ちいさな ろば (こどものとも傑作集)

  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (31ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834018936

作品紹介・あらすじ

クリスマスイブにプレゼントを配る手伝いをしたひとりぼっちの小さなろばに、サンタクロースがくれたものは…。心温まる美しい絵本。

感想・レビュー・書評

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  •  クリスマス絵本特集、その5。

     本書は、ルース・エインズワースの物語(1961年)を、石井桃子さんが翻訳し、酒井信義さんの美しい水彩画で描いた(それぞれ1979年)、ちいさなろばの孤独な心に優しく寄り添った絵本。

     始まりの、小屋が一つあるだけの牧場の中を、一頭でぐるぐる回って走っている、ちいさなろばの姿は、そのひと目見て、すぐにボタン雪と分かるくらいの大粒の雪が降りしきる中、とても寒々しく辛そうに見えるが、彼自身の心境、『ろばは、さむくはありませんでした。でも、さびしいと おもいました』には、とても身に沁みる思いがし、却って、その存在価値の素晴らしさを痛感させられる。

     そんな時、おやすみの挨拶に訪れた二人の女の子から、初めて知ったサンタクロースの存在に、思わずろばは、「でも、そのひと、にんげんのこどもにだけ プレゼント くれるんですか? ろばには くれないんですか?」と聞いてしまい、女の子達が去った後も、「もし、自分にもプレゼントをくれたら、どんなにいいだろう」と考える、その健気な笑顔が見ていて切ない。

     その日の夜中、鈴の鳴る音で目が覚めた、ろばは、自分が寝ている小屋のある牧場に、トナカイを連れたサンタクロースが降り立ったから、驚いて、もしかしたらと思ったが、どうやら、トナカイの一頭が脚を痛めたようで、代わりにそりを引いてくれないかという、お願いであり、これをろばは喜んで引き受けて、そのトナカイは小屋で休ませてあげて下さいと、自ら伝える。

     そして、サンタやトナカイと共に空を駆けていく、ろばの、その特別な体験は、とても楽しそうに見えるものの、そこで、子どもたちにプレゼントをあげるため、煙突の中へと入っていくサンタの姿を、どんな気分で見ていたのだろうと思うと、また複雑な思いに駆られてしまい、それは、ろばに挨拶をした二人の女の子の部屋で、サンタが靴下の底にプレゼントを入れる中、幸せそうな寝顔を見せる女の子からも、尚更、感じさせるものがあった。


     物語も酒井さんの絵も、淡々と、厳かで静謐な、クリスマスの夜を展開していくように思われた中であるからこそ、より際立っていたのは、その目に宿る優しさと温かさであり、特に、これまでのろばの孤独を強調させたような展開に於いて、初めて訪れた、そのろばの首を撫でるときに何気なく手袋を脱いでいた彼の姿は、殊更、印象に残るものがあり、それが、次の日の光の温かさを見事に絵で表現した、奇跡の場面へと繋がっていることが、自然な中にも静かな劇的さを秘めているようで、それに私はとても心動かされるものがあった。

     それから、最後の酒井さんの、粋な計らいに込められた思い・・・そのクリスマスリースの、始まりも終わりもない円の形には、『幸せがいつまでも続くように』といった幸運のお守りとしての意味合いがあることから、酒井さんならではの、ろばに捧げる祝福の印に思われ、そして、ワインレッド色を背景にした表裏それぞれの表紙には、まるで、ろばがサンタクロースの懐の中に包まれているような感慨を抱かせてくれたことから、改めて、サンタクロースという、その不思議でありながら、とても優しくて温かい存在がもたらしてくれるものの大切さは、まるで、サンタの代わりに、そういうことが私たちにも出来るんだと言われているようでもあるのが、また身に沁みるようで、印象深いものがあった。

  • どことなく物悲しそうな一匹のロバが描かれた、ワインレッドのデザインがすてきな絵本。

    一人寂しいくイブを迎えるロバがサンタと出会い、けがをしたトナカイの代わりにお手伝いをするお話し。
    最後、サンタから贈り物をもらうのですが、、
    表紙とはちがい、ロバの嬉しい気持ちがとても良く伝わってくる最後の頁はお気に入りです。

    お話しもなのですが、絵がまた綺麗!
    クリスマスの華やかさではなく、雪がしんしんと降る静けさのなかから、シャンシャンとソリを引く鈴の音が聞こえてくるかのよう。ロバが一生懸命ソリを引いている頁は、お話しの世界から飛び出してきそうでした。
    健気で頑張り屋のロバがたまらなくかわいい、クリスマスにぴったりの一冊でした◎

    シーズン遅れてのレビューになりました。
    来年のクリスマス、次は読み聞かせできたらいいな。

  • 約8分かかるクリスマス・イヴの晩のお話。
    素話で聞くとしみじみと清らかなお話で、会場がしんと静まり返ったのを思い出す。
    とかくプレゼントの交換にばかり目がいく日本の子どもたちにも、ぜひ一度は聞かせたい。
    キラキラした華やかさとは無縁の静かな静かなお話で、ちいさなろばの純粋さに心打たれてしまう。
    サンタさんも登場するが、それがとても自然な流れ。
    「こすずめのぼうけん」でおなじみのエインズワースの作品で、そこに石井桃子さんの美しい日本語訳がついている。
    5,6歳からOKだが、大きな子でもきっと聞いてくれるだろう。もちろん大人も。

    人間の女の子もふたり登場する。
    その話し言葉も大人が考えたようなものではなくて、子どもらしい素朴さがある。
    いつもひとりぼっちで寂しかったちいさなろばが、イブの晩に足を傷めたトナカイの代わりをすることになる。
    誰かの役に立てる喜びが、ちいさなろばの言葉からあふれていて、ココでもう泣きそうになった私だ。
    一晩中働いたろばがサンタさんにお願いしたのは、実にささやかな願い事だった。
    それが叶えられた翌朝は、感動のページだ。
    クリスマスの奇跡がここにある。
    酒井信義さんの絵も美しく、じわりじわりと幸せが押し寄せてくる。
    手元に置いて大切に読みたい、お薦めのクリスマスの一冊。

    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      再訪&嬉しいご報告ありがとうございます!
      間に合って良かったぁ~(笑)!

