いちごばたけの ちいさなおばあさん (こどものとも傑作集)

  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834009637

感想・レビュー・書評

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  •  本書は1973年発表ながら、今読んでも全く色褪せない、わたりむつこさんの斬新な設定が面白くも、最後には心温まる気持ちにさせられるファンタジーです。


     いちごばたけの土の中に住む、ちいさなおばあさんの仕事は、いちごの実が成った時に赤い色をつけていくことで、その年は例年よりも暖かかったため、予想よりもいちごの成長が早く、それを見たおばあさんは、慌てて百段の階段を駆け下りて(すごい!)、その準備を始めることに。

     土の中といっても、おばあさんの住居は、その断面図の絵からも分かるように、葉っぱを敷物にした上にある椅子や、ベッドやお風呂も付いた、快適そうな部屋もあれば、お日様の光をたっぷり吸い込んだ水が、木の根っこをつたって落ちていく様に、まるで自然の神秘が凝縮されたような、大きな水瓶が印象的な仕事場もあってと、そうした設定を見ているだけで、普段どのように生活しているのだろうとか、いちごに、どのようにして色をつけていくのだろうといった、想像力も相俟って、よりワクワク感を募らせてくれる。

     そんなファンタジーの要素が加わりながらも、おばあさんの仕事は、とても地道でアナログなのがまた楽しい上に、その仕事ぶりの若々しさや精力的なことといったら、見ていて、とても微笑ましいものがありながら、それは、いちごを甘くさせるための使命感による、真摯な思いであることも感じさせる。

     そうした思いは、汲み上げた水桶を肩にのせながら階段を上がり、地上に出てから、階段を下りることを繰り返したと思ったら、今度はつるはしを持って緑の石を掘り出す作業を、手が豆だらけになろうと構わず、昼も夜もずっと続けている姿からも感じ取れて、その苦労が報われたのか、ようやくいちごに色をつけるものが出来上がった。

     そして、いちごにどうやって色をつけるのかと思ったら、なんとシンプルにも『はけ』であり、その染めているおばあさんの表情が、なんとも幸せそうであることには、いちごへの思いを如実に物語っているようで、特に、周りをほのかに薄ピンク色に染めた夕暮れの中で、蔓に腰掛けて、いちごに色を染めているおばあさんの見開きの絵には、そんな幸せのオーラが絵全体に漂い広がってゆくような、自然との素晴らしき一体感を感じさせてくれた。

     しかし、物語はこのままでは終わらずに、ひとつの波瀾が訪れることとなり、そこで悲しみに暮れるおばあさんの姿には、気持ちがストレートに伝わってくるだけに、読んでいる私も思わず感情移入してしまったが、その純粋な涙に応えるかのように、やがて奇跡が起こる。


     ひとつの物語で、笑ったり驚いたり泣いたり、百段の階段を千回も駆け上がったりと、その目まぐるしくコロコロと変わる愛らしさが、魅力のおばあさんは、その体が小さいこともあり、どこか妖精を連想させるものがあった。

     妖精といえば、その独特な存在感は神様と人間の中間に位置付けられて、よく子どもの姿で表現されることが多いが、人間は年齢を重ねてゆく毎に子どもに還っていくともいうし、また、ここでの人間と同じ普段着の姿に、より愛着心が湧いたこともあって、本書のちいさなおばあさんは、まさに妖精のように天真爛漫で、その気持ちも若々しく、とても可愛らしい、そんな姿には子どもとの共通点もあるようで、子どもとおばあさんが時に相性がぴったりなのも何だか分かるような、お互いの持つ神々しさは、どこか妖精に近い神秘性があるようにも思われる。

     また、そうした神々しさだけではなくて、とても現実的とも思えた、おばあさんの雰囲気は、中谷千代子さんの絵が大きいと思い、その水彩で淡く描かれた素朴で手作り感のある優しい風景画の中で伸び伸びと動く、ちいさなおばあさんと、大きさの違いによる、それぞれのものたちとの対比もダイナミックに描く物語としての面白さと、絵全体に感じられた優しさは、そのままおばあさん自身に感じられた優しさであり、そうした雰囲気は、まるですぐ隣に佇んでいて優しく微笑んでくれるような、とても現実的で身近な親しみやすさも兼ね備えた、そんな懐の深い温かさがあるからこそ、ファンタジーでありながら、もしかしたらと思わせてくれる夢のある世界を見せてくれたのが、何よりも素晴らしいと思われたのであった。

  • 子どもの頃に大好きだった一冊。
    おばあさんの仕事を手伝ってあげたいと思っていた。。。

  • いちごをまっかにするやり方がロマンチックで丁寧で素敵。おばあさんの家の中にあるはっぱの敷物やキルトのかかったベッドが素敵。生活を楽しんでいる感じ。緑色の石は、同じ作者の『はなはなみんみ物語』でもキーになっていた。

  • 小さな頃に出会って以来、何度も何度も読んだ絵本。ワクワクして、涙を流し、ほっとしていました。

  • 小さいときに読んだ絵本。
    勝手にスプーンおばさんとリンクさせていた。
    『近くの畑なんかの下には、こんなおばあさんがいるのかも…』
    なんて思ってちょっとわくわくしたのを覚えています。
    今でもいちごを食べるときに、おばあさんのことを思い出します。

  • いちごはなぜ赤くて甘いのだろう?という疑問が、この本を読めば解決します。
    いちご畑の土の下には「あたしゃ いちごばたけの ばんにんさ あかい いちごは あたしが つくる あたしが はけもちゃ たちどころ はたけの いちごは あまくなる とろろっとんとん とろろっとん」と歌う、ちいさなおばあさんがいました。このおばあさんがとっても魅力的。自分の役目に誇りを持っていて、強くて、やさしいのです。

  • 幼稚園の読み聞かせで感情移入しすぎて泣きそうになりました。
    自分が小さいときに読んだ大好きな本です。

  • 緑の石を砕くシーンが大好き

  • とてもかわいいおはなし。優しい絵。

  • 図書館本。次女に借りた絵本を長女がもれなく読む。イチゴに色付けする仕事をするおばあさん。色付けした翌朝、畑は雪でおおわれて、イチゴは…?

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著者プロフィール

1939年宮城県生まれ。東京女子大学日本文学科卒業。「はなはなみんみ物語シリーズ・全3巻」(岩崎書店)で産経児童出版文化賞、『もりのおとぶくろ』(のら書店)で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。その他、絵本に『いちごばたけのちいさなおばあさん』『こよみともだち』『てんさらばさらてんさらばさら』(以上福音館書店)など多数。東京都在住。

「2021年 『こうさぎとおちばおくりのうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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