どろんころんど (ボクラノSFシリーズ)

著者 :
  • 福音館書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834025774

感想・レビュー・書評

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  • アンドロイドの少女アリスと、亀型ロボット万年1号、そしてヒトのような形をしたヒトデナシの、奇妙な旅の物語。アリスが目覚めた世界に人の姿はなく、そこにあるのはどこまでも続く泥の海。果たして人に巡り合うことはできるのか・・・。

    今回もやはり「亀」が登場。作者も自身のホームページで、「亀も普段より多めに入れました。」と言っている。

    巡る旅路はどうやら私たちが居るこの日常に似ているが、非なるものである。世界は泥でできている。電車は来るが、駅がない。信号はあるのに、自動車はない。「信号があるのに、なんで自動車がないのよ」とアリスは問う。「ヒトデブソクでまだ作っていないんです」とヒトデナシは言う。

    そんな様子の不思議な旅路は、鈴木志保のイラストに彩られ愛らしく描かれる。そして祖父江慎の圧巻のブックデザインにより、イラストがページからはみ出し、時に文章自体がイラストを担う。文章中に急に空白が現れたかと思うと、そこにはいつの間にか蟻が這い回り、しまいには文字自体が蟻の行列を成してしまう。

    物語と装丁が見事に絡み合って踊るような物語は、「夢」から始まり、「始まり」で終わる。読後には、不思議な夢から覚めたような、爽快な「始まり」の感覚が残る。

  • 今のところ私が読んだ今年最高の日本SFです。
    淡々と静かでありながら、ほのぼのと優しく救済はない。

    イラストもいいし、なんと言っても北野勇作の文体が最高。

    とにかく読んでください。

  • アリスが長い長い長い眠りから覚めると、世界はどろんこになっていました。それは旅をしている夢だった。ひとりじゃなかった。ヒトのような形をした影みたいなものと、それから―「亀」、がいた。大きな亀だ。しかも二本足で立って歩いている。ヒトは、どこへいってしまったの。

  • アンドロイドの少女アリスが長い眠り(休止状態)から目覚めると、そこは地平線の彼方まで広がる、一面の泥の海。
    一緒に「仕事」をする筈だった人間たちは、そもそもあんなにたくさんいたはずの人間たちはどこにもいない。
    いるのは、アリスが起動させた亀型ロボット“万年一号”と、人間のような形をして、人間の真似をして、いつかどこかへ消えてしまった人間たちが帰ってくるのを待っている、人間ではない“ヒトデナシ”たち。
    人間は、一体どこへ行ってしまったの?

    人間がいるどこかを探して、アリスたちはどろんこの世界を旅してゆく。
    彼女たちの行き着く先に、何が見えるのか?

    人間のいなくなった世界を旅するアンドロイド少女たちの、ちょっといびつだけど優しいロードノベル。

  • “ひとりではなかった。
    誰かといっしょだった。
    誰だったのかな。
    ヒトのような形をした影みたいなものと、それから――。
    それにしても変だな。
    夢の中で、別の夢を思い出すなんて、すごく変。
    アリスはつぶやく。”

    SFで奇妙なのに成り立ってる世界観とイラストのタッチから手塚さんや星新一さんあたりを連想してしまう。
    意味はわかるけど、しこりが残るような。
    えっと、これ、エンドレス?

    “見つめている自分と、見つめられている自分。
    どちらが本物の自分なのだろう。
    そんな問いが、アリスの中に浮かぶ。
    この世界で目覚めてからというもの、ずっとそうだ。こんなことばかり考えている。推論や計算では解答を出せないようなことばかり。
    前のわたしなら、そんな無駄なことはしなかったはずなのに。
    「どうしたんですか?」
    係長の声が上のほうから聞こえる。
    ほんと、どうしたんだろう?
    アリスは思う。
    もちろん、答えは出ない。”

  • SF好きを自称するなら必読!中高生向きだけど、小学校高学年から大人まで楽しめます。熱が出て学校が休みのときに読んだ本のような浮遊感が残ります。友達に勧めたい。今年読んだ本の中で最良の本。

  • この作者にはずっと興味はあったのだけどまだ一度も読んだことがなかった。
    この作品が最初の一冊として適切かどうかはわからないのだけど、とりあえず期待しながら読み始めました。

    出だしはいまいち乗りきれない感じ。

    ・・・読みました。

    存在とは何か。
    現実とは何か。
    そして人類補完計画。
    ぶっちゃけていうとそんな感じの内容か。
    途中万能調理器が出てきたとき世界のなりたちはわかった。

    雰囲気的にはどこか懐かしい感じ。
    古いSFを読んでるような。
    30〜40年くらい前の感じかな。
    どこか適当でいくらか空滑りしているような。
    星新一さんの作品を長編にしたような味かもしれない。
    筒井康隆さんも少し入って。
    ある時期よく扱われてたモチーフではあるか。
    SF入門によさそう。
    あるいは14歳くらいに読むと影響受けそう。

  • 手にとって、造本のすばらしさに驚かされる。挿絵もいいけど、文字組みがまた驚かされる。ブックデザイナー祖父江氏おそるべし。ノンブルの渦巻き数字もカワイイ。物語はやさしい語り口の寓話。けれど、織り込まれたテーマ性はとても北野勇作的。

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。
1992年、デビュー作『昔、火星のあった場所』で第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞、『天動説』で第1回桂雀三郎新作落語〈やぐら杯〉最優秀賞を受賞。2001年には『かめくん』で第22回日本SF大賞を受賞。『どーなつ』『北野勇作どうぶつ図鑑』『どろんころんど』『きつねのつき』『カメリ』『レイコちゃんと蒲鉾工場』ほか著書多数。
ライフワークとも言える【ほぼ百字小説】は、Twitterで毎日発表され続けており、その数は4000を超える。

「2023年 『ねこラジオ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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