ハルばあちゃんの手 (日本傑作絵本シリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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感想 : 34
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834021066

作品紹介・あらすじ

ハルは海辺の小さな村に生まれた。「おや、ほくろのあるいい手じゃ。きっとこの子は器用だし、幸せになるよ」とハルの手をみて、みんながいった……。ハルばあちゃんの手を通して、歴史と社会が変わっていくなか、懸命に生きる女性の姿が浮かんでくる。その人生は、一見、大勢の同世代の人々と変わらず、平凡なようにみえるが、その生涯を貫いた深い愛が大河ドラマのように胸に迫ってくる。簡潔で力強い文に、モノクロの鉛筆画の奥深い世界が展開されている。

感想・レビュー・書評

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  • 子ども時代からおばあちゃんになるまでの一代記。
    大事件が起きるわけでもないけど、こういう人生がいいよなぁと子ども心にも伝わったみたい。

  • 少な目の静かな文章と、きめ細かく繊細な鉛筆画。
    読み終えると、感動というだけでは言い足りない大きなものが心に残る。

    タイトルどおり、ハルばあちゃんの手が何度も登場する。
    生まれつき器用だったため、家族を支えることにもなる手だ。
    そして、踊りの名手ともなった手。
    死と別れと出会いとを経験する手。
    暮らしを支え愛をはぐくみ、やがて死を見送る手。
    すべてを受け入れ、誠実に生きた証のような手。

    戦前の海辺の町が背景で、PTSDだのという言葉さえなかった頃のこと。
    誰かに幸せにしてもらおう、守ってもらおうなどと考える暇さえなく、みんながひたむきに自分の人生を生き抜いていた頃のことだ。
    結婚相手は、かつて自分の作ったものを素直に褒めてくれた、同級生の男の子だった。
    このエピソードが実に良くて、貧しい中でもお金とは無縁のところで心が繋がっていくのが、涙がにじむほど素敵だ。
    ユウキチさんのおかげで、ハルばあちゃんの一生は、言い尽くせないほど幸せだったに違いない。
    控えめな文章が、丹念に描かれた絵によってそれは饒舌になっている。

    どのページにも、赤い小さな玉がほんのりと描かれている。
    ハルばあちゃんを見守るようだったり、運命の道案内のようだったり、手から放たれる美しい魂のようだったりする。
    これを見た子どもたちは、どんな解釈をするだろう。
    最後のページでは、ハルばあちゃんが夜に浮かび上がる月の元で踊っている。
    まるで「風の盆」のように静かで切なく、美しい。
    一生懸命生きるということは、それだけで何よりの説得力を持つものなのだ。

    人生を包み込む、芸術品のような一冊。
    約9分。高学年以上に。大人の方もぜひ。

  • 「ハルは海辺の小さな村に生まれた。「おや、ほくろのあるいい手じゃ。きっとこの子は器用だし、幸せになるよ」とハルの手をみて、みんながいった……。ハルばあちゃんの手を通して、歴史と社会が変わっていくなか、懸命に生きる女性の姿が浮かんでくる。その人生は、一見、大勢の同世代の人々と変わらず、平凡なようにみえるが、その生涯を貫いた深い愛が大河ドラマのように胸に迫ってくる。簡潔で力強い文に、モノクロの鉛筆画の奥深い世界が展開されている。」

  • 7分。とても遠目がきく。
    高学年から。
    はるばあちゃんの物語。
    泣いてしまいそうで、読み聞かせは個人的に難しそう。

  • 年老いた方の、顔・そして手の「美しさ」
    皺は、その方の年輪なのだ
    と、感じた次第。

    心に響く、絵本です。

  • 手先の器用なハルの一生。
    働きもので優しいハルの手も働き物で優しいのだと思う

  • 感動した。最後の場面の美しさ。涙が出た。

  • ひとりの女性の歴史。それが手によって表される。そう、確かにハルばあちゃんはその手で懸命に生きた。手だけでも人生がよくわかる。

  • 「わたしは あんたの おかげで ずっと しあわせだったよ」

    ハルばあちゃんの手が主役の話。その5本の指が、成長し、恋をし、結婚し、子育てを経て、ハルばあちゃんの人生を語っていく。手って、その人の全てを語りかけて来る。私も、結婚するなら、こういう手の歴史を持つ人と一緒になりたいなと思いました。

  • 4-3 2018/03/14

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著者プロフィール

1931年北海道小樽市生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。戦時下を描いたノンフィクションに『ボクラ少国民』シリーズ(辺境社)、『少国民の名のもとに』(小学館)、『アジア・太平洋戦争史』(岩波書店)、『戦時児童文学論』『靖国の子』(大月書店)などがある。

「2019年 『山中恒と読む 修身教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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