小公女 (福音館古典童話シリーズ 41)

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784834026757

作品紹介・あらすじ

どんなときにも想像力をいっぱいに働かせ、気高く果敢に生きるセーラがたぐり寄せる友情と奇跡の物語『小公女』。100年間読み継がれた、19世紀ロンドンの寄宿学園を舞台とする古典の名作が、味わい深く読みやすく、かつ精確さをとことん追求した訳文によって、生き生きとあざやかに甦る。児童文学作家・高楼方子による渾身の翻訳。

感想・レビュー・書評

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  • ■感想
     言わずと知れた名作だが、私は今回初めて読んだ。本を開く前は読みきれるかと不安だったが、読み始めるとグイグイいけた。

    ・先に解説を読んだので、社会/時代背景に関する小さな疑問にひっかからずに済んだ(イギリス人資産家の娘がインドで生まれてイギリスの寄宿学校へ一人行かされるって、その頃的にはどんな感じのことなのか、など)。

    ・人物はみな印象的だが、やはり主人公セーラの思慮深さが面白い。もちろん誇り高さも魅力だけれど、色々言葉にして考えているところが、小説の主人公向きというか。

    ・好きだった言葉。
    「怒りって、すごく強いものだけど、それを抑えこむ力ほどは強くない。つまり、抑えるほうが、もっと強いってことなのよ。……敵には返事しないって、いい方法よ。」

    ・心は錦、という日本語を思い出した。境遇や肩書きや持ち物にとらわれてはいけない。セーラがしたのと同じように「つねに王女様のようでいること」が誰にとっても正解とは限らなくて、自分なりの錦で良いのだと思う。人生のどこかでセーラを思い出して自分を励ましたり律したりする日が来る気がする。

    ・セーラと重なった他の物語の人物(1)
    ドラマ『アボンリーへの道』のセーラ。名前も一緒。髪の色こそ違うが、生い立ち、顔のイメージ、気高いところ、想像やお話好きのところ。

    ・セーラと重なった他の物語の人物(2)
    ディズニーアニメのシンデレラ。召使いとしてこき使われている立場なのに、立ち居振る舞いが堂々としていて哀れさがなく、叱られてもじっと見つめ返す強さがあるところ。あと、ネズミと仲良し。

    ・ミンチン先生については、私はミュージカル映画『アニー』の孤児院のミス・ハンニガンを思い出したりして、この人も色々大変なんだろうなと思う。虐待をする親こそ救われなければいけない、という話じゃないけど、ミンチン先生もいつか幸せになってほしい。妹さんもなんだか一皮剥けちゃったし…。

    ■解説からの備忘録
    ・イギリスでは、一八七〇年の教育法で、五歳から十二歳までのすべての子どもが学校に通うための諸制度が整備され、一八八〇年に義務教育が施行される。物語内の学校のイメージは、作者バーネットが学校に通った一八五〇年代のそれに近いかもしれないとのこと。

    ・『ジェーン・エア』も未読(映画化作品なども見たことがない)なのだが、関連深そう。

    ■読んだ経緯(おまけ)
     近所の図書館のおすすめ本コーナーに、高楼方子さんの『緑の模様画』が展示されていた。著者も書名も知らなかったのだが、表紙の可愛さ(平澤朋子さん)に惹かれて借りて読み始めると、どうも古典名作『小公女』がキーとなっているらしい。私は読んだことがない。
     それは仕方ない、と思って読み進めたが、そのうち作品中の少女たちが『小公女』の人物たちや好きな場面について語り合うことで意気投合するシーンに行き当たったところで「ちょっと待って、やっぱり私も入れて!」とタイムを申し入れた(誰に)。
     『小公女』の新しめ訳版を探すと、なんと高楼方子さん自身による完訳版が二〇一一年に出ている。もっと新しい訳もあったが、これはもう高楼版にすべきだろうと決定。訳者あとがきでは『緑の模様画』のことも語られていた。今出会えて読めて良かった。

  • 子どもの時に読んだ小公女セーラの余りの優等生の良い子ぶりに、なんだか好きじゃない話と思っていた。あれはたぶんダイジェスト版だったのだろう。
    今回、高楼方子訳を読んでセーラの気高くいなければつぶれてしまう必死さや健気さが垣間見られ、改めておもしろいと思った。

  • イギリス出身の作家バーネットの代表作の一つ。次々と困難にな目に遭う少女は、自身のひたむきさと豊かな想像力でどのように乗り越えていくのか。

  • 小公女って読んだことなかったなと思って借りて読んだんだけど、これミンチン先生の気持ちも分かるわ〜。熱い手のひら返しするの分かる。賢くて美しくて高貴な少女を惨めな境遇に叩き込めるのは自分だけ、っていう支配欲は分かる。実際にあそこまで貶めるってのはやらないけどさ。
    小学生の時に読んでたらセーラの清々しいまでの毅然とした態度に共感できたと思うけど、中学生の時に読んでたら「こういう立派な人間とは一緒にいられないな~無理」ってなってたと思う だって実際に作中でもセーラと仲良しなのって「あまり賢くない同級生」「恵まれない下働き」「年下の子」じゃん?
    この学校が「精神的に豊かでない子ばかり」みたいに明文化されてるから、セーラの精神性に同じ目線でついていける生徒がいない、ってのは理解する。世界が広がったら隣の家の長女みたいに仲良くなれる子は増えていくと思うけども。一定のラインの「下」にいる人間にとってはまさしく王女様のままだよね~っていう。

