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本 ・本 (32ページ) / ISBN・EAN: 9784834012422
感想・レビュー・書評
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あったとさ あったとさ
ひろい のっぱら どまんなか
きょだいな ピアノが あったとさ
こどもが 100にん やってきて
ピアノの うえで おにごっこ
キラリラ グヮーン
コキーン ゴガーン
わらべ歌のような長谷川摂子さんの文章にのせて展開される、100人の子どもたちが、巨大化されたいろんなものたちと、本能の赴くままに遊び尽くす物語は、これだけ非現実的な設定であるにも関わらず、全く違和感の無い、夢のある微笑ましさで満たされていて、おそらくそれは公園などで遊んでいる姿の延長線上と思われながらも、どこか神々しさの漂う巨大なものと100人の子どもたちとが、まるで対等であるような感覚には、子どもの持つ無限の可能性の素晴らしさを唱えているようでもあり、それくらいお互いの関係性がよく似合う光景だと感じられた。
また、それらの巨大なものをより迫力ある表現で描いている点として、降矢ななさん初のコラージュ(本書は1988年作)があり、最初私がそれっぽいなと感じたのは、ピアノの上で遊んでいる子どもたちで、そのまるで、ピアノの上に実際に紙で作った人形を置いたような立体感には、更に現実味を帯びた感覚を抱かせてくれたが、改めて巨大なものも見てみると、下から見上げた視点も独特なピアノの存在感や、のっぺりとした質感の石鹸に、ダイヤル式電話の神秘的な佇まいと、その前に出てくるような絵の雰囲気からして、思わず引き込まれそうな魅力があることを実感し、中でも電話の送話口から出てくるものは、まるで昔の飴やキャラメルを包んでいた紙を貼り付けたように見えた、そんな面白さも印象的だった。
そしてコラージュと共に、降矢さんの水彩で描かれた空の移り変わりゆく様は、神々しさをまとった巨大なものや子どもたちと見事に調和しながらも、その時間の経過に合わせて描かれた巨大なものとも関係性があり、例えば、シュールな中にも夕焼け空が切なさをかきたてるトイレットペーパーは、子どもたちにとって安心できる帰るべき場所を、何かが始まろうとする雰囲気が漂う早朝の桃は、誕生を表していて、更には夜空の輝く星の光とガラスとの相性も抜群な瓶であったりと、実は時間を追った繋がりにも意味があるのかもしれない、それは降矢さんの感情に訴えかける絵も加わった、物語としての面白さなのだと思う。
そんな物語は、その後も子どもたちの伸び伸びとした自由奔放な清々しい姿と共に、未来への大きな希望も見せてくれて、子どもたちが100人いれば、異世界のものを呼び出す力もあるし、天気だって変えることができる。ただそれは将来に向けた試練を暗示しているようでもあるが、100人いれば、きっと何でも乗り越えられる。そんな夢も本書の至る所で感じさせてくれながら、最後の絵は、未来の希望である子どもたちを陰ながら支える存在が必要であることを教えてくれて、それは最初からそっと見守りつつ、一緒にいてくれたきつねの存在とも重なり合うものがあった、子どもたちが思い切り子どもの時間を過ごすための、理想的な世界のあり方を築くことの大切さを知ることで実感させられた、子どもと大人の素敵な関係性でもあったのだと私は思い、そう、やっぱり子どもにとっての世界はこうでなくっちゃ!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
娘が低学年の頃学校で読み聞かせしてもらって面白くて仕方なかった本。
卒業を期に久しぶりに読んでみた。
娘の感想…なんであんなにゲラゲラ笑うほど面白かったんだろ?