      「カブトくん」も...
      vilureefさん、こんにちは♪
      再訪&嬉しいご報告ありがとうございます!
      間に合って良かったぁ~(笑)!

      「カブトくん」も「おおきなたまご」も良いお話ですね。
      息子さんの言葉に、nejidonおばちゃんもじわっと感動してしまいました。

      『成長するのは嬉しいことですが、“淋しい気持ち”を知る前の心には
      戻れないんだなと思うとそれはそれでこっちが淋しくなったり(笑)』
      ああ、とても良く分かります。それも親心ですね。
      成長への憧れと不安は、親も子も共に持っていますよね。
      そのうち、vilureefさんがひとり静かにしていたら「どうしたの?淋しいの?」なんて
      聞いてくるかもしれませんよ。
      その時々の年齢にふさわしい本が、これからもご紹介できると良いのですが、
      拙いながらもがんばってみますね。
      2013/12/25
    • 胡桃さん
      nejidonさん、ちいさなろば ほんとうに清らかで静かな静かなすてきなお話しでした。絵もまた素敵で、心にじわじわと残る一冊。
      お勧めしてく...
      nejidonさん、ちいさなろば ほんとうに清らかで静かな静かなすてきなお話しでした。絵もまた素敵で、心にじわじわと残る一冊。
      お勧めしてくださり本当にありがとうございました♪

      2020年はとくに絵本に惹かれた一年となったのですが、nejidonさんとの出会いを通して色んな絵本に触れる機会が増え、絵本の魅力をたくさん知ることが出来たと感謝しております。ありがとうございました。
      nejidonさんにとって2021年も素敵な一年となりますように。良いお年をお過ごしください。本年もどうぞよろしくお願いいたします(^-^)
      2021/01/01
    • nejidonさん
      胡桃さん(^^♪
      新しい年が明けましたね!
      今年もどうぞよろしくお願いします。

      胡桃さんのレビューも先ほど拝見しました。
      お読み...
      胡桃さん(^^♪
      新しい年が明けましたね!
      今年もどうぞよろしくお願いします。

      胡桃さんのレビューも先ほど拝見しました。
      お読みいただいて、おまけにコメントまでいただいて、ありがとうございます!!
      この絵本をテキストにして素話にして語るのが毎年の恒例です。
      小さな子も大人も喜びますね。
      ちいさなろばのけなげさが、もう愛おしくてなりません。
      いくつになっても忘れたくない心の持ち方です。
      こちらこそ、また良い本に出会いましたら教えてくださいね。
      たくさんたくさん良い本に出会って、たくさんたくさんお話できますように♡
      2021/01/01
  • 心あたたまるかわいいお話です^ ^

    友達が、
    クリスマスプレゼントって、いいです^ ^

  • 雑誌版(こどものとも年中向き1995年12月号、通巻117号)を読了。ひとりぼっちのちいさなろばが、サンタ・クロースのおてつだいをするおはなし。
    鈴を鳴らしながら空中を飛び回る場面、独りで囲いの中を走る寂しさを考えたら、本当に楽しかったでしょうね。でも自分の牧場へ帰る頃には疲れてたからホッとしたというところが可愛い。そして友だちができた時の溢れんばかり嬉しさ。くたくたになるまで走り回りその後は仲良くお話する場面からよく伝わりました。冒頭に登場した人間の女の子たちが自分たちのように喜ぶ様子も良い。お幸せに!

  • ※表紙絵がほしくて(こどものとも傑作集)を登録してあります。


    こどものとも(年中向き) 
    1995年12月号
    通巻:117号

    ちいさな ろば
    作:ルース・エインワース
    訳:石井桃子(いしい ももこ)
    絵:酒井信義(さかい のぶよし)

    発行所:福音館書店
    定価:320円(本体311円)
    雑誌03733-12.
    T1003733120327.

  • 5歳4ヶ月が初めて読み聞かせてくれた本

  • ひとりぼっちのろばがサンタさんのお手伝いをすることに。けがをしたトナカイの代わりに一緒にプレゼントを配る。人に頼られて一緒に働けめ嬉しそうなろば。そのお礼にろばもサンタさんからプレゼントをもらう。それは白いろば。友達。よかったなあ。優しいお話。優しい文章。石井桃子さんの素敵な言葉。

  • 子どもに読みきかせ

  • ストーリーも絵も言葉も美しい。
    サンタクロースを信じている子どもに。

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著者プロフィール

ルース・エインズワース イギリス、マンチェスターに生まれた。子どものために二冊の詩集を出版。後に、BBCラジオ番組“Listen With Mother"のために、いくつかの物語を書いた。主な作品に『こすずめのぼうけん』『ちいさな ろば』『黒ねこのおきゃくさま』『ふしぎなロシア人形バーバ』(以上、福音館書店)、作品集に『ねこのお客―かめのシェルオーバーのお話1』『魔女のおくりもの―かめのシェルオーバーのお話2』(河本祥子訳・絵/ともに岩波書店)などがある。

「2021年 『こねこのウィンクルとクリスマスツリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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