子どもを食べる大きな木の話―ショヴォー氏とルノー君のお話集〈2〉 (福音館文庫 物語)

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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834019315

作品紹介・あらすじ

エスプリあふれる、比類ないお話集の第2巻。子どもを食べて肥え太ったブナの大木と木こりが死闘を演じる表題作ほか、とことん自在に物語の世界を広げる傑作5編が大集合!

感想・レビュー・書評

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  •  このなんとも言えない、集合体恐怖症をちょっとゾワッとさせる、けれど面白い表紙の絵。たまたま他の本を探している時に見つけて、思わずポチってしまった。
     この中には短編童話が5篇おさめられている。標題になっている『子どもを食べる大きな木の話』は、通りがかった子どもをみんな食べるという恐ろしい木の話。子どもが3人まで連れ立って歩いていたら、一人残らず食べた。何故なら残った子どもが村に帰って“子どもを食べる木“のことを話すと困るから。けれど4人以上の子供が連れ立って歩いていたら、一人も手をつけなかった。何故なら一度に3人までしか食べられなかったから。
     なんとも恐ろしい木だが、もっと恐ろしかったのは村人たち。木が子供を食べているなんて思いもしないから「炭焼きどもが、子どもをとって食うのにちがいない」と炭焼きを皆殺しにし、「オオカミどもにちがいない」とオオカミを皆殺しにした。けれど何も変わらなかったので、森の動物たちを皆殺しにした。
     ある日とうとう、一人の木こりが、木が子供を食べるところを目撃し、斧を持って木に立ち向かった。木との壮絶な闘いの末、幹を切り倒すと、木の胃袋にあたる木のうろから、小指の半分ほどの大きさになった子供たちが沢山、姿を現した。
    「おうちへ帰して!おじさん!ぼくたちをおうちへ帰して!」と子どもたちが訴えたので、木こりは、ズボンや上着やチョッキのポケットに沢山、小人になった子どもを入れ、帽子の中にも入れ、それでも入りきらない子どもたちは、木こりのあとをチョコチョコついて歩いた。
    そうして、無事、村に辿りつき、子供たちを親の元に返すことが出来た。けれど、帰るところがなく、えんえん泣く子供たちもいた。何年も前に食べられて、パパもママも死んでしまった子供たちだ。木こりが「一人子供を取り戻せた親は、一人孤児を引き取ること」とルールを決め、すべての子供たちの帰るところが出来た。そして、子どもたちは何日かたつと元の大きさに戻った。

     この「子どもを食べる大きな木の話」には色んなメッセージが込められていると思うが、他の4篇はメッセージもよくわからない、シュールで自由過ぎるお話。
     この本には“ルノー君“という男の子が登場し、この中のお話はルノー君のためにパパが作ったお話ということになっている。
     ルノー君が「歩いてするお話をして」とパパにせがむシーンがあるのだが、それはつまり“バス旅行“のように決まったルートがあるお話(読むお話)ではなく、散歩するようにパパに手を引かれて出かけ、右でも左でも好きな方向へ進み、パパが速く行きすぎると手を引っ張り、走りたくなったら、走り、止まりたくなったら、止まり、どんなことでも「どうして?」と聞くことができ、いよいよしんどくなったらおんぶしてもらえるような“その場で作って直に口で話してもらうお話“のことだ。だから、この本の中のお話はみんな発想が自由なのだ。
     もう一つ魅力的なのは挿絵だが、これも作者のショヴォー氏によるもの。医者だったせいか、細密画のように線が細かいのだが、表紙の絵のように“顔“が雑だったりして、ちょっと素人っぽいところが、味があり、ちょっと気持ち悪いところにも何故か惹かれる。
     ところで、この本に登場するルノー君というのは、作者ショヴォー氏の4人の息子のうちの三男で、一番ショヴォー氏と気が合って、可愛がっていたのだが、12歳の時、虫垂炎で亡くなってしまったそうだ。第一次世界大戦中、医者が皆前線に駆り出されて残っていないとき、ショヴォー氏が自分の手で自宅で手術し、そのまま亡くなってしまったという、悲しい経験をしたそうだ。他にも第一次世界大戦中、奥さんも長男も亡くすという悲しい経験をしたそうだ。
     この本の中のお話はルノー君の生前に語られたもので、絵は後につけられたらしい。ショヴォー氏がルノー君と過ごした愛しい愛しい時間を本の中に閉じ込めたもの。どうりで、シュールでもグロテスクでも温かみがあると思った。

  • 『年をとったワニの話』のあやしいおかしさに、翌日は発熱しつつも、へのへのもへじ文庫で借りてきた2巻を読んでしまう。あいかわらず、ショヴォー氏のお話はばかばかしく、話の展開は私の想像の範疇などかるーくこえて、「そういくか!」とはっとさせられる。

