子ども達のお気に入り、私よりも上手に歌っていた。長男次男が失敗してヌシに食われ、3人目の末っ子が成功するお話。 -
昔ばなしの典型的なストーリー展開で、安心の終わり方。
愛、勇気、スリル、、いろんなものが凝縮されて最高の煌めき。大好きです。
すべての人にチャンスは与えられていて、でもそれを掴めるかどうかは、その人次第。