まあちゃんのながいかみ

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (28ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834013306

作品紹介・あらすじ

読んであげるなら3才〜自分で読むなら小学校初級むき。

感想・レビュー・書評

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  •  「たかどのほうこ(高楼方子)」さんの物語には、時折、既存のありふれた価値観なんぞに捕らわれない、とにかくぶっ飛んでいる女の子が登場するが、この絵本はまさにその典型であります。


     ある日、女の子三人で午後のティータイムを優雅に楽しんでいたところ、髪の長いのを自慢にしていた「はあちゃん」と「みいちゃん」は、短いおかっぱの「まあちゃん」に、こんなことを話し出した。

    「あたしたち、まだ もっと のばすの。ねぇ」
    「ふーん、どれくらい?」
    「せなかが ぜーんぶ かくれるくらいよ。ね、はあちゃん」
    「ね、みいちゃん」

     これを聞いて、「ふふん、まだまだだね」と思ったのか、内心カチンときたのか、分からないが、まあちゃんは、こう返すのだった。

    「なーんだ、あんたたち たったのそれしか のばさないの? あたしなんかね、もっと ずっと のばすんだから」
    「へえ、どれくらい?」
    「もっと、ずっとずっとずっとずっと、ずうーっとよ! そのながいことったらね……」

     さあ、ここから始まりますよ、まあちゃんの破天荒でぶっ飛んだ想像の世界が!

     それまでのモノクロで平凡に描かれた現実のティータイムから、一変して、「フルカラーで描かれた想像の世界こそ、あたしらしさよ!」と言わんばかりの絵は、そのあまりの長さに、絵本の向きも縦にせざるを得ない、ダイナミックな表現により、まずはジャブとして、橋の上からおさげを垂らして魚を釣れることをアピール! ちょっと痛そうにも思えるけど、そんな細かいこと気にすんなということなのでしょう。

     次は、横向きに戻して、今度は遠くまで余裕で届くわと言わんばかりの、おさげのロープをびゅーんと飛ばして牛を捕まえられること! だが、まるで綱引きのように見えるのが、なんとも面白く、
    「ぐいぐい ぐいぐい ひっぱれば、まるごと いっとう あたしのもんよ」と言ってますが、牛には持ち主がいるから、まあちゃんのものにはなりません。おっと失礼、つい些末なことを言ってしまいました。

     更にその次は、海苔巻きみたいにくるまって外でも眠ることが出来ること! 確かに寝袋みたいで気持ち良さそうだけど、木の上で寝るのは却って危ないのでは・・・おっと、またまた些末なことを失礼いたしました。そうですよね。そんなこと気にしないからこその破天荒ですものね。それでも、木の下に備え付けた蚊取り線香には、しっかりとされた賢い一面も窺わせて、さすがでございます。

     更にその次の次は、右のおさげと左のおさげをぴーんと張って木に結べば、家中の洗濯物が全ていっぺんに干せる! って、ああ痛い痛い。さすがにこの重さはいくらなんでも無理が・・・って、そうですよね。何回も些末なこと言うなってことですね。はい、分かりました。しかも、干している間に読書をされるといった、その効率的な時間の活用法、是非とも学ばせて頂きます。えっ、「どろんこハリー」がおすすめなのですか? まあちゃんが仰るのでしたら、勿論、読ませていただきますとも!


     さあ、これだけぶっ飛んだ例を上げたら、二人も降参するだろうと思いきや、

    「だけど、そんなに ながかったら あらうのが たいへんじゃない?」
    「それに どうやって とかすのよ、そんなかみ」

     あ~あ、分かってないなあ。そんな些末なことを気にしているようだと、いつまで経っても、まあちゃんみたいな破天荒にはなれないぞ。それから、そんなかみとか言うんじゃないの。失礼でしょ。

    「へっちゃらよぉ、おっもしろいもんよ!」

     あっ、やっぱり面白さ重視だったのですね(笑)

     そして、ここからのまあちゃんのかみの、更に予想の遥か上を行くような破天荒ぶりには、爽快感も加わったようで、最初の縦向きにした絵の、子どもならば絶対に喜びそうな清々しい例えから、その次の最早妖怪レベルの壮大さに(何度も失礼いたしました。つい突っ込みたくなりまして…)、極め付けは、想像力も固定観念も飛躍し過ぎた優雅な佇まいと、こりゃ、もう誰にも止められないな・・・


     この絵本、おそらく『ラプンチェル』を思い浮かべた方もいるのではないかと思うのですが、そちらとの大きな違いは、あっけらかんと大笑いして楽しみながらも、人間だけを巻き込んでいない点に、世界に於ける共存共栄の意識も植えさせるようなメッセージが込められていることだと思いまして、こうした破天荒振りを描きながらも、そうした世界への敬意は失わない、そんな点が、たかどのさんの素敵なところだと思います。

     しかも、この絵本、たかどのさんが初めて絵を描いた作品というのも印象的で、その絵は、とてもシンプルでありながら、水彩の優しい色使いと、どこかざっくりとした大らかな感じにも惹き付けられて、本書をきっかけに絵も描くようになられたこと、私はとても嬉しかったです。


    ブクログスタッフさんへ。
     『ブックサンタ』、初めてタグ付けさせていただきました。

     今回、このような気楽に参加できる企画から、とても素晴らしいものへと発展出来ることを知りまして、絵本が大好きな私としては、子どもたちにプレゼントしたいものも多く、それが少しでもお役に立てればと(ブックリストの時は、ターゲットを絞るのが難しかったので)、これからも素敵な絵本を追いかけていきたいと思います。

