天動説の絵本 (安野光雅の絵本)

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  • 福音館書店
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レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834007510

感想・レビュー・書評

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  • 「天動説を信じていた時代の人々の世界の捉え方」に焦点を当てた珍しい絵本です。

     地球が太陽の周囲をまわっていることは、今では小学生でも知っている常識です。物知りな子なら、ガリレオが地動説を唱えて宗教裁判にかけられたことや、その350年後、ガリレオの正しさを認めたキリスト教会が彼の有罪判決を取り消したことまで、知っているかもしれません。
     
     科学史上もっともドラマティックなこのエピソードは、ガリレオを科学好きな子供たちのヒーローにしました。しかし、それはともすれば、ガリレオの知見を受け入れられなかった昔の人々を見下してしまう結果になりがちです。「そんなこともわからなかった昔の人は、なんて馬鹿だったんだろう」と。

     それではいけない、と作者は絵本を通して私たちに語りかけます。自分で宇宙を観測したわけでもないのに、「地動説は当たり前」と言うのでは、ガリレオを裁判にかけた人々と何も変わらない。それでは天動説の時代から何も学んでいないことになってしまう、と。

    「昔の人びとがまちがっていたことを理由に、古い時代を馬鹿にするような考え方が少しでもあってはいけません。今日の私たちが、私たちにとっての真理を手に入れるために、天動説の時代はどうしても必要だったのです。」(あとがきより)

     なぜ昔の人は天動説を信じていたのか。なぜ地動説を受け入れるまでに、これほどの犠牲と時間が必要だったのか。その歴史を知って初めて、地動説を理解したと言うことができるのです。地動説を唱えて火あぶりにされたブルーノのような犠牲者を再び出さないためにも、歴史を知ることが大切なのだと作者は強調します。

     科学の進歩がスピードを増し、10年前の常識が今日には通用しなくなる、そんな時代に私たちは生きています。私たちに必要なのは、知識そのものよりも、知識の信憑性を見極めることのできるリテラシーと、変化を受け入れることのできる柔軟性なのかもしれません。この美しい絵本は、そう諭してくれているように思えます。大人が読んでも面白い、奥の深い絵本です。

  • 地動説が認められるまでには、天動説が常識の時代がありました。
    今では地動説が正しいと教科書にも書かれていますが、辿り着くには大変な苦労がありました。
    地動説が納得されるには天動説が必要で、その時代も説も無くてはならないものだったのです。
    そんな濃い内容が児童向けの絵本になった一冊。

  • 絵本の出来は何によって決まるのかは分からないが、この絵本はいわゆる絵本ではない。子供に読み聞かせたり、人としての道や心のあり方を分かりやすく説いたようなものではない。そういう意味では、よくできた絵本とは言えないかもしえないが、何をもってこの絵本を読ませるか、または大人自身が読むかによっては大変な教養に通ずるものだと思う。

    天動説から地動説への逆転を分かりやすく描いたものではなくて、今の私が「歴史」というものをどう見つめるか、を教えてくれる大切な教材である。歴史家のカーは「歴史とは過去との対話である」と言ったが、まさにその金言が凝縮されているような深みがある。

    娘の絵本を選びに立ち寄った本屋で素敵な作品と出会った。まさに一期一会、神様ありがとう。

    17/3/1

  • 地球が宇宙の中心だと信じていた頃の世界を描いた作品。

    地上は静止し、空が地上の周りを回っているという説が正だと云われていた時代のなかで、その説に翻弄される人々がいました。過去に正しいとされていた天動説は、時代の流れのなかで技術面の進歩とともに地動説へと修正されていきます。同じように現在100人が100人“正”だと唱える事柄を、未来では真反対な事柄として捉えられているかもしれません。
    歴史書として、天文学書として、美術書として、もちろん絵本として、様々な角度で味わえる1冊です。

  • たまたまこの時代に生まれたのに過ぎないのだ、とわかった。ガリレオの時代に生きていたら、ガリレオの言うことを信じなかったかもしれない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ガリレオの勇ましさ」
      そうですね、、、
      ところでピーター・シスの絵本「星の使者」は読まれましたか?此方も素敵です。
      「ガリレオの勇ましさ」
      そうですね、、、
      ところでピーター・シスの絵本「星の使者」は読まれましたか?此方も素敵です。
      2014/04/21
    • はるかわさん
      読みました! 素敵でした! nyancomaruさんにおすすめして頂いた「青猫島コスモス紀」も読んだのですが(とても素敵な絵本でした。ありが...
      読みました! 素敵でした! nyancomaruさんにおすすめして頂いた「青猫島コスモス紀」も読んだのですが(とても素敵な絵本でした。ありがとうございました)、星とか宇宙とかいうものは、どうしてこうも想像力を刺激するのでしょうね^^
      2014/04/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どうしてこうも想像力を刺激するのでしょうね^^」
      下から眺めるだけしか出来ない、遠い世界だからかなぁ。。。
      「青猫島・・・」は、硬質な...
      「どうしてこうも想像力を刺激するのでしょうね^^」
      下から眺めるだけしか出来ない、遠い世界だからかなぁ。。。
      「青猫島・・・」は、硬質なタッチが透明感のあるイメージを引き立てていますよね。
      2014/04/28
  • 昔の人はどう考えていたのか、それを知ることでより星を楽しめるのでは?

  • 絵がかわいい。科学史っぽい

  • 2019.5〜読了

  • 期待したほどよくなかった
    あまりインテリジェンスを感じない

  • 太陽が昇り、朝が来る。太陽が沈み、夜が訪れる。それは地球が動いているから。今日地動説は常識となっている。しかし、太陽や星々の方が動いている、所謂天動説が信じられていた時代があった。本ではその時代の人々を回顧する。コンセプトがよいと思った。中高生、そして大人に玩読頂きたい。一方小学生には難しいのでは。殆どノンフィクションと思ってよいのだろうが固有名詞は出てこない、時間経過が分かりにくい。歴史を知っていれば、マルコポーロ、ガリレオ、フーコーなどの名が想起される。(因みに、地球がまるいことは比較的古くから知られてはいた。ただ地球の反対側の住人は落下しないのか、ニュートン以前は説明がつかなかっただろう。)

    物理学者たちは宇宙の成り立ちを懸命に解き明かそうとしているが、それも数百年の後、学説がどのように変化しどのように振り返られるのだろうか。

    ほんとうにする、は死語か方言かよくわからなかった。意味はとれるが少し不思議。

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著者プロフィール

安野 光雅(あんの みつまさ)
1926年、島根県津和野町に生まれる。BIB金のリンゴ賞(チェコスロバキア)、国際アンデルセン賞、講談社出版文化賞、菊池寛賞などを受賞。1988年紫綬褒章を受章し、2012年文化功労者に選ばれる。
主な著作に『ふしぎなえ』「『旅の絵本』シリーズ(全8巻)」(福音館書店)、『本を読む』(山川出版社)、『小さな家のローラ』(朝日出版社)などがある。いまなお『旅の絵本Ⅸ』、『いずれの日にか国に帰らん』など新刊を続々刊行。ほかにも多くの書籍の装丁を手がける。
2001年、津和野町に「安野光雅美術館」、2017年、京丹後市の和久傳の森に「森の中の家 安野光雅館」が開館。

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