    だからといってこの本が嫌いというのではなく、読む年齢によって捉え方も違う、だから読書は奥が深いなと思った、という経験でした。

  • 子どもの頃、よくこの種の少女小説を買ってもらっては読んでいました。
    けれどどちらかというと『秘密の花園』の方が好きで…
    小公女はなんとなく道徳的な感じが強かったからかな?
    ただこの新訳を読んでセーラ像が大きく変わりました。セーラがお話を生き生きと語るさまや、そうすることの切実さが丁寧に描かれていないと、この物語は薄っぺらく思えてしまうのだと思います。
    昔読んだ抄訳版はそのあたりに難があったのかもしれません。

    こちらは、高楼先生のわかりやすい訳と素敵な挿絵で、長さも感じずに一気に読めました。
    先生の講演会にも行きましたが、翻訳には大変なご苦労があったようで…
    でもこの新訳が出ていなかったらもう一度読んでみようという気にはならなかったと思います。
    普段なかなか読書の時間がとれない中学生の娘もすごく気に入ったそうで、これもこの読みやすい新訳のおかげだと思っています。

  • 高楼方子は「緑の模様画」を書いたとき、登場人物たちの絆となる本に「小公女」を選んだ。
    そのとき訳書をあれこれ参照してみて、ちゃんとした完訳がほしいと思ったそうだ。そして編集者から勧められて自ら訳し直すことを決めた。
    ぴたりとはまる日本語を見つけるための試行錯誤は4年に及んだそうだ。
    とりわけ考えこんだところは……という話を講演会で聞いた。
    完成した訳文には、そんな苦労の跡は見えない。

  • 高楼方子さん訳は、読みやすかったです。
    セーラの思い描く世界が、色鮮やかに広がって。
    頑固なまでのまっすぐさ。
    芯の強さ。
    ドキドキして、ページをめくる手がもどかしく感じました。
    子どもたちにも、ぜひ読んでもらいたいな。
    でも。どんな言葉を添えて、この本を手渡せばいいんだろ…

  • 日本語訳の完訳は、これしかないそうな。
    訳者さんが好きな作家さんだったこともあって読む。
    どうも、あのアニメのイメージで、主人公セーラはおとなしくて従順で「いいこ」で、それなのに一転不幸に陥りそれを健気に耐え忍んでいると幸運が舞い込んでくる。
    ・・・と思っていたんですが、よくよく読むと、セーラというのは実は勝気で自分の思っていることは結構はっきりいうし、不条理だと思うことには大人相手にだって思い切りにらむし・・・ミンチン先生の「けっ」とセーラを憎たらしく思う気持ちがなんかわかった(笑)
    そして、またもやアニメの影響で、ラストでは女学院にお金持ちとなって返り咲く、その、意識しなくても漂う「さすがでしょー」的な感じ、あれが小説では一切ない。ものすごくあっさりとした幕切れで、それゆえに「かっこいい」感じがある。

    「小公子」のほうがずーっと好きだったんですが・・・貧しくても幸せな生活からお金持ちになったけれど母親と引き離されて少し不幸。あまやかされようともそれに耐え抜いて健やかに成長して、周囲を明るく変化させてゆく、という、ほうが。
    だけど、「小公女」の、つらくて折れそうになっても、心を、信念をかんたんには曲げず、想像力でのりきっていくという女の子というのもいいなぁと思いました。

  • 子どもの頃、くり返し読んだ大好きなお話。私の血となり、肉となった一冊。一言で言うとどんな逆境にもめげずに~と言うことなんでしょうが、女の子はしたたかに生きていいのよ、と19世紀のバーネット夫人も言ってました、ということです。たかどのほうこさん訳ということで、どう変わってるのか話題になってはいますがエピソードは勿論、デティールもさほど変わっていないようでした。今度西村書店のと読み比べてみるつもり。

  • 子供の頃に何度も何度も読んだ本。内容は全く覚えていないのでまた読みたい。小公子もあったのは知っているけど読まなかった、なぜだろう。

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著者プロフィール

一八四九年イギリスに生まれる。幼いころに父を亡くし、十六歳のときに一家でアメリカ合衆国に移住。十八歳のときに初めて、短編が雑誌に掲載される。以後、アメリカとイギリスを行き来しながら、大人向けの小説や戯曲、子ども向けの物語を多数執筆し、人気作家となる。一八八六年に発表した『小公子』は、空前のベストセラーとなった。『オンボロやしきの人形たち』は、アメリカで一九〇六年に発表された。ほかの作品に『小公女』『秘密の花園』『消えた王子』など。一九二四年、アメリカで死去。

「2021年 『オンボロやしきの人形たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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