…大人になったのねぇ。
このありえない感じがきっとあの頃の娘は楽しかったんだと思うわよ。
下の娘(小3)はまだ楽しめるらしい。
いつか姉のような事を言う日が来るのかな。 -
ストーリーを楽しむというよりか、言葉のリズムを楽しむ絵本。
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子供たちに読み聞かせすると
あったとさ!あったとさ!と盛り上がる。
繰り返しで次は何かなとドキドキする展開。 -
通常サイズから大きく逸脱した巨大な何かが唐突に現れる。それって「絵」としてすごくSF的だ。
何故そういうことが起きるかなんてどうでもいい。そんな無粋なことは考える必要がない。ただどーんと巨大な"それ"が存在していることが嬉しいのだ。そういう夢を描いた絵本なのだと思う。
子どもたちが大喜びしてはしゃぐ様子は素敵だし、余計なもののない原っぱという場所も空想を実現する場所として最適(個人的には街中にデカいものがいる、というシチュエーションの方が興奮するけど)。
イフを思考実験して見たことのない「絵」を想像するって魅力的だ。それを和気藹々とした様子で見せられるのならなおのこと。
ちなみにこの絵本では巨大な何かを発見する役割として毎ぺーじごと「きつね」が登場します。巨大なものに対してきつねの身体の小ささが際立ちなんだかとても可愛らしい。
「巨大なものと一匹のきつね」って絵面の素敵さは良い。私のいろんな嗜好に突き刺さる……。 -
ことばのリズムもあって、読んでいて楽しかったです。想像を膨らませながら音読していくのが楽しかったです。100人の子どもたちの中の1人だったら…どんなことししようか…と想像して読むのが、楽しかったです。
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絵が素晴らしい
コラージュ、水彩かな? -
こちらはきつねが登場人物する絵本として紹介して頂いた作品ですが、以前読んだ『きつねにょうぼう』と同じ作者さんの作品です
絵師さんは別の方なので、ぱっと見の印象は違いますが『きつねにょうぼう』にもあった独特のオノマトペの、なんというか湿り気のある面白さがたっぷりの不思議なお話しです
ひろいひろい野原に、きょだいな品物が現れて、そこへ100にんのこどもがやってきて、きょだいなもので様々な遊びをする、という、荒唐無稽な内容ですが、きょだいな品物と100にんのこどもの接し方が凄くリアルでもあるのです
きょだいなピアノであれば、鍵盤の上で鬼ごっこする子もいれば、大きなピアノの音色に耳をふさぐ子、ツヤツヤの天板に登って遊ぶ子、さまざまです
次々と、きょだいなせっけんだったら? きょだいな黒電話だったら? トイレットペーパーだったら? と、きょだい→100人のこども→きょだい→100人のこども→と、1ページずつ交互に現れる、ぐいぐいと早い展開で、グルーヴ感に溢れてます
こちらの作品の絵を担当されているのは『ともだちや』シリーズなどの降矢ななさんですが、絵もまた独特で、水彩絵具で色付けをした紙を張り合わせたコラージュに更に描き込みもされています
物体のきょだいさがリアルに感じられる遠近感があり、100人ものこどもたちの動作や表情が繊細に表現されていて、テキストの魅力も絵の魅力もたっぷりの一作です
ところで、この作品は“きつねが登場する絵本シリーズ”として読んだ作品ですが、実は物語のテキストには、きつねについての記述は1ヶ所もありません
でも、きょだいな品物の登場ページに必ず一緒にきつねが現れて、そのきょだいさにびっくりしたり、怖がったり、喜んだりしています
きょだいな何かに相対して、真っ先にリアクションをするおいしい役割、それがキツネです
様々なリアクションのキツネが可愛いのですが、どうしてこういう登場の仕方にしたんだろうと、不思議でもあります
作者のお二人とも、キツネの登場する作品を手がけてる方だから、お二人してキツネ推しなのかも知れないですね
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ひろい野原の真ん中に巨大な何かが…ナンセンス絵本のようなストーリーですが、印象的なキツネが描かれていたり、子供たちの雰囲気もどこか幻想的で不思議な感覚になる内容です。
著者プロフィール
長谷川摂子の作品