    表題作は、子どもを喰ってしまうブナの木の話。通りかかった子どもを喰ってしまう木。しかし、一度に喰えるのは3人までなので、子どもが4人以上通りかかったときは、ぐっとガマンするという木。なぜか時々子どもが消えてしまうけれども、誰もなぜだか分からない。そして村人は、なぜか炭焼きがあやしいと断じて、炭焼きを皆殺し。それでも子どもが消えるので、こんどはオオカミがあやしいと、これまたオオカミ皆殺し。それでも状況が変わらないので、森の動物を次々と皆殺し。(というような、ちょっとぎょっとするようなコワイ展開がショヴォー氏の話にはたいへん多い。)

    ある日、木が子どもを喰うところを偶然見かけた木こりが、木にやられそうになりながらも、木を切り倒す。そうすると、ちっこくなった(ポケットにつめこめるくらい)今まで喰われた子どもがわらわらと出てくる(というのが文庫版の表紙カバーのイラスト)。

    その他の収録作もおかしい。とてもなまいきで親のいうことを聞かないヘビの子の話。あまりになまいきな子ヘビに、お母ちゃんヘビは平手打ちをくわそうとした。それをかわして逃げる子ヘビ。それを追いかけるお母ちゃんヘビ。まるで安珍清姫のごとく、子ヘビと母ヘビは、あんまり遠くまであんまり長い時間逃げに逃げ、追いかけ続けて、とうとうどちらも手足が根元まですりきれてしまう。

    話はさらに続き、平手打ちをくいたくないばかりに(といって、手足がすりきれてなくなった母ヘビは、いったいどうやって平手打ちをくわすのか?)、子ヘビは逃げて逃げて、いいところを見つけたとばかりにゾウの鼻の穴へ入りこみ、ゾウの脳みそのわきに住みついた。そのヘビの知恵で、ゾウはけものの中でいちばんの知恵者になったという話をきいて、ルノー君はこんなことを言う。

    「じゃあ、パパ、両方の鼻の穴に、一ぴきずつ、ヘビを入れれば、もっと頭のいいゾウが、できるんだね」

    ルノー君のこのリアクション。そんなふうには、私はとても考えられなかった!

    最後の「オオカミとカメの話」は、ルノー君が、お母さんがこしらえた話を、ショヴォー氏(つまり父)にしているもの。これまた、父ちゃんがつくった話に劣らず、シュール。

    そして、ルノー君はまた父ちゃんをくさしている。「パパって、思ったほど、頭よくないんだね」

    文庫版2巻の巻末にはルノー君の弟、ショヴォー氏の4人の息子のうちの末っ子オリヴィエさんが、父と兄のことを語ったインタビューが収録されている。ショヴォー氏は、最愛の息子、自分のお話の聞き手だったルノー君を12歳で喪ってしまうのだ。

    (10/2了)

  • 今回は比較的マイルドかと思いきや、やっぱり殺伐としてた。
    やりすぎてはならんよ…。

  • 山村浩二版の「年をとった鰐」がとても気に入っていて、前から気になっていたシリーズ。絵が大きいので見たかったから、文庫版でなくて大型本(残念ながら絶版)の方を中古で入手。お話だけじゃなく、ショヴォー氏と幼い息子ルノーくんのやり取りも含めて本になってて、その部分がすごくいい。
    この巻に収録されてる中では生意気盛りのヘビの子が鼻の穴に指を突っ込んで、お母さんが「やめなさい!」と平手打ちをくらわせようと息子を追いかけるうちに、母子とも手足が擦り切れてなくなっちゃう話が好き。
    ルノーくんの話を受けてパパがでっち上げた、表題作の木の話、それに対するルノーくんのリアクションもすごくいい。

  • 子供に読むにはシュールすぎる。挿絵が好きです。

  • この本のシリーズ、友人の間ではやって、図書室で読みました。
    絵とタイトルがいいんだよね、脱力する感じが。

  • 小学校の図書館にあったこのシリーズ。どうしてももう一度読みたいのだけど、売ってるのかな。

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著者プロフィール

(Leopold Chauveau) 1870年、フランス・リヨン生まれ。のちパリへ出て医者になる。1896年に結婚、四男をもうける。その後アルジェリアへ移住し農業をはじめるが、第一次大戦前夜にパリに帰還。戦中は志願して軍医となった。当時の経験を綴った『戦場の後方で』を1917年に発表。1924年に再婚、医者を廃業し、創作活動に専念する。ブロンズの怪物像や絵画を制作するかたわら、ジッドやマルタン=デュ=ガールら知識人とも親交をむすび、小説も書いた。1923年より、亡き息子ルノーとのやりとりによって生まれた物語をもとにした『ルノー君のお話集』を次々に出版。1940年、ドイツ軍侵攻に際し、パリ脱出をはかるが、途上、ノルマンディーの村ベルレームにて没する。

「2006年 『いつまでも、鰐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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