    • akikobbさん
      たださん、こんにちは。
      たかどのワールドのぶっ飛び方が思い浮かぶレビューで、まだ読んでないのに笑ってしまいました。いつも意外性があって良いで...
      たださん、こんにちは。
      たかどのワールドのぶっ飛び方が思い浮かぶレビューで、まだ読んでないのに笑ってしまいました。いつも意外性があって良いですよね。私も読んでみたいです。
      2023/10/21
    • たださん
      akikobbさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^^)

      この前、図書館行ったときに、あと一冊、何にしようかなと探していて偶...
      akikobbさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます(^^)

      この前、図書館行ったときに、あと一冊、何にしようかなと探していて偶然見つけたら、たかどのさんが初めて絵を描かれた貴重な作品に出会えたので、ちょっとテンションが上がってしまいました(≧∀≦)

      しかも、続編もあるそうなので、そちらも楽しみです♪
      akikobbさんも是非どうぞ(^^)
      娘さんにもおすすめですよ(*'▽'*)
      2023/10/21
  • 個別支援学級の読み聞かせ用に公共図書館から学校貸出を受けた本。

    おかっぱ頭のまあちゃんが、長い髪が自慢のみーちゃんとはーちゃんに、「私が髪を伸ばしたらねぇ…」と、ものすごーく長く伸ばした髪で、あんなことこんなことするのよ〜、と語って聞かせる。
    その発想が奇想天外で、子どもらしい。
    次はどんな頭になるんだろう⁉︎とページを捲るのも楽しい本。

    たかどのほうこさんの本は、特に一番下の子が大好きで、「つんつくせんせい」のシリーズや、「へんてこもり」シリーズには大変お世話になった。
    2020.11.2

  • 3歳の頃、肺炎で入院したときに、幼稚園の先生がお見舞いに来てくれた。そのときにプレゼントしてもらった本。何度も読んでもらったと思う。
    当時は先生が来てくれたのに恥ずかしくてねたふりをした。ごめんなさい。

  • 「おかっぱ頭のまあちゃんは、長い髪のはあちゃんとみいちゃんに、自分はこれから、もっとずっと長く髪を伸ばすんだと自慢します。吊り橋の上からおさげをたらして魚が釣れるくらい。おさげの投げ縄で牧場の牛をつかまえられるくらい。シャンプーしたら、雲まで届く大きなソフトクリームになるし、洗った髪は妹10人がとかしてくれる……。まあちゃんの空想は大きく広がります。ユーモアに富んだ絵本です。」

  • かわい

  • 想像豊かなまあちゃん。ながい髪を最大限に活用します。

  • 長女が幼稚園の貸出しで借りてきた。自分も髪が長かったんだけど、訳あって切って、今はショートボブってかんじ。まあちゃんとちょっと似てるかな。髪をすっごく伸ばしたらね…という想像が楽しい。おかしくて笑ってしまった。なんともかわいい。絵も細かいところ見るとおもしろい。『どろんこハリー』読んでるのもいい。縦にして読むページもあったり。親子で楽しく読めた、なんだか幸せな絵本。

  •  姪っ子は4歳になった。個性というのを分かり始めた。「お姫様だね」と僕は言った。彼女は「お姫様じゃない」と言った。「髪の毛が違うから」
     悲しい。4歳にして悲しい。髪の毛がちょっと天然パーマだからってなんだ。姫は姫! そして俺は「こう、髪の毛のコンプレックスを乗り越えるみたいなんないの?」と思った。
     髪の毛で「私ってダメやから……」みたいになって、自分はアホやから……みたいな自己否定にいたり、そのまま大人になったらろくな人生おくらん! そんな姪っ子にはならず、誇りをもった一人の良き人間になってほしい。もし、なることができなくても、もちろんそれはそれでしょうがないし構わないが。
     メリダとおそろしの森はどうか? いっそ自作で作るか? いろいろ考えたが、答えは出ず、そんな中この一冊を薦められた。
     ものすごく髪が長かったら不便じゃない? 手入れとか大変じゃない? 友達からのディスに対し、主人公はアンサーを見事に返していく。とても、よい本です。姪っ子にプレゼントします。

  • 女の子ってこうだよなぁー、な感じ。
    どんどん膨らんでいく妄想が楽しくて読んでるこちらもウキウキ。

  • 子供のこんなことできるもん!っていう空想を邪魔しない素敵な本

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著者プロフィール

高楼方子 函館市生まれ。絵本に『まあちゃんのながいかみ』(福音館書店)「つんつくせんせい」シリーズ(フレーベル館)など。幼年童話に『みどりいろのたね』(福音館書店)、低・中学年向きの作品に、『ねこが見た話』『おーばあちゃんはきらきら』(以上福音館書店)『紳士とオバケ氏』(フレーベル館)『ルゥルゥおはなしして』(岩波書店)「へんてこもり」シリーズ(偕成社)など。高学年向きの作品に『時計坂の家』『十一月の扉』『ココの詩』『緑の模様画』(以上福音館書店)『リリコは眠れない』(あかね書房)『街角には物語が.....』(偕成社)など。翻訳に『小公女』(福音館書店)、エッセイに『記憶の小瓶』(クレヨンハウス)『老嬢物語』(偕成社)がある。『いたずらおばあさん』(フレーベル館)で路傍の石幼少年文学賞、『キロコちゃんとみどりのくつ』(あかね書房)で児童福祉文化賞、『十一月の扉』『おともださにナリマ小』(フレーベル館)で産経児童出版文化賞、『わたしたちの帽子』(フレーベル館)で赤い鳥文学賞・小学館児童出版文化賞を受賞。札幌市在住。

「2021年 『黄色い夏の日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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