天動説の絵本 (安野光雅の絵本)

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  • 福音館書店
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感想 : 77
  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834007510

感想・レビュー・書評

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  • 「天動説を信じていた時代の人々の世界の捉え方」に焦点を当てた珍しい絵本です。

     地球が太陽の周囲をまわっていることは、今では小学生でも知っている常識です。物知りな子なら、ガリレオが地動説を唱えて宗教裁判にかけられたことや、その350年後、ガリレオの正しさを認めたキリスト教会が彼の有罪判決を取り消したことまで、知っているかもしれません。
     
     科学史上もっともドラマティックなこのエピソードは、ガリレオを科学好きな子供たちのヒーローにしました。しかし、それはともすれば、ガリレオの知見を受け入れられなかった昔の人々を見下してしまう結果になりがちです。「そんなこともわからなかった昔の人は、なんて馬鹿だったんだろう」と。

     それではいけない、と作者は絵本を通して私たちに語りかけます。自分で宇宙を観測したわけでもないのに、「地動説は当たり前」と言うのでは、ガリレオを裁判にかけた人々と何も変わらない。それでは天動説の時代から何も学んでいないことになってしまう、と。

    「昔の人びとがまちがっていたことを理由に、古い時代を馬鹿にするような考え方が少しでもあってはいけません。今日の私たちが、私たちにとっての真理を手に入れるために、天動説の時代はどうしても必要だったのです。」(あとがきより)

     なぜ昔の人は天動説を信じていたのか。なぜ地動説を受け入れるまでに、これほどの犠牲と時間が必要だったのか。その歴史を知って初めて、地動説を理解したと言うことができるのです。地動説を唱えて火あぶりにされたブルーノのような犠牲者を再び出さないためにも、歴史を知ることが大切なのだと作者は強調します。

     科学の進歩がスピードを増し、10年前の常識が今日には通用しなくなる、そんな時代に私たちは生きています。私たちに必要なのは、知識そのものよりも、知識の信憑性を見極めることのできるリテラシーと、変化を受け入れることのできる柔軟性なのかもしれません。この美しい絵本は、そう諭してくれているように思えます。大人が読んでも面白い、奥の深い絵本です。

  • 古文書のような、歴史書のような絵柄と文章の絵本。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    天動説が信じられていた時代について書かれた絵本。
    古文書に描かれたようの雰囲気の絵であり、過去の時代に描かれたものを現代で読んでいる感覚になりました。

    今でこそ、天動説ではなく地動説が正しいとされていますが、それを人々が「正しい説」と認めるまでには、これだけの年月と幾多の犠牲があったことを、この絵本は教えてくれます。
    一見、「なんで地動説を信じないんだよ?!」と思ってしまうかもしれませんが、物事を判断する指標は自分の経験則しかない時代、説の正しさを判断するための方法もわからなかった環境を考えると、おし黙るしかありません。
    そんな中で、新しい考え方を提唱するということは、まさに命がけだったのですね。

    小学校中級~大人まで、となっていますが、読み聞かせには難しい絵本です。
    自分のペースでゆっくりと読む方がいいかもしれません。

  • 地動説が認められるまでには、天動説が常識の時代がありました。
    今では地動説が正しいと教科書にも書かれていますが、辿り着くには大変な苦労がありました。
    地動説が納得されるには天動説が必要で、その時代も説も無くてはならないものだったのです。
    そんな濃い内容が児童向けの絵本になった一冊。

  • この絵がすごい。
    最後こんな!地球って回ってんだねー。M13

    ちびちゃんの音読用に借りたけど、内容が思ったよりも難しい。天動説と地動説の説明が子ども向けに描かれた絵本と思っていたら、違ってたし。
    でも、人間がいろいろと考えて迷って、行動して、だから、今があってということがじんわりと伝わる素敵な絵本だった。
    ページを捲るたびに平らな地面に曲線が出てきて、この上に描かれる人々の生活や事件が何度見ても飽きない。
    人々の歴史を旅する絵本。

  • 人類は過ちを繰り返していますね。

  • 病気が広がって多くの人が死んじゃって悲しかったです。

  • 面白い(╹◡╹)すごくふわふわしてる感じって感じです╰(*´︶`*)╯♡

  • ある野猫の研究者から聞いたことがある。「夜行性である」という6文字でさえ、膨大な時間を費やし観察したデータがなければ書けないのだと。

  • 対象年齢は「小学校中級~大人まで」とされている。でも実際は大人向けのような気がする。いままで学んできた、当たり前と思う真実の積み重ねの下に、かつて真実とされていたいくつもの誤りがあるのだと知ってしまったひと向け。あるいは、それをまだ知らないひとが累々たる誤りを犠牲にしていまここの知見に自分は立つのだとこの絵本で出逢うのかもしれない。


    人類の原始から紆余曲折しながら積み重ねてきた知識。進み、加えて、崩し、後戻りし、失ってまた迷いながら新しく得てきた知識。
    その最新の理論を、私たちはいきなり教えられる。どんな過程があって、どんな葛藤をくぐって、その地点にまでやっと辿りついたかも知らないまま、現時点での最新にして正しい知識を与えられる。
    それはとても幸福で、そしてとんでもない欠落なのかもしれない。この成果物の裏側にどれだけの流れた血や踏みにじられた尊厳、不幸な混沌があったことか…。思い至らぬままで正しいと胸を張る。その歪つ。

    聖書の時代の私たちにはその時代の真理までの理解しかできなかった。一歩一歩私たちは進んできて、いま、2000年前のあのときより、聖書のあの時代より、神さまに近づいてきているのだ。

    私たちは立ち止まっていない。
    真理という神さまの方向へ進んでゆく。神さまとはきっととてもシンプルで美しい、宇宙を形づくる法則なのだろう。

  •  天動説が信じられていたころの話を,素敵な絵と文章で綴った絵本。安野光雅さんの科学への愛が感じられます。この本が扱っているのは天動説。地動説ではない点がユニークであり,安野さんのメッセージでもあります。
     安野さんは,「解説とあとがき」で次のように述べています。

     迷信の時代の人びとは、今から思うとたくさんのあやまちをおかしました。しかし、それは今日の目で見ているからであって、当時の考え方からすれば、むしろ正しいことだったといえる点もあります。また、天動説を信じていた昔の人びとがまちがっていたことを理由に、古い時代を馬鹿にするような考え方が少しでもあってはいけません。今日の私たちが、私たちにとっての真理を手に入れるために、天動説の時代はどうしても必要だったのです。(「解説とあとがき」より)

     天動説をバカにしている現代の人たちが,星占いや血液型性格診断や今日の運勢に一喜一憂している。こんな姿を中世の人たちが見たら,「なんだ,オレらよりも迷信信じているじゃん」と言って笑うかもしれませんね。だからこそ,今一度,天動説の時代を体験してください。みんな,真剣だったんだからね。

     そうそう,絵本の工夫として地面の描き方に気づきました。最初,平面だった地面が,だんだんと曲面と成り,そのうち球体になっていきます。宇宙から地球に向けられているカメラが,ワイドになっていくのです。

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著者プロフィール

安野光雅 1926年、島根県津和野町に生まれる。『ふしぎなえ』『さかさま』『ふしぎな さーかす』『もりのえほん』『はじめてであう すうがくの絵本1~3』『あいうえおの本』「旅の絵本」シリーズ全十巻など絵本多数。『考える子ども』『絵のある自伝』などエッセイ多数。『ABCの本』、『昔咄きりがみ桃太郎』で芸術選奨文部大臣新人賞。他に、国際アンデルセン賞、菊池寛賞をはじめ、国内外の数多くの賞を受賞。2020年、逝去。

「2022年 『旅の絵本Ⅹ オランダ